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まったりSS書くからキャラ貸してくれ【砂塵の章】

1菩薩◆XuHlfjDjx0ab:2015/11/15(日)19:08:48 ID:uEN()
キャラの名前・性別・容姿・能力・その他諸々をご自由にお書きください
世界観は中世ヨーロッパ、中央アジア、インド、日本etc…で、大まかに人間VS魔族(モンスター)という対立構造になっています
人口の98%が戦士という対魔族専用村を拠点に魔族を狩ってゆく話なので、モンスターの設定も勿論大歓迎
※1 現在キャラ募集は凍結しております
※2 強制sageがかかったので移転してきました

まったりSS書くからキャラ貸してくれ
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1434382932/l30

まったりSS書くからキャラ貸してくれ【砂塵の章】(VIP版)
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1437707800/l50

まったりSS物語wiki
http://wikiwiki.jp/bokutotu/?FrontPage
2菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)19:18:48 ID:uEN()
これまでの簡単な流れ
かいつまんでますが大体こんな感じです

魔族長テングリカガンとサンバドル村No.1ギルド・Lunaticとの決戦から一週間。
記憶喪失の少年・ハルシャはギルドを結成し、ひとまずサンバドル村に落ちつくことを決めた。
ギルドメンバーであるジークから闘技大会について聞いたハルシャは、仲間と共に試合観戦に臨む。
麗しのギルドと謳われた、サンバドル村第2位のHarmoniaと闘うのは果たしてどこのチームか。
選手が続々と華々しく入場し、遂に試合のゴングが鳴らされた!
3菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:38:18 ID:F4I
大陸の中央部にあるサンバドル村はまさに文明の十字路であり、旅人や商人が日夜絶えず往来している。
特に今日はサンバドル村において第二位のギルド・Harmoniaが闘技場に出場するといことで、観戦チケットを求めて戦士の波が村役場に押し寄せていた。
鎧のぶつかる金属音と熱気に包まれた人だかりを、スルメ倶楽部の面々は遠くからぼんやりと眺めていた。
彼らの手には試合観戦のチケットが握られている。
忍耐力のある足利義輝が夜通し並んで、朝方やっと獲得したのだ。
上裸のハゲが食後のスルメを噛みつつ、義輝の肩に手を置く。

ハゲスルメマン「いやぁ義輝君、徹夜してまでチケットを購入してくれて感謝感激雨あられだ。これでトップクラスの戦いを間近で学ぶことができるのだからね」

フレイア「スルメを噛みながら話をすると口の内容物がチラチラ見えて、気色悪いニャ。因みに義輝はどっちが勝つと思うニャ? Harmoniaと対戦相手と」

猫娘からそう問われると、足利義輝は急に拳を胸に当て天を仰ぎながら嘆息した。
それは豪傑が初めて見せた、心の奥に閉ざされた迷いであった。

足利義輝「メリーシャたそが死なぬならそれでいい。しかし、大名同士の抗争とあらばそれを調停するのが将軍の務め。黙って見過ごすなど、たとえ太陽が西から昇ろうとも到底できぬ。ああ、いかにすべきや」

ハゲスルメマン「はっはっは! 義輝君は若い女の子に目がないな。それならバザールに行きたまえ。この祭りに便乗して、多くの店がメリーシャ君のグッズを販売しているだろう」

足利義輝「ハゲ殿のお誘い、誠にありがたく存ずるが余はこの場を離れるわけにはいかぬ。もしメリーシャたその晴れ舞台に遅れてしまったら、余は切腹しても贖いきれぬ大罪を犯すこととなる」

アーシャ「なんか今日の義輝さん、珍しく饒舌ですよね」

クラリス「好きな女に会えるから興奮してるんだろ。たそ付けとかキモくてキモくてかける言葉もねぇよもう」

ディグノー&ユグドラシル戦での怪我からようやく復帰したクラリス含めて、スルメ倶楽部は今日も平常運転であった。
4菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:38:52 ID:F4I
電気の切れかけた蛍光灯が辺りを仄暗く照らすなか、その腰の曲がった老人は壁についている制御盤のボタンを押した。
目の前に広がるまるで棺桶のような形をした機械が稼働音と共に振動し始め、白い煙を隙間から噴出する。
老人の瞳は虚ろで、まるで同じことを何十年も、何百年も繰り返して来たような時代を達観するような目でその光景を眺めた。
これで、やっと十万人か。
薄汚れた白衣の胸ポケットから煙草を取り出すと、老人はライターで火を点け煙を吐いた。
机の上には助手が集めた古代の機械や文化についての本が山積みになり、今にも崩れ落ちてきそうだ。
たかがキャラ一人の設定を考えるだけで、ここまでの労力と研究が必要だとは思わなんだ。

老人「毎日毎日たった一人で残りかすの処理をしていると、頭がおかしくなってしまいそうじゃ。せめて話し相手がいれば良いのだが、ペッパーは古代の文献を探しに図書館へ外出中だからな」

老人「……外は瘴気でもう人が通れないほど毒されておると言うのに。聞き分けの悪い助手で本当に困るわい」

老人「楽園……か。そんなものが、本当にあれば良いがのう」

そう呟きながら老人は仕事を再開するため、近くの台に横たわっている少女の身体を抱き上げた。
彼女の華奢な身体は、氷のように冷えて固くなっていた。

老人「さて、あと五万人近くも残っているのじゃ。永遠の命を与えるために、もうひと頑張りせねばならんな」
5菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:39:09 ID:F4I
喨々と喇叭の音が高らかに鳴り響き、銅鑼が地を揺るがした。
割れる様な拍手が後に続く。
円形の闘技場に座る観客数万人が一斉に拍手をするのだから、その騒がしさと言ったら竜の咆哮のそれに匹敵する。
途中で拍手をするのを止め思わず耳を塞ぐ者、トイレに行くだの果実酒を買ってくるだの嘘をつき騒音から一時撤退する者。
何がともあれ、コロッセオはいつもより人で賑わっていた。
なにせ、今日はあのHarmoniaが選手として出場するのだから。
スルメ倶楽部は足利義輝の努力もあって観戦チケットを得ることができたが、彼らはまだギルドランクが低いので円形闘技場の中でも最後列の席になってしまった。
最前列には村長や異国の賓客、ランク一桁代の有名ギルドが座る。
落胆するメンバーを励ますように、ハゲスルメマンがスルメの旨味を含んだ唾を飛び散らせながら笑った。

ハゲスルメマン「ハッハッハ! 人生は山あり谷あり、こんなこともあろうさ。しかし、元Lunaticであった吾輩が何故一般市民と同じ最後列に座らなくてはならんのだぁ……」

フレイア「そんな小声にならなくても聞こえてるニャよ。あ、あとこれ渡しとくニャ。ミント味の噛みタバコ」

アーシャ「フレイアさんって用意周到ですね。歩く大気汚染を公共の場でいかにして抑制するか、よく考えてらっしゃいまず」

ハゲスルメマン「おいおい、普段のアーシャ君はそんな畏まっていないぞ! もっとほんわかした天然の娘だったぞ!」

クラリス「おいハゲ。やけに見覚えのある奴が、こっちに歩いてきてんぞー」

魔女帽をかぶった美少女が指差した方向を見ると、頬を赤く染めたハルシャが仲間を引き連れてこちらへ上がってきている。
ハルシャ組もまた、スルメ倶楽部と同じく最近結成されたばかりの新生ギルドだ。
彼の能力は未知数だがこれから先、何かと協力し切磋琢磨する良きライバルになるかもしれない。
そう思うと共に観戦するのも、悪くないだろう。
少年は緋色の髪を揺らしてどっかりとハゲスルメマンの隣に深く腰かけた。

ハルシャ「やぁやぁ、スルメ倶楽部の皆さんもここに」

ルーミア「あ、げんしじんさんですがらったよー」

ジークの傍にいたエルフの少女がハゲスルメマンを指差した。
以前、北の森での激戦で全裸になったハゲスルメマン達が教会に瞬間移動してきたことがあった。
その少し破廉恥な事件を、彼女は未だに覚えているのだ。

ジーク「こら失礼だろう、ルーミア。ところで、どうしてスルメ倶楽部の人が闘技場に?」

フレイア「そりゃ、あの強さと美しさを兼ね備えたギルドが出場するんニャからね。対戦相手がどこになるか少し気になるニャ」

アーシャ「もしかしたら、Lunaticかもしれませんね」

クラリス「は? ないない。あいつらネズミみたいに山に引きこもってるんだろ? 来ないっつーの絶対」
6菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:39:28 ID:F4I
観客の歓声が俄かに大きくなった。
ちょうどハルシャ達の向かい側にある、赤いカーペットの敷かれた豪華な観覧席に黒いモズクのような物体が現れ、緩慢な足取りで席に向かっている。
その光景を見たハゲスルメマンの口元に淡白な笑みが浮かんだ。
ショ・クモーウ君よ、今日も君の髪は長いな。
口内にまで巻き込まれたその黒い長髪は吾輩への当てつけか? 毛根の死滅している吾輩よりも自分が人間的に勝っている、豊かであると暗に誇示しているというのか?
鼻毛や脛毛を頭に植毛して炎症を起こした吾輩よりも、自分の方が精神的にゆとりがあるとでも言いたいのだろうか?
村長はハゲの心中など察することなく、開会の挨拶を済ませた。
次に賓客として招かれたハーゲル国の大商人が挨拶をし、遂に選手の入場が始まった。
暗い入口の中から姿を見せたのは、高笑いと共にセミロングの銀髪を靡かせたHarmoniaの頭領・メリーシャであった。
周囲の歓声が更に大きくなり、会場全体を小刻みに震撼させる。
観客席の至る所で彼女の名を呼ぶ声が聞こえる。
クラリスの隣に座っていた足利義輝も、思わず立ち上がった。
今日の令嬢戦士は一味違う。
彼女のチャームポイントでもある薔薇を模した鎧を身にまとっていないのだ。
猫娘が率直な感想を漏らした。

