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後味の悪い話

312名無しさん@おーぷん :2014/09/28(日)16:46:36 ID:BixOfaU3N
西秋生「いたい」
星新一編・ショートショートの広場1から

就職した僕を追いかけるように上京した姉は、おそらく初めての恋をした。
姉の恋人は姉の目の前で轢死したそうだ。
それ以来姉は身体中が痛いと泣き暮らし、恋人の断末魔の苦しみを感じていると主張している。

木造アパートのドアの外まで姉のうめき声が聞こえたような気がして、仕事帰りの僕はうんざりした。
「姉さん、入るよ。…まだ痛むのかい」
「ありがとう、でもいいの。ほっといて頂戴」
姉は奥の六畳間で床に正座し、ベッドに上半身を投げ出してうめき続けている。
酒でも飲めば痛みをごまかせるんじゃないの、と提案しても、飲みたきゃ一人で飲みなさいよ、私は愛する人に目の前で死なれたのよそんな気になれないわ、と返されたので、僕は一人で焼き鳥屋に行った。

姉はまだうめき続けていた。
うんざりした僕は、酔いに任せて言ってしまった。
「姉さん、いい加減にしろよ。いつまで猿芝居を続けるつもりなんだ」
近頃太りだし、さらに醜くなった姉は泣き濡れた顔をあげて僕を見た。

「よく思い出してみろよ、そいつは本当に姉さんの目の前で死んだのかい」
「違うだろ、そいつは姉さんを騙したんだ。姉さんは捨てられたんだよ」
「惨めな思いをしたくないから、そいつが目の前で車にはねられたなんて嘘を…」
「自分を騙すのもいい加減にしろよ」

姉は絶叫の形に口を開け、でも声は出さず、輪郭から崩れはじめ、消えてしまった。
僕は、幻肢痛(ゴーストペイン)という言葉を思い出した。

姉は不実な恋人が目の前で死んだと思い込む事が生きがいになっていたのだろうか。
…僕の胸の奥がちくりと痛み、それは段々と強く激しくなり、いつまでも消えなくなった。
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