フレイア「桃色のスリムな衣装ニャね。それもへそ出しの。胸の大きさがはっきり分かって何だかいやらしいニャ」

足利義輝「何故あのような破廉恥な衣装なのだ。あれでは全裸も同様……ブフッ」

ハゲスルメマン「村長の趣味よ。村長ことショ・クモーウ君はLunaticにいた頃から極度のへそ出しフェチであった。だから、彼が主催する闘技大会では出場するギルドにへそ出しの制服を作っておく事が、義務付けられたのだよ」

ジーク「ったく、酷ぇ話だ。ならオレ達が出場する時はなんだ、ルーミアにもへそ出しの制服を着せなきゃならんのか」

ハゲスルメマン「うむ、その通りだ」

うなだれるジークの頬を、ルーミアが指でつんつんとつついた。
老若男女構わずに出場するギルドはへそ出しの服を着用せねばならない。
ハルシャは手を叩いて大喜びする村長を見ながら、その裏に隠された狂気を感じ取り背筋に悪寒が走った。
再び会場が盛り上がり、今度はサラの名前が連呼された。
ハルシャも面識のある、緋色の髪を持つ女剣士はへそ出しの格好で水晶剣を太陽に照らしながら入場した。
セレス「……サラさんはスタイルが良いですね」

ハルシャ「ひょっとして、羨ましいとか思ってたりする?」

セレス「下手なこと言うと、麻痺ナイフ刺しますからね?」

サラの紹介も終わったところで、次に出てきたのは巨大な鉄槌を肩に担いだ少女であった。
頭だけイヌイットのような毛皮のフードをかぶり、首から下はメリーシャやサラと同じスリムなへそ出し衣装だ。
あまりの滑稽さに声援に混じって爆笑の波も湧き起った。
7菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:40:22 ID:F4I
ハンマーを担いだ少女は不満げに頬を膨らませた。
彼女がハンマーを一振りすると、先端から火花が飛び散った。
どうやら火薬を詰めているらしい。

サルサ「もう、みんなサルサが入ってきた時にどうして笑うのかな! ぷんぷん!」

メリーシャ「私達がいくら言っても、フードをお取りにならないんですもの。そんな奇妙な格好では笑われるのも当然ですわ」

???「そうだそうだ、サルサは昔っからお洒落のセンスが皆無だったからなぁ」

メリーシャの指摘に、低い男の声が被さった。
はきはきした爽やかな声ではなく、まるで酔っ払いのごとき呂律の回らぬ眠たげな声である。
水を打ったように会場が静まり返り、観客の視線は選手の出てくる入口へと一斉に注がれた。
女しかいないギルドと思っていたハルシャも、男の存在という予想外の展開に驚き身を乗り出す。
ガラガラと車輪の回る音の後に、銀色の台車が背後から現れた。
台車の上には大股を開き、酒をあおる銀髪の青年がいる。
車を押しているのは黒髪の小柄な少女だ。
彼女はクラリスと同じく、魔女帽を頭にかぶっていた。

ジャコモ「このジャコモ・フライルート様さえいれば闘技場なんぞ全勝間違いなしだっての。あー、仕事後の酒がうめぇのは当然だが、仕事前に酒を飲んでスカッとするのも悪くねぇ」

ジャコモ「さーてと、今日はどんなカワイ子ちゃんが来るかなー」

観客席は罵声と怒号で充満し、青年に向けて食いかけのパンやミカンなどが四方八方から投げつけられた。
ハルシャも、ジャコモという青年のふてぶてしさに怒りだけでなく驚嘆すら覚えた。
へそ出し衣装を着た酔っ払いの男など、誰も求めてはいない。
よくHarmoniaの一員として顔を出せたものだ。
しかし周囲とは違い、ハゲスルメマンだけは顎に手を置き何かを考えている様子であった。

ハルシャ「どうした? 何かを考えているようだが。あの酔っ払いに何か思うところでもあるのかい?」

ハゲスルメマン「ハルシャ君、彼は確かにふてぶてしい。しかし、彼こそがHarmoniaの茎であることを覚えておきたまえ」

ハルシャ「茎? 茎とは……」

ハゲスルメマン「花を支える為には茎が必要だろう。つまり、彼がHarmoniaにとって必要不可欠な存在……それ程の実力者である、ということさ」

ハルシャが何かを言い返そうとした時、突然アーシャが立ち上がり両手を振って叫んだ。

アーシャ「ウィンディ! 私よ、あなたの親友のアーシャだよ! 他のギルドに行っても上手くやってるみたいで良かった! 今日の試合頑張ってね!」

台車を押している魔女帽の少女に対して放った声援らしい。
アーシャは座り、ため息をつくと独り言ちるように言った。

アーシャ「……ウェンディは私の親友でした。イーフィと同じく、三人で同じギルドに入ろうって誓った中だったんです。でも、三人とも離れちゃって、イーフィは私のことなんか忘れちゃって」

アーシャの目尻に、微かに涙が浮かんでいるのをハゲスルメマンは見逃さなかった。
8菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:40:47 ID:F4I
闘技場のステージには、白黒のまだら模様をした塔が無数に林の如くそびえている。
崖から花崗岩を切り出して作られた代物で、身を隠したり楯として用いたり頂上に登り敵の動向を確認するなど、用途は使う者によって様々である。
メリーシャは正面の塔に歩み寄ると、不意にその姿を消した。
次の瞬間、塔の頂上に令嬢戦士が現れた。
細剣の先を相手側の入場口へ、道を示すかのように向けている。
そんな彼女を、Harmoniaの一同は不思議そうに見上げていた。

サルサ「精神統一してるのかな。サルサもやりたいよ!」

ジャコモ「何言ってんだ。お前がやったらどうせ、最後まで我慢できずに塔をブッ壊しちまうだろ」

酒気を帯びた真っ赤の顔で語るジャコモに、サラは半ば呆れたような表情で肩をすくめた。
この男、帯刀こそはしているが闘う気はまるで無いらしい。
可愛い娘を見るためだけなら、かえって足手まといとなる。
サラが一発喝を入れてやろうとした時、メリーシャが目の前に瞬間移動してきた。

メリーシャ「来ましたわよ。今回のお相手が」

薄暗い入場口に、何やら沢山のシルエットが見える。
細長い兎の耳が七つ、風に煽られたススキのようにゆらゆらと揺れている。
最初に太陽の下に姿を晒したのは、紫色のストレートヘアーを持つ背の高いバニーガールであった。
切り揃えられた前髪で目元を隠し、ヒールを響かせての登場だ。
さながらモデルの如き戦士の登場に拍手喝采が巻き起こる。
しかし、彼らを知るHarmoniaのメンバーだけは心中穏やかでなかった。
サラが珍しく青ざめた顔で隣に佇むメリーシャに囁く。

サラ「メリーシャ、あいつら……」

メリーシャ「分かっていますわ。バニー・レインボー。Lunaticも全滅させたことのあるサンバドル村第三位のギルド……。意地の悪い村長様のことですからきっととんでもない相手が来ると思っていましたけれど、やっぱりでしたわね」

サラ「どうする? 奴らに今のあたしらで勝てるのかい?」

メリーシャ「勝てるもなにも、勝たなくてはならないのですのよ。先代マスターのために、Harmoniaの名を貶めることは断じてあってはなりませんわ。よくって?」

ジャコモ「ヘッ、中々骨のありそうなカワイ子ちゃんだな。ほら、さっさと後のバニーも見せろよ。酒が尽きかけてんだ」

ジャコモが愉快そうに酒の瓶をガンガン鳴らす。
紫のバニーは入場口を振り返り、抑揚の無い声で呼びかけた。

ラベンダー「私の後に誰も来ていない……。ピンク、化粧はいいから早く出てきなさい。お客様と対戦相手の方に迷惑よ」
9菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:41:04 ID:F4I
ラベンダーがそう呼びかけても、入り口は寂として誰も出てくる気配はない。
代わりに乱立する塔の背後より耳だけがひょこん、ひょこんと飛び出してきた。
闘いの準備が整ったとの知らせである。
ラベンダーとメリーシャはステージの中央まで歩くと互いに固く手を握りあった。
両者、試合において全力を尽くすという宣誓の意味合いを持つ。
メリーシャは相手を見上げ、口元に女神のごとき微笑を湛えた。
紫のバニーもそれに応じて小首を傾げる。

メリーシャ「盗賊あがりの無頼ギルドが、格調高い闘技大会に何用ですの? むざむざ醜態を晒しに来たとも思えませんけれど」

ラベンダー「ふふふ、一週間前Lunaticの屋敷から尻尾巻いて逃げ帰ったお方が何を仰ります。バニー・レインボーは今、血に飢えている。死を賜るのはそちらでは?」

風は凪ぎ、嵐の前の静けさが訪れた。
覇気と覇気の衝突。
戦士らは最初の挨拶で互いの力量を測る。
少しでも目をそらそうなら、敵より自分が下位の存在だと教えているようなものだ。
不意に何かが弾けたかのようにメリーシャが後方へ飛び退き、レイピアを両手に構えた。

メリーシャ「サラ様は右、サルサ様は左! ウェンディ様は中距離からの援助。一羽たりとも生かしてはなりませんわよ!」

ラベンダーも人間技とは思えないほどの跳躍力を見せ、空中で華麗に宙返りをしながら遠く背後にある塔の頂上へと降り立った。

ラベンダー「ロックオン完了、行きなさい妹達よ! 第一位のLunaticを打ち破った私達なら、第二位など取るに足らぬ!」

これが試合開始の合図であった。
10菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:41:17 ID:F4I
右隣でサラが水晶剣を肩に乗せ、左隣でサルサがハンマーをぶん回し疾駆するのが気配でしっかりと伝わる。
早速ウェンディの放つ魔弾が相手側の塔を打ち砕き、黒煙を濛々と巻き上げる。
ジャコモの姿は全く見えない。
ステージの端で呑んだくれているのか。
何がともあれ、時は来た。
新生Harumoniaにとって初の対人戦である。
恥ずかしい真似は絶対に見せられない。
メリーシャが走り出そうとしたその刹那。

コーラル「おねーちゃーん! ぎんいろのかみのおねーちゃーん! わたしこーらる! ななじょ! あついおもいつたえにきたー!」

火だるまになった幼子が、両手を広げて真正面から突っ込んでくる。
幼子が駆け寄るだけなら実に微笑ましい光景なのだが、身体にまとわりつく烈火と手に持つ鋸のせいで、その微笑ましさが殺伐さで相殺されている。
火だるまの幼女が鋸を叩きつけてきた。
二本のレイピアで斬撃を受け止めたメリーシャは、小さな体躯に似合わぬ重い一撃に内心驚愕していた。
振動が手から肘まで一気に駆け抜ける感覚。
彼女は瞬間移動を使用し、七女バニー・コーラルの後ろをとった。
コーラルの第二撃は見事に空を斬る。

メリーシャ「オホホ! 動きが遅いですわよ! それでも元盗賊ですの? Lunaticのイーフィ様や田中様はあなたの比ではありませんでしたわ!」

コーラル「うんしょ! うんしょ!」

火炎の幼女は懸命にメリーシャの剣撃を受け止めたり避けていたが、分が悪しと思ったか急にあらぬ方向へ逃げ出した。
口ほどにもない七女である。
11菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:41:34 ID:F4I
コーラルは急に立ち止まり、天を仰いで声を張り上げた。
予想外の声量にギョッとして、少し距離を置くメリーシャ。
魔族長やその懐刀であるバルドとの激戦をくぐり抜けた彼女であったが、未知の敵に対してはやはり一度どんな行動をするか見定めなければならない。
彼女は確かに高慢ちきだが、その高慢さに見合った実力を持つ。
ただ剣を振り回して敵陣に突っ込んでいくだけの無謀な愚者ではないのだ。

コーラル「しとらすおねーちゃーん! いつもの『あれ』ぶちかますよ!」

シトラス「合点承知のすけりんこ!」

コーラルの呼びかけに応えてどこからともなく飛び降りてきたのは、五女のバニー・シトラスであった。
金色のおさげを前転の遠心力で鞭よろしく振り回しながら落下してきたシトラスは、コンクリート製の地面に難なく着地し、炎なぞ気にもとめず妹を肩車した。

シトラス「私とコーラル、二人の力が合わさったシトラル砲は天下無双の雷火砲なのだぁ!」

コーラル「なのだぁ!」

メリーシャ「……えっ」

しかし、何も起こらない。

冷たい風がひょうと通り抜け、メリーシャは警戒していた自分を恥じた。
結局、自分は幼児の遊びに踊らされていただけだったのか。
羞恥心と共に怒りもこみ上げてきた。
12菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:42:37 ID:F4I
メリーシャ「サーカスにしては、つまらない出し物ですわね。子供のごっこ遊びに付き合っている暇はありませんわ」

メリーシャ「こちらは時間がありませんの。一瞬で喉笛を掻き切って差し上げます」

メリーシャの姿が消え、息をつかせる間もなくバニーガールらの目前へ剣を突き出した。
電灯が明滅するかの如く出たり消えたりを繰り返す彼女だけでも驚愕に値するが、更に観客達を驚かせたのは二人がメリーシャの攻撃を全てかわしていることだった。
まるでメリーシャがどこに出現するか先読みしている様に、剣先を華麗に避けていく。
彼女は再び踊らされることとなった。

シトラス「何かもう飽きたかなー」

コーラル「わたしもあきた! えへ!」

シトラス「つまんないよねー。ノリ悪いよねー。デキの悪い玩具なんていらなーい」

コーラル「ぶちかます? ぶちかます?」

シトラス「おーっし、いくよ! スリー・ツー・ワン」

シトラス・コーラル「ふぁいや!」

瞬間移動でメリーシャが現れたタイミングを狙い、二人のうさ耳から熱線と稲妻が一直線にほとばしった。
熱線と言っても、ビル一つ蒸発させるほどの巨大な熱線である。
回避しようにも間に合わない。
熱線はメリーシャをいとも容易に飲み込み、遠くの岩塔を半円状に抉り取るとそのまま空の彼方へ消えていった。
二人はハイタッチの後に手を取りあって、強敵の排除に成功したことを祝った。

シトラス「わーい!ラベンダーお姉ちゃんに褒めてもらえるよ! 頭撫でてもらうの楽しみだなぁ……」

コーラル「こーらるがさきになでてもらうんだよ! おねーちゃんはあとね!」

シトラス「やだ! 私の方が先だもん! 妹風情が調子に乗るな!」

シトラスは落ちていた一本のレイピアを取り上げると、容赦なく叩き折った。

シトラス「これで良し、と」
13菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:42:52 ID:F4I
ラベンダーに報告しようと駆けだした二人だったが、頭を背後から強くわし掴まれ、仰向けに転んでしまった。
太陽の光によって顔は見えない。
しかし、それが熱線と雷撃で始末したはずの令嬢戦士であることを二人は感覚で悟っていた。
動悸が激しくなり、両脚から力が抜ける。
メリーシャの瞬間移動能力は、シトラスとコーラルの想像力を遥かに凌駕していた。
レイピアを一本わざと落としたのは、油断を誘い気づかれないよう接近するためだったのか。

メリーシャ「……せっかく晴れ舞台だからと、念入りに髪を手入れしてまいりましたのに」

神がかった回避の代償として、彼女の美しい銀髪は見事に焼け焦げ、煙と異臭を放っていた。
シトラスとコーラルは顔を見合わせ、色を失い震え上がった。
哀れな二羽の兎は薔薇の、一番鋭い棘に触れてしまったのだ。

メリーシャ「さぁて、行儀の悪いお子様に罰を与えなくてはなりませんわね」

戦意を喪失した二羽の兎を、メリーシャは乱暴に岩塔の硬い壁に押し付け、レイピアをそれぞれ左胸に背中から突き通した。
レイピアは岩塔の内部まで貫き、シトラスとコーラルはまさに昆虫標本のような具合のまま息絶え、光の粒子となり四散したのであった。

コーラル「ふんだ! ほかのおねーちゃんたちがだまってないもん!」

斃したはずの者の声が聞こえる。
声の方向に顔を向けると、シトラスとコーラルが巨大なモズクを挟んで頬を膨らましている姿が目に入った。
どうやら中央に控えるモズク、いや村長であるショ・クモーウが蘇生したようだ。
まだHarmoniaのメンバーが一人もいないことを認め、メリーシャは安堵のため息をついた。

メリーシャ「今の所、こちらが二点リードですわ。一度に二人を始末できたのは大きいですわね」

メリーシャ「ですが、まだあちらは五人も残っております。油断は大敵、しっかり援護しなくては」

壁から柄のあるレイピアを一本引き抜くと、メリーシャは再び駆け出した。
彼女は未だ、ラベンダーの能力に気がついていない。
そして、本当に恐るべき敵が誰かということにも。
14菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:43:04 ID:F4I
太陽の容赦ない照りつけにより、闘技場のステージは焼け石のごとく暑くなった。
それに比例して、戦士達の闘いもますます熱さを増してゆく。
サラは噴き出す汗に全身を濡らしながら、刃を交えている敵に戦慄していた。
高い身長とピンク色のウェーブがかった長髪が目立つ、化粧の派手な女だ。
ふざけた格好や態度とは裏腹に、恐ろしく剣の腕が立つ。
先ほど斬られた脇腹を片手で押さえ、サラは呻いた。
浅手ではあるが、こちらは相手に一太刀も浴びせていないのだ。
このままでは確実に押し負ける。
血の滴る刀を回し、ピンク髪のバニーガールはおどけた調子で言った。

ピンク「あらあら〜? もうおしまい? お姉さん退屈してるのよねぇ」

サラ「ふん。あんたいくつよ」

ピンク「え? 25だけどぉ?」

サラ「ふふっ、あたしは26だ。残念だったね、”お嬢ちゃん”!」
15菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/15(日)21:43:49 ID:F4I
菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/04(水)22:13:03 ID:Bzm 巨大な魔力を秘めた水晶剣がうなり、ピンクの頭上に振り下ろされる。
刀を横にして受け止めたピンクは、剣撃の重さに思わず膝をついた。
水晶剣を防いでいる彼女の腹に、強烈な蹴りが二、三度入る。
普通の人間ならまだしも、歴戦の勇者の全力蹴りを鎧もない剥き出しの腹に、これでもかというほど喰らったのだ。
血の混じった唾液を垂らし、それでもなおピンクは苦悶の表情を一切見せなかった。

ピンク「……やるじゃん。お姉さんビックリしちゃったわ」

ピンク「でも、まだまだね」

直後、引っ張られる様な強い衝撃が加わり、サラの身体は見事に吹き飛ばされていた。
一番前列の観客席に放り込まれたサラは、魂の抜けた様な表情で両隣に座る上位ギルドメンバーに会釈をした。
ありえない、たとえ相手がサイキッカーだとしても、人を一人吹き飛ばすには相当の集中力と体力がいる。
腹を何度も蹴られた状態では、超能力など夢のまた夢のはずだ。
今度は見えない手に胸ぐらを掴まれ、ピンクの元に引き戻された。
全身が思うように動かない。

ピンク「ねぇ、おばさん。お姉さんとかくれんぼしな〜い? お姉さんここでじっとしてるからさぁ」

サラ「敵に背を向けることなどできるか!」

ピンク「違うよぉ、かくれんぼだってばぁ。お姉さんが百を数える間に頑張って隠れるんだよ〜? 百数えたら……」



ピンク「分かってるわよねぇ?」ニタァリ
16名無しさん@おーぷん :2015/11/16(月)21:42:12 ID:XJM
VIPから引っ越し?
17菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/16(月)23:42:42 ID:ul0()
>>16
強制sageがかかっちゃって
18名無しさん@おーぷん :2015/11/16(月)23:43:36 ID:XJM
相変わらず文章上手いですなあ
頑張ってください
19菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/17(火)00:02:54 ID:L08()
ありがとう
頑張りますm(_ _)m
20シモン◆qECGVNv88M :2015/11/17(火)19:10:53 ID:Q2x
引っ越して来たのかww
頑張って!
21シモン◆qECGVNv88M :2015/11/17(火)19:57:49 ID:Q2x
(=゚ω゚)ノおいらも再開した。
いつかどこかの本屋で一緒にサイン会しようや
22菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/11/17(火)23:22:11 ID:yp8
>>21
ありがとう(*´▽`*)
二人で切磋琢磨していきましょう!
そちらも頑張って!(^o^)丿
23名無しさん@おーぷん :2015/11/24(火)01:25:24 ID:TUO
待ってるよ
24アルケミ :2015/11/25(水)23:35:06 ID:gcT
頑張って下さい
25名無しさん@おーぷん :2015/12/01(火)01:15:37 ID:0Dp
もう書かないの?(´・ω・`)
26名無しさん@おーぷん :2015/12/01(火)19:25:52 ID:Ns7
ここに来ると落ちない安心感からかみんな更新ペースが落ちるんだよ
下手したら半月に一度とか
27名無しさん@おーぷん :2015/12/01(火)23:33:48 ID:RAX
こんな所で書くあほらしさに気づいたんだろうな
投稿サイトに書くならともかく
ツイッターにも書いてる人は何百何千といてそっちでお話してても楽しいし
28菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/12/02(水)00:28:25 ID:H9z()
まさに>>26
そろそろ書かないとマズいm(_ _)m
まだ見てくれてる人がいることに感謝せんと
29名無しさん@おーぷん :2015/12/07(月)23:11:25 ID:tvZ
(´・ω・`)
30シモン◆qECGVNv88M :2015/12/09(水)20:21:35 ID:hYE
(´-`)
31名無しさん@おーぷん :2015/12/10(木)12:57:23 ID:oQ8

32名無しさん@おーぷん :2015/12/10(木)17:09:08 ID:XFl
しょうがないよ
自分だって思い詰まらないで何ヵ月も文章書き続けるなんて出来そうにないし…
33名無しさん@おーぷん :2015/12/11(金)22:27:38 ID:bfI
まあ確かに他人の作ったキャラじゃ思い入れはないかもなあ
自分自身の小説ならキャラも自分が愛着持って作ったキャラだから
話を完結させたいというモチベーションにはなるだろうけど
あと思ったのがやっぱりVIPは落ちる恐怖があるから嫌がおうにも
定期的に書かざるをえない状況が逆に締め切りを課せられた感じで
読者側からすれば結果的に良かった
締め切りの心配がなく書けるときにどうぞ状態のここじゃそりゃエタるよ
34名無しさん@おーぷん :2015/12/12(土)21:23:35 ID:v6D

35名無しさん@おーぷん :2015/12/12(土)21:42:38 ID:jia
まあ菩薩の旦那は今受験生だからある意味しゃーないとは思う
ただ受験控えてる時に始めちゃったのはちょっと計画性がなかったかな
36名無しさん@おーぷん :2015/12/13(日)14:55:08 ID:rdV
俺も受験生のはずなのに何で毎日更新してるんだろうと不思議に思ってた
ただ、恐らく進学校の優等生だろうな
37名無しさん@おーぷん :2015/12/14(月)23:58:25 ID:Eev
しゃーない
数ヶ月のんびり待つかな
38菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/12/20(日)23:29:17 ID:dyi
再び見えない手に突き飛ばされた。
自分の身体が宙に浮き、天と地が回転しながら落ちていく。
戦の玄人であるはずの彼女が、ふざけた格好の遊び人に弄ばれている。
剣の腕ならば絶対に負けないはずなのに。
サラが落ちた場所には既に先客がいた。
ハンマ―使いの少女……サルサだ。

サルサ「わー! なんかあいつヤバい! ヤバいよ! いっつもサルサの先回りしてくるんだもん!」

サルサ「絶対に予知能力あるよ! サルサ達の進行方向を予知する能力!」

彼女は傷だらけの顔をサラに向けると、勢い良くまくしたてた。
よほど痛めつけられてきたらしい。
サラの肩を揺さぶりながら、しきりに前方を指差している。
ゆらり、と影の如く現れたのは青いおかっぱ頭のバニーガール。
髪の色と同じその瞳は、氷のような冷徹さを湛えている。
感情のない機械。
三女であるバニー・シアンに相応しい言葉は、まさにそれであった。

シアン「ラベンダーお姉様の期待に応えるため、わたくしができることはただ一つ……」

シアン「敵の排除。それだけです」

シアンがロッドを振り上げると、先についている魔石へ会場の水分が吸い込まれ始めた。
ステージは岩と砂だらけで、水など一滴も見当たらない。
では、どこから水を吸収しているのか。

ハルシャ「ヴォッ……ヴォイ! 俺の芽玉ジュースがあああ!」

ハゲスルメマン「のわああああ! 吾輩のスルメジュースがあああ!」

セレス「二人ともなんて物飲んで、ってひべべべ! 私のヨダレがあああ!」

観客の持つジュース、ヨダレさえも魔石に吸い取られてゆく。
全ての混合物が四方八方から、細いアーチの如くロッドへ繋がる。
汚物を魔力に変換した杖を、シアンは二人へと差し向けた。

シアン「上位魔法・ダイダルウェーブ。いきます」ギュウウン

サラ「サルサ、あたしはやることがある。もう少し持ちこたえてくれないか」

サルサ「やることって? サルサが頑張る価値のあることなのー?」

サラ「ラベンダーを殺りに行く。あたしの予想が正しければ、奴だ」

サラ「あたしもピンクと闘った時、あんたと同じ違和感を感じたんだ。何回もね」

サルサ「へー、先回りの指示を与えてるのはラベンダーなの?」

サラ「確証は持てないけどね。まぁあんたはちょっと頑張っていてくれ、すぐに戻る」ダッ
39菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/12/20(日)23:30:46 ID:dyi
遅れて申し訳ないです(´・ω・`)
受験が佳境に入った……ってのは都合の良い言い訳か
頑張る
40菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2015/12/20(日)23:37:23 ID:dyi
闘技場編が長引いている


気がする
41名無しさん@おーぷん :2015/12/21(月)16:22:43 ID:9np
無理はしなくていいので…
42名無しさん@おーぷん :2016/01/03(日)22:08:05 ID:XaW
久々に来たら更新されてるやん!
43菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/01/03(日)22:48:03 ID:BVj
久々の更新でキャラや展開がどんなんだったか忘れかけとる(´・ω・`)
急いで最初から読み返して記憶を取り戻し中
44シモン◆qECGVNv88M :2016/01/05(火)20:43:04 ID:JlR
頑張れ(´Д` )
45菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/01/08(金)22:21:55 ID:7pD()
ラベンダー「右……左……違うわ、そっちの柱に隠れてる……」

周囲より頭一つ抜けた石柱の頂上に、長女ラベンダーは坐していた。
脳内で瞬時に敵の進行方向を予想し、どこから襲撃すれば最もダメージを与えられるか、迷いなく弾きだす。
彼女の予想が外れたことは一度もない。
そしてうさ耳を模した発信機から、地図や敵の情報を妹達へ送るのだ。
彼女らが先回りできるのは、ひとえに長女が進むべき道を示してくれるからであった。

ピンク「うふん、今日も冴えてますわね。お姉様のあ・そ・こ」

ラベンダー「変な表現はやめなさい。それよりあなた、Harmoniaを殲滅しなくてよろしいの? あなたの実力なら全員を相手取るくらい容易いはずよ」

ピンク「それがね、来るのよ。かくれんぼの下手なおばさんが一匹」

ラベンダー「あら、確かに私の脳内地図にもこちらへ向かっている点があるわ。これかしら?……女剣士・サラね」

ピンク「脳内なんて分かるわけないじゃないのよぉ。お姉様たら、冗談お上手ッ!」

ラベンダー「ふむ」

ラベンダー「ピンク、あなたは闘技場の隅で固まっている点を潰しに行きなさい」

ピンク「えッそんな奴いるの?」

ラベンダー「もうオレンジが交戦状態にあるけど、あの子は回復魔法しかできないわ」

ラベンダー「ついでに連れ戻してきなさい。それが姉の役目よ」

ピンク「えッえッでもでも」

ラベンダー「あの女剣士のことなら心配しないで。既に手は打ってある。あなたはオレンジを救うことだけに全力を注ぐこと。いい? 理解できた?」

ピンク「……お姉様が言うなら仕方ないわね。ピンクさん、一回だけ我慢するわぁんふうぅ」

ラベンダー「とっとと行け、あなたがいると目立つのよ」

肩をすくめてピンクは姉の所を離れた。
しかし、気になることがある。
オレンジは攻撃手段を持っていないはずなのに、何故まだ交戦中なのか。
貧弱な妹が、珍しく頑張っている。
加勢せずして何がレインボーか。
全速力で空中を移動しながら、ピンクは鼻息荒く呟いた。

ピンク「むふん、待ってなさいよ。ピンクお姉さんが懲らしめてあげるからね!」

試合開始から十分。
未だHarmoniaに苦戦の色は見られない。
46名無しさん@おーぷん :2016/01/09(土)08:16:00 ID:JAk
更新期たたあああああ!!
47名無しさん@おーぷん :2016/01/09(土)15:41:28 ID:TMh
更新されてて嬉しい
48名無しさん@おーぷん :2016/01/16(土)09:07:54 ID:Iqv
センター試験ですな、頑張っくだされ
49菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/01/16(土)21:57:21 ID:9Ud
やっとセンターの自己採点終わった~
世界史97で歓喜するも国語が167で思ったより取れていない
筆記が149、リスニングが28と英語勢は振るわなかった
センターで明治とか青山とか狙ってたけど無理っぽいな
国語とリスニングがもう少し取れてれば……
一般で頑張りますm(__)m
それからこちらの方も
50名無しさん@おーぷん :2016/01/17(日)00:09:44 ID:xqx
頑張れ頑張れ
51菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/01/18(月)22:13:36 ID:QhX()
次女に指示を与えたラベンダーは、前髪で隠れている目を静かに閉じた。
暗闇に蛍光色の地図が展開し、敵がどの位置にいるか、色彩豊かな点で表示される。
サラが着々とこちらに迫っている。
彼女は剣の技倆において、サンバドル村で一位、二位を争う実力者だ。
にも関わらず、なぜピンクをオレンジの支援へと回したのか。
闘技場の端で動かない点を見て、ラベンダーは忌々しげに舌打ちをした。
奴が来た、来てしまった。
彼女が最も恐れる、常識が通用しない相手。
いるかいないかでガラリと戦況が変わる、最強のトリックスター。

ラベンダー「ジャコモ……フライルート……! 滅多に集団行動しないくせに、どうして今日に限って来たのかしら。奴とまとも渡り合えるのは、ピンクしかいないのに」

すぐ近くで爆発音が轟いた。
シアンと交戦中であるハンマー使いの娘に、強力な魔導師が加勢している。
登場時にジャコモの台車を後ろから押していた、あの無表情の娘か。

ライム「姉貴、いつまで周りを飛び回ってりゃいいのさ」

四女のライムがポニーテールを揺らしながら、不満げに呟いた。
先ほどから彼女は姉の命令で、開始直後から空中を飛行している。
風を操るライムならば突風で敵を吹き飛ばすなど朝飯前だが、非情な姉はその役目を同じ技が可能なピンクに任せたのだ。


ラベンダー「あなたは私の身を守る矛でもあり、盾でもあるのよ。試合が終わるまで、永久に飛んでいなさい」

ライム「ざっけんなハゲ。あたしは姉貴の道具じゃねーっての。あと数分したら、クソゴミ共の駆除に行ってくるからな」

ラベンダー「ハゲだとかクソゴミだとか、乱暴な言葉を使うのやめなさい。姉妹全体のイメージが悪くなるわ」

ラベンダー「やめなさい。これは命令よ」

ライム「いちいち命令ばっかすんじゃねー! もういいわ、あたしどっか行くわ。姉貴はそこで殺されるのを待ってな」

ラベンダー「あっ! ちょっと……待ちなさい! 地図送ってやらないわよ!」

ラベンダーの叫びも空しく、緑色のポニーテールは塔の下へ消えた。
入れ替わりに、何かが頂上に登ってくる。
見えずとも、気配と地図で分かる。
剣を鞘走らせる音。
小石が落ちていく。
単なる風の悪戯か、或いは。

ラベンダー「ついに来たわね、サラ」

サラ「逃げ場はない。あんたを斬る」

ラベンダー「ふふ、残念」
52名無しさん@おーぷん :2016/01/18(月)23:13:56 ID:JEk
更新ん来た!
これでかつる!
53名無しさん@おーぷん :2016/01/22(金)22:25:24 ID:J1h
おお更新してた
54名無しさん@おーぷん :2016/02/03(水)01:30:47 ID:gmZ
更新きてた!
55名無しさん@おーぷん :2016/02/06(土)10:06:46 ID:TrV


56名無しさん@おーぷん :2016/02/07(日)23:37:32 ID:Jxi
待ってるで
57名無しさん@おーぷん :2016/02/09(火)19:20:12 ID:hWG
今まさに受験の本番の時期やから今月中の更新はないやろな
58名無しさん@おーぷん :2016/02/19(金)23:23:45 ID:QNc


てる
59菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/20(土)21:48:05 ID:5za
長らくお待たせいたしましたm(__)m
やっと終わった
今からちょっと書きためして続けていきたいと思う
キャラの作者さんとかまだいるのかなぁ(;^ω^)
60名無しさん@おーぷん :2016/02/20(土)22:16:13 ID:E4E
あまり聞いたらあかんのかもしれんがその…受験の方は良い結果だったんか?
61名無しさん@おーぷん :2016/02/20(土)22:54:58 ID:law
>>60
マーチほぼ全勝
あとは早稲田待ち
もうイージーモードですわ(`・ω・´)
62菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/20(土)22:56:39 ID:law
あとは怠けようとする自らとの闘いですね(-_-;)
63名無しさん@おーぷん :2016/02/20(土)23:16:43 ID:E4E
>>61
じゃあとりあえず菩薩たん勝利確定ってことでええんかな?よかったよかった
ほな後は待たされたぶんバンバン続き書いてくれること期待してるでぇ(ゲス顔)
64菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/20(土)23:22:39 ID:BOv
>>63
ひええ
頑張ります( ;∀;)
65菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/21(日)00:22:43 ID:PsH
透明状態を解除してラベンダーの背後に立つ。
水晶剣の刃を彼女の首に押し当て、グッと力を込める。
このまま喉笛をかき切ってしまえば、済む話だ。
しかし、どうにも気になることがある。
ラベンダーの不敵な笑みにサラは動きを止めた。
自分の死を目前にして、不思議なほど冷静なのである。
策を有しているからなのか、それともハッタリか。
多分、強がっているだけだろう。
敵と自分しかいない絶体絶命の窮地で、策を有する余裕などあるはずがない。
サラは油断した。

サラ「随分と余裕ぶってるけど、あんたは今から死ぬんだよ?」

ラベンダー「死ぬ? 確かに死ぬわね。しかしそれは私ではない」

サラ「あんた以外に誰が死ぬってんだい。冗談もほどほどにしときな」

ラベンダー「サラ、あなたの命数は今尽きた」

サラの全身が斬り裂かれ、空中に血の花が咲く。
驚愕の表情で膝から崩れ落ちた彼女を、ラベンダーは踏みつけた。
ヒールのかかとがサラの頬に食い込む。
誰だ、誰がやったのだ?
他の妹はそれぞれ散開しており、到底ラベンダーを援護する暇はないはずである。

ラベンダー「……さて、ライムのおかげで形成が逆転したわけだけれども」

サラ「あたしを、罠に、はめたのか」

ライム「そうだぜ。姉貴はもう接近に気付いていたんだよ。バーカバーカ」

ラベンダー「あなたを完全に油断させるため、まるでチーム内で不和が生じたように見せたわけ」

ライム「なーなー本当にこいつHarmoniaの副長かよ。ガチでアホ過ぎるわー。うへへへへ」

ラベンダー「死になさい。あなたに与えられた義務はそれです」

しかし、サラもただの剣士ではなかった。
最後の力を振り絞り飛び跳ねると、ラベンダーの腰を掴みそのまま落下したのだ。
凄絶な相討ちを遂げた二人は、村長ショ・クモーウのいる席に移転された。
驚いたのは姉の勝利を確信していたライムである。
これで、敵の位置情報が提供されなくなってしまった。

ライム「不利な状況がなんだってんだクソ。逆境であればあるほどあたしが活躍する場があるってことさ」

ライム「花だか華麗だか知らねぇが糞ッタレの犬コロども、このライム様をキレさせた罪は重いぜ」

ライムはリボンを取ると、若草色の髪を振り乱して青空めがけて上昇した。
途中で一瞬、銀髪の好青年とオレンジの談話している姿が目に入ったが関係ない。
全員、始末する。
66菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/21(日)00:23:37 ID:PsH
とりあえず今は1レスだけ投下
とにかく闘技場編を終わらせねば~
そろそろ終盤だけどね(`・ω・´)
67名無しさん@おーぷん :2016/02/21(日)04:33:56 ID:pp5
キャラ作者組だよ
68名無しさん@おーぷん :2016/02/21(日)21:16:48 ID:X3g
>>59
居るよ
69名無しさん@おーぷん :2016/02/21(日)21:33:18 ID:jt0
>>59
居まっせ
70菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/23(火)23:18:10 ID:qna
快男児ジャコモ・フライルートにとって、今回の試合はまるで児戯に等しかった。
蘇生を約束された決闘など、とどのつまり村長の自己満足に過ぎぬ。
ジャコモからしてみれば、他の選手が一生懸命闘う理由が分からない。
それゆえこの青年は闘技場の隅で胡座をかき、麦酒を呷り、菓子をつまんでいるのだ。
砂糖がまぶされた立方体のグミを陶然と見つめながら、退屈そうにぼやく。

ジャコモ「俺はさァ、カワイ子ちゃんさえ拝めればそれで良いのよ。試合だのギルドの誇りだの、んなもん知るか。自由こそが一番」

麦酒がなくなると、近くの観客からラム酒とチーズをひったくり飲り始める。
周囲の冷めた視線もお構いなしで、挙句ぬいぐるみの如く寝転ぶ始末。
その無気力さはハルシャに似ている。
我らがハルシャ組の長も、丁度その時まったく同じ姿勢で観戦していたのだ。
ハルシャに席を奪われたスルメ臭いハゲは、肩を竦めると下の階へ降りていった。

ハゲスルメマン「やぁ、ジャコモ君」

ジャコモ「おお、あんたはええと……Lunaticの副長を務めてた……どなたですか?」

ハゲスルメマン「ハゲスルメマンだ。このスルメ臭を嗅げばすぐ分かる。自己紹介は以上、ちと君に話したいことがあるのだよ」

ハゲスルメマン「なぜ、闘わない。君が重い腰を上げれば、バニーレインボーの撃破など容易だろう。まるで、いはけなき幼女の腕をねじ伏せるようにね」

ジャコモ「面倒だからだよ。あんたも薄々気づいてるだろう? これは単なる遊び。誰も死なない子供のお遊戯さ」

ハゲスルメマン「たかが遊戯、されど遊戯。ほとんどのギルドはこの闘技場で英雄になることを夢見ているのだよ」

ジャコモ「ハッくだらんね」

ジャコモ「かつて、ここより西のエグバード王国で行われていた試合は、こんなモンじゃなかったらしいぜ。どちらかが肉塊になるまで徹底的に闘わせ、死者は弔われることなく道端にポイ捨て」

ジャコモ「勝者は神、敗者は匹夫。そう、敗者に人権も糞もなかった時代さ。今みたいにすぐ蘇生してもらうのと違ってな」

ハゲスルメマン「では何故ジャコモ君は試合に出場したのだね? 自分の気持ちに従えばよかったものを」

ジャコモ「メリーシャが出てくれと頼んだからよ。あいつが頼むんなら……無視するわけにゃいかん」

ジャコモ「正直、今すぐ帰りたい気分だけどさ。メリーシャの姿を見ると、試合の時間がもっと延びてほしいと思っちまう」

ハゲスルメマン「鼻の下も伸びてるしな」

ジャコモ「キャンディみたいに伸び伸びさ。麗人が戦う姿は何よりも美しい。眺めているだけで心持ちが穏やかになる」

ハゲスルメマン「それにしても妙であるな。これほど人が集っている場は他にないのに、魔族の襲撃が未だ非ずというのは」

いつも闘技場にはサンバドル村の住人だけでなく他の町からも多く人が訪れる。
況んやHarmoniaの試合日に於いてをや。 
魔族側からすれば今日は大量の人間を一気に殺戮する好機。
一匹も出現しない方がかえって不気味だ。
そのことに関してはジャコモも少し疑問に感じていた。
71菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/23(火)23:20:45 ID:qna
ジャコモ「……なんだ、急に風が出てきたな」

ハゲスルメマン「ジャコモ君、とっくに気がついていると思うが、上空を見たまえ」

ジャコモ「知ってるよ。バニー・ライムとかいうカワイ子ちゃんの仕業だってこと。活躍の場を姉妹に取られてキレちまったか? 短気なとこも含めてべっぴんさんだぜ」

ハゲスルメマン「感心してる場合ではないぞ。吾輩は逃げる、スタコラサッサとな。面接は以上、おさらば!」

筋骨隆々なハゲは颯爽と踵を返し、二段飛ばしで階段を駆け上っていった。
ジャコモの顔に吹き付ける風の勢いはさらに増してゆき、流石の彼も地面に伏せねば飛ばされてしまうほどの突風になった。
身長の何十倍もある石柱が竜巻状の風に根元から掬い上げられ、観客席に落下する。
当然、押し潰される客も出てくる。
観客席は闘技場の周縁にあるため、ショ・クモーウによる蘇生加護がない。
ゆえに多くのギルドは肉塊と化した仲間を抱え、蘇生の『約束』をしてくれるハインリヒ神父の元へほうほうのていで急ぐのだった。
面倒臭がり屋なライムが編み出した、手っ取り早く敵を殲滅する方法。
威力は抜群だが、二次災害が凄まじい。
ライムはそのことを承知で、バニー・レインボーを勝利に導くため最上級魔法『竜巻』の呪文を詠唱したのだ。
次女・ピンクさえも瞠目して、剥がれつつある床にしがみついている。

セレス「ハルシャさん! ハルシャさん!逃げましょう、ここは危険です!」

ジーク「起きろって! リーダーが死んだら、今後ハルシャ組を引っ張っていくのは誰になるんだよ! おい、目を覚ませ!」

ハルシャ「ぐぅぐぅ」

セレス「……なんかもう駄目っぽいですね。ジークさん、ルーミアさんを連れて先に外まで避難していてください。私はこのグータラを担いで後から合流します」

ジーク「だがしかし……!」

ルーミア「じーく、ルーミアはせれすをしんじるですがらったよ」

胸に飛び込んできたエルフの幼女を背中に回し、ジークはセレスを見てうなずいた。
自分を認めてくれた友の命を、この修道女に賭けることにしたのだ。

セレス「あッ」

セレスが再び席を見た時ハルシャの姿は既になく、自らも強烈な突風によってもみくちゃにされ、闘技場内に落下してしまった。
守ると豪語しておきながらこの醜態。
つくづく自分が情けなくなる。
そのままセレスの意識は暗転した。
72名無しさん@おーぷん :2016/02/24(水)00:15:58 ID:0Nc
ハルシャェ…もういっそこのグータラリーダーいない方がまともなギルドになるんちゃうかハルシャ組はw
73菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/24(水)00:24:14 ID:J2l
>>72
そうかも……w
74名無しさん@おーぷん :2016/02/24(水)18:00:52 ID:ddz
蹴り飛ばした方が良かったんじゃないのか……w
75名無しさん@おーぷん :2016/02/24(水)18:02:04 ID:upO
前より地の文がだいぶ雑になってるな
描写から描写へぽんぽんジャンプしていっている
画素数粗いデジカメみたい
76名無しさん@おーぷん :2016/02/24(水)23:05:30 ID:upO
何でだろうと思ったら1文あたりの字数が極端に少なくなって描写が単調になってるんだな
「~した」「~だった」
ばかり

このスレ前半はちゃんと丁寧に書かれてるんだが
慌てて更新しようと焦りすぎじゃないか
77名無しさん@おーぷん :2016/02/24(水)23:26:50 ID:BgI
まーた編集者気取り様の登場か
78菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/25(木)00:00:00 ID:4w5
まぁ確かに闘技場編を早く終わらせ、魔族軍の内情やハーゲルについて書きたいと焦る気持ちはある
筆力の低下も否めない(´・ω・`)
アドバイスありがとう(^ω^)
79菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/25(木)18:41:05 ID:UI8
身体の節々が痛い。
手の平が擦り剥けて、血が滲んでいる。
さっきまでサルサ達と共にバニー・シアンと闘っていたはずだ。
どうにか立ち上がろうとするも、鋭い痛みが走るだけで全く動かせない。
俯せにひしゃげた蛙の銅像になってしまったかのようだ。
こんなみっともない姿を他のギルドメンバーに見られるのは御免こうむる。
一刻も早くせめて立ち上がれるまでに回復せねばならぬ。
メリーシャは激痛を堪えて首を上げた。
ぼやけていた視界が段々と、周囲の状況を把握できるほど明瞭になる。
遠く離れた場所に、誰かが倒れている。
燃える火のような緋色の髪を持つ少年で、メリーシャと同じく俯せのまま動かない。
へそ出し衣装を着ていないところから、彼がただの観客であることが分かる。
彼女は内心自分に舌打ちをしたい気分だった。
華々しく登場しておいて、結局自分は二代目リーダーに相応しい活躍もできずに終わるのだ。
可憐な外見に似合わず、メリーシャは相当の負けず嫌いであった。
ふと、緑色のヒールが狭まる視界に映る。
リボンを取り、髪を肩まで垂らしたライムはメリーシャの端正な顔をしたたかに踏みつけた。
姉妹だけあって、勝利を確信した時の行動が、まるで長女のラベンダーと同じである。

ライム「よぉ、エセお嬢様。Harmoniaで残ってんのはもうアンタだけだ。こっちにゃまだオレンジもピーチ姉貴もいる」

ライム「アンタはここで、頭を吹き飛ばされ死ぬ。誰も助けには来ない。あのモズクジジイの蘇生術も正常に発動するかどうか……」

今度は冷たい掌が押し当てられた。
絶体絶命の状態にあるのは分かっている。
しかし、反撃しようにも身体に力が入らないのだ。
メリーシャは両目をギュッと瞑り、その時を待った。

メリーシャ「うッ……」

数分経ったが、まだ自分の頭と胴は繋がっている。
代わりに聞こえたのはライムの苦しげな呻き声だ。
生温かい滴が頬に落ち、流れて地面へ染みてゆく。
静寂の後、ライムが隣に倒れた。
背後から投擲された鋼鉄製の槍が、見事彼女の首を貫いている。
村長はまだ生きているらしい、ライムが粒子状に消え失せたのは蘇生魔法が発動した証だ。
安堵のため息をつく間もなく、メリーシャの前に現れた影がある。
片手に持っているのはオレンジの死体だろうか。

ジャコモ「フフッ俺の従姉妹にしては、随分と貧弱ではないですかな。メリーシャお嬢様」

メリーシャ「ジャコモ! あなたに助けられるとは思いませんでしたわ……」

ジャコモ「Harmoniaの美しき花は、茎があるからこそ咲き誇ることができる。今こそ証明してやるよ」

ジャコモ「とりあえず、オレンジには感謝しておかないとな。このカワい子ちゃんがうっかり回復してくれなきゃ、俺だって危なかった」

ショ・クモーウのいる席からこちらを見下ろすツインテールの少女を眺め、ジャコモは呟いた。
観客のいない世界一華麗な試合は、遂に佳境を迎える。
80名無しさん@おーぷん :2016/02/25(木)21:06:26 ID:hFs
まさかの従姉妹設定きたー
じゃあジャコモも実は名家出身というか家柄いいのか
なんでメリーシャがジャコモみたいな場違いなメンバー入れたのか違和感あったが納得
しかし>>70を見るかぎりジャコモはメリーシャのお願い攻撃には弱そうw
81菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/28(日)00:13:52 ID:4X8
>>80
家柄は良いけど、やっぱり自由が好きなんだろうね
性格からしてメリーシャは滅多にお願いしなさそうw
82菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/28(日)00:19:48 ID:4X8
ジャコモは砂利を踏む音すらたてず、流水の如き滑らかな動きで前進した。
途中、倒れているメリーシャからレイピアを借りて両手に構える。
対峙するピンクもまた、雌豹のようなしなやかな動作で刃を撃ち込む隙を見せない。
どちらも無言であったが、二人の放つ覇気と視線は立派に会話を成立させていた。
ピンクが細長い腕を前方へ差し伸べ、ゆっくりと宙を掴んだ。
瞬間、彼女の手にはサーベル状のブロードソードが握られている。
一体どこから調達したのかさえ分からない。
やがて、美女がピンク色のへそ出し衣装を強調するかのように艶めかしく腰を振りながら口を開いた。

ピンク「ライムの突風を受けて無傷だなんて、ボクちゃんやるわね」

ジャコモ「ヘッ、俺を誰だと思っている。かつて戦闘の天才と称賛された男だぜ?」

ピンク「あら? そういう風にはとても見えないけどぉ~?」

ジャコモ「ピンクとやら、アンタの武術も俺には到底及ばないだろう。ゴリラと蟷螂。実力の差は火を見るより明らか」

ピンク「ふぅん、ゴリラと蟷螂ねぇ……面白い喩えじゃない……」

オレンジの治癒魔法で傷を回復したことはあえて黙っておいた。
そちらの方が、ピンクの激情を煽るのに有効だと感じられたからである。
しかし、彼女もジャコモの挑発に乗るほど馬鹿ではない。
一定の距離を取りつつ、自分の周りに観客席から回収した剣や弩を漂わせている。
戦闘時に使用中の武器が駄目になった場合、即座に切り替えるためだ。
物を自在に動かせるピンクにだけ許された芸当である。
隙を見出したのか、ジャコモが腕を交差した状態でピンクに肉薄した。
光の軌跡が空中に二つ描かれ、派手に火花が飛び散る。
上下左右とレイピアは生物のように動き、その巧妙さは剣の達人であるサラさえも舌を巻くほどだ。

サラ「凄い……」

Harmoniaの茎とバニー・レインボーの巨塔が闘う姿を、サラは村長のいる席から息を飲んで眺めていた。
ジャコモという人間が優れた戦士であることは噂で聞いていたが、まさかこれほどまでとは。
もうほとんど彼とピンクとの間には金属音と、橙色の火花しか飛び交っていない。
あれだけの剣技を習得するのに、彼は幾年費やしたのだろう。
自分には到達できない境地に、ジャコモがいることは確かであった。

サルサ「サルサ思うんだけどね、互角のピンクも相当の剣士だと思うよ!」

サラ「あれは超能力で剣を振り回しているだけだ。それでも攻撃をいなしているのは凄いけどね」

サラ「いずれにせよ、双方Lunaticに属しても遜色ないレベル。観客がいたなら、さぞ熱狂の渦を巻き起こしただろうさ」
83菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/28(日)01:02:52 ID:4X8
メリーシャの能力は一度だけ瞬間移動
使いどころが簡単そうで結構難しい
連発ができないし、シトラスとコーラル姉妹の雷火砲を回避できたのは、若干運も関係している
雷火砲はあっけなく終わってしまったけど本当はくそつよい
4までのモンスターならば一撃で焼却可能
ラベンダーの頭脳、ピンクの超能力、シアンの洪水、ライムの竜巻、オレンジの驚異的な治癒能力、そしてシトラスとコーラルの雷火砲
これで彼らはサンバドル村3位までのし上がってきた
84名無しさん@おーぷん :2016/02/28(日)01:45:58 ID:yUI
メリーシャの作者っす
一度じゃなくて一瞬だけ、っすね。連発できちゃうとチートくさくて
面白くないと思ったからあえてスキがあるキャラにしてみますた
それに一度だけだと今試合>>8で試合前にすでに使っちゃってるし(小声)
しかしギルドマスター(しかもNo.2ギルド!)なんて大役のキャラに選ばれて光栄っす
85名無しさん@おーぷん :2016/02/29(月)21:06:26 ID:dDD
おっ再開してる!
86名無しさん@おーぷん :2016/02/29(月)23:09:18 ID:dDD
アグサの作者ですはい
87菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/02/29(月)23:55:10 ID:0fW
ピンクは自分が振るう剣に刃こぼれが目立ってくると一旦敵から離れ、周囲に漂う弩を掴み取った。
わずかな時間の間に瓦礫を弾代わりとして装填する。
弓弦を千切れそうなほど強く引き絞り、狙いを迫るジャコモの額に定めて撃ち放つ。
わずかながら魔力の含まれていた瓦礫は、風を切り高速回転しながら二つ、三つと細かく分散していく。
ジャコモにしてみれば至近距離で散弾銃をブッ放されたようなものだ。
濛々と土煙が立ち上り、酒と女が大好きな青年は忽ち包まれた。
その時、誰もが全身を瓦礫に撃ち抜かれる彼の姿を想像した。
だが、現実とは面白いもので予想通りに事が運ぶとは限らない。

ジャコモ「全部で五十。いやぁ、よくここまで分割できたもんだ」

無数の弾丸にジャコモはたった二つの細剣で対処してしまったのだ。
それだけではない、なんと彼の投げた剣がピンクの左足と地面を縫いつけている。
柄の部分まで深く刺し込まれており、いかに彼の臂力が凄まじいか窺える。
流れる赤黒い血と間断なく走る激痛にピンクは口元を醜く歪め、手も触れずに細剣を引き抜いた。
小さな頃から、自分は姉妹の中でも優秀な戦士であると褒められてきた。
サンバドル村最強のギルド・Lunaticにおいても最強の部類に入るだろうと称えられてきた。
村長用の豪華な席でふんぞり返っているショ・クモーウを顔の輪郭が変形するまで叩きのめしたこともある。
この私、ピンクは武力と色気に関しては誇りを持っている。
ふざけた酔っ払いごときに負けるわけにはいかぬ。

ピンク「ボクちゃん、マジで痛い目に遭わないとダメなみたいねぇ……」

ジャコモ「足を貫かれても泣かないか。女の子にしては、なかなか我慢強いじゃないの」

ピンク「うるさい! お姉さんもうプンプンのプンよ、挽肉にしてくれるわ!」

ジャコモ「怒りっぽいと、モテないぜ」

桃色の瞳がカッと開かれ、同時にジャコモの剽悍な身体は彼方上空まで吹き飛んでいた。
落下してくる酔っ払いに向けて、折れた石柱を投げ槍の要領で一気に発射させる。
吹き飛ばさんと下から登ってくる直方体の岩を前に、ジャコモは再び双剣を振るった。
彼が剣舞を見せる所、斬れぬ物なし。
普通の技では通らぬ石柱も、彼の手にかかれば瞬時に細切れの石ころと化す。
ピンクは未だ、ジャコモの実力を甘く考えていた。

ジャコモ「こんなもん、余裕余裕……おや?」

青色の絵の具で塗りつぶされたかの様な空に、なにか禍々しい気が渦巻いているのを彼は見た。
渦の中央に、鋸状の角がチラリと覗く。
ジャコモは無事着地すると、天を仰いで舌打ちした。

ジャコモ「なんてこった。観戦客が試合に乱入してくるなんてな……それも、一番会いたくない野郎だ」
88菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/01(火)00:15:53 ID:yXf
>>87
なんか最強が連続で続いてしまった
後で直しておきます(;´・ω・)
89菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/01(火)00:30:37 ID:B2P()
もう闘技場編は終わりかな
こっからハルシャ自身の話や地下研究所で怪しげな実験を行っている老博士
ハーゲルだの極東だの色々進んでない物語にとりかかる
まだ序盤から中盤にさしかかったくらいだよ( ̄Д ̄)
90名無しさん@おーぷん :2016/03/01(火)23:46:21 ID:rgm
1おつ!
楽しみですはい
91名無しさん@おーぷん :2016/03/03(木)14:00:19 ID:clQ
毎秒投稿しろ
92菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/03(木)19:30:45 ID:eIK
峨々たるクリム山脈の陰影から急速に暗雲が広がり、渦を中心に雷鳴を轟かせながら回転する。
テングリカガンの時もそうであったが、強力な魔族が出現する際、必ずと言っていいほど暗雲が立ち込める。
今回も魔族長か、あるいは同等のモンスターである可能性が高い。
実際にテングリカガンと交戦したことのあるメリーシャは、動けぬ身体をそのままにして、静かに考えていた。
ジャコモとピンクの一騎討ちの顛末はどうなったであろうか。
村長の席を見やるも、ショ・クモーウどころかHarmoniaのメンバーやレインボー姉妹すらいない。
助けに入るか否かで意見が食い違い、結局村長がなだめて彼らを避難させたと思われる。
メリーシャはショ・クモーウの制止を振り切ってでも助けに来なかった仲間を、心の隅で呪った。
普段の彼女ならば、他者を呪うような器の小さい行いはしない。
残虐な死を前にして、少し錯乱気味であったのやもしれぬ。
これから、テングリカガンを筆頭に精強な魔族軍が押し寄せてくるのだ。
いかなる強者もあの山羊には太刀打ちできまい。
天を見上げていた銀髪の青年は、つとピンクの方を振り返った。

ジャコモ「試合は一旦中止としよう。魔族が来る、それも幹部クラスのヤバい奴だ」

ピンク「あら~? 自称戦神のボクちゃんにしては弱気ねぇ。お姉さんいつでも闘えるわよぉ~?」

ジャコモ「カワイ子ちゃん、渦の中央に鋸状の物体が見えるかい? ありゃ魔竜デズモンドの角よ」

ピンク「デズモンド? 聞いたことないわねぇ。お姉さん分からないわ、教えてもらえるかしら~?」

ジャコモ「魔族長テングリカガンの片腕、危険度7の魔竜さ。長い間魔界に閉じこもっていたから、大半の戦士は存在さえ知らん」

ピンク「どうしてボクちゃんは一目であれがデズモンドと判別できたの?」

ジャコモ「俺は天才だからな、脳内にいつも大図書館を展開してるのさ」

ピンク「大した自信家ねぇ」

ジャコモ「俺は従姉妹を助ける、カワイ子ちゃんは遠くにのびてる赤髪の少年と、修道女を頼むぜ」

くれぐれも魔竜に挑発などしてはならない。
それだけ言い残し、ジャコモはメリーシャの元へ疾風迅雷の勢いで駆けていった。
彼の後ろ姿を見つめていたピンクであったが、不意にデズモンドの角へ向けて石柱を発射した。
まだ闘技場に残っていた石柱であり、大きさも威力も角をへし折るには到底及ばない。
ただ、デズモンドの怒りを誘うには十分過ぎた。
渦が更に広がり、隙間より翼を生やしたトカゲやら兎やら飛んでくる。
魔界と現実世界の扉が今、開け放たれようとしていた。
93名無しさん@おーぷん :2016/03/03(木)23:11:42 ID:2LT
おっ更新してる
94菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/05(土)00:49:38 ID:psH
ジャコモは麻痺状態にある従姉妹を背負うと、デズモンドの位置を確認して一目散に走り出した。
闘技場のステージから観客席に飛び移り、持ち主が落とした木製の短弓を手に取る。
片手に斧を携え立ち塞がった獣人を射倒し、続く神速の三連撃で滞空する中型の竜に死を与える。
彼は数日練習するだけで全武器において達人級の技を連発することが可能なのだ。
特別な能力などは一切なく、天賦の才だけで高難度の討伐依頼を受けるにまで上り詰めたのである。
ジャコモは雑魚の掃討では飽き足らず、矢をつがえると指が赤く染まるまで引き絞った。
矢を放ったのと同時に、一筋の闇光が戦神の足場を粉々に粉砕した。
咄嗟の判断で左に飛び、強烈な光線を間一髪回避する。
どうやら魔竜デズモンドもこちらの存在に気付いているようだ。
鋸に似た紫色の角はセンサーの役割を果たすだけでなく、魔力を一点集中し放出する砲台でもあるらしい。

ジャコモ「魔竜デズモンド、奴が魔界の扉を開放する前に両目を潰してやろう」

視力を奪えば、魔竜と言えど動作が制限される。
デズモンドは賢いモンスターであるから、盲目の状態で闇雲に深入りなどしないはず。
現在、毒々しい鱗に包まれた竜の巨躯は半分ほど扉を通過している。
戦闘可能な戦士で残っているのは、ジャコモとピンクだけだ。
彼と互角の闘いを繰り広げた彼女も次から次へと溢れてくる魔族に手間取っている。
再び矢をつがえた手に、蒼白く細い誰かの手が重なった。
精一杯の力を振り絞り、弱々しくジャコモの耳へ囁く声がある。

メリーシャ「わたくしのことはいいから、早く逃げて」

ジャコモ「俺の身を案じてくれてるのかい? 愛してるぜベイビー」

メリーシャ「違いますわ、あなた一人なら勿論デズモンドの攻撃も容易にかわせるでしょう」

ジャコモ「あれ? 心配してくれんじゃないのね……。まぁそうだ、俺は戦の天才だからな」

メリーシャ「わたくしがこうして背に乗っていたら、ジャコモ様が闘う上で何かと不便だと思いますの」

ジャコモ「だからアンタをここに置いて行けと……」

メリーシャ「そうですわ。わたくしが死んだらHarmoniaはあなたが継いで下さいまし。何としても、共倒れだけは避けなくては」

メリーシャは苦悶の表情で喘ぎながら必死に懇願した。
本来なら彼女の死後は、副GMのサラがリーダーに就くことになっている。
しかし、この異常な状況で本当に頼れるのは従兄弟であるジャコモしかいなかった。
魂の懇願を受けた彼は、ただの少女となったメリーシャを無言で席に降ろした。
矢を弦につがえることなく、そのまま竜の目へ向けて一直線に投擲する。
ぐさり、と鏃が瞳の中心に突き刺さり、そのまま水晶体を完全に破壊した。
右目を射抜かれたデズモンドはパニックに陥り首を横に激しく振る。

メリーシャ「ジャコモ……様……」

ジャコモ「悪いが、俺は醜い魔族のケツよりも麗しき女のケツを追っかける方が好きだ。まだアンタに死んでもらうわけにはいかねぇんだよ」
95菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/05(土)20:56:35 ID:BKE()
ハルシャは嫌な夢を見ていた。
足の指から一本一本、脳天まで少しずつ肉を削ぎ落とされていく夢だ。
猿轡のせいで叫ぶことすら許されず、腕は後ろに回されているため、縄をほどいて逃走することも叶わぬ。
誰が残虐な凌遅刑を執行しているのか、腕から上が影になっているので分からない。
鎧を着込んだ騎士にも見えるし、はたまた年端もいかぬ少女が処刑用の牛刀を握っているようにも見える。
きっと、捉え方次第で執行人の姿は如何様にも変化するのだろう。
彼は嫌悪感こそはあったが、恐怖といった類の感情は一切抱いていなかった。
全力を尽くした末での敗北ならば、誰に何をされようが文句は言えない。
たとえ相手が聖剣使いという理不尽な強者だとしても。

ハルシャ「……聖剣?」

聖剣とは何だ?
無抵抗に斬られている俺は一体何者なのだ?
それ以前に、ここはどこなのだ?
矢継ぎ早に浮かんでくる素朴な疑問。
右の太ももに鋭利な刃が食い込み、股関節の方へと緩慢に動いてゆく。
肉や脂肪と共にこの漠然とした疑問も除去されて欲しかったが、ますます深くそして濃密になるばかりであった。

デズモンド「ハルシャよ。何故ヒトの世界におるのだ。時は来た、早くこちらへ戻ってこい。貴様は朕と同じ、魔族なのだから」
96菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/05(土)20:56:58 ID:BKE()
氷河のような冷徹な響きを持つ声。
気がつけば、執行人が少女となっている。
言うまでもなく首から上は、鋸に似た角の毒々しい魔竜であるのだが。
魔竜の頭を持つ少女は牛刀を投げ捨てると、人差し指をハルシャの額に当てた。
彼の視界一杯に眩しい光が広がる。

デズモンド「目覚めよ、そして自らの務めを思い出せ。本来貴様のいるべき場所はどこだ? まさかヒトの集落ではあるまい」

厳かな声が消えた時、ハルシャは瞼を開けて、夢の中で話しかけてきた竜を仰いだ。
デズモンドは身体の半分までは出ているが、残りはまだ魔界から抜け出せていない。
加えて片方の目に矢が刺さっており、動ける範囲も制限されている。
倒すなら、今がチャンスだ。
散らばる武器の中から、得意な弓を拾い上げ、弦を引き絞る。
龍の魂を宿した聖火の矢・ブレイズアロー。
試合を崩壊させた魔族に一矢報いん。

ハルシャ「意味不明なことグダグダぬかしやがって……。務めを思い出せだと? ああ、そうさ。俺は戦士としての務めを果たす。お前のもう片方の目を潰してな!」

龍の形をした火矢は軌道上にいた魔族共を喰らい尽くし、遂に目標へ達した。
患部より追加効果の炎が顔全体に燃え移る。
両目を失い、さらに顔も焼かれる。
流石のデズモンドも耐えきれぬ。
撤退の咆哮を轟かせ、魔界と現実世界の連絡路となる扉を固く閉ざしてしまった。

ハルシャ「荒らすだけ荒らして撤退か。人騒がせな野郎だ。おーいセレス、帰るぞ!」

ジャコモ「そこのあんた、すげぇな! あのデズモンドを追っ払うなんてよ!」

ピンク「未来の勇者ね、お姉さんサイン欲しいわ〜!」

ハルシャ「い、いや……まず誰だあんたら」

魔竜デズモンドの侵攻は、後にハルシャの運命を大きく変えることになる。
97名無しさん@おーぷん :2016/03/05(土)23:25:27 ID:E1M
イトコって呼び捨てが普通かと思ったがたいして親密でもなければ他人行儀に様付けすることも別におかしくないのか
98菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/06(日)00:17:16 ID:Fly
>>97
呼び捨てにするかどうかは少し迷った
でも少し乱暴な感じがして様付けを貫き通すことにした
一応お嬢様キャラだからね……
99菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/06(日)00:20:23 ID:Fly
デズモンドの精神攻撃は果たしてハルシャにどのような影響を及ぼすのか
100名無しさん@おーぷん :2016/03/06(日)19:11:37 ID:lHb
ただのグータラ主人公かと思ったら一転してシリアスな要素が出てきたなまさか魔族だったとは
でも見た目は別に耳が尖ってたり尻尾があるわけじゃなく普通の人間なんだよね?
魔族と人間の間に生まれたハーフみたいな感じか。生粋の魔族ではなさそう
101名無しさん@おーぷん :2016/03/06(日)23:50:12 ID:BHw
魔界の王子様か?
102菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/07(月)00:47:23 ID:yku()
ハルシャは魔族
しかし本人はそれに気づいていない
頃合いを見て、デズモンドは彼を連れ戻しに来た
魔族長テングリカガンのために
103菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/07(月)14:52:44 ID:yku()
今回の試合における被害は甚大であった。
ジャコモやバニー・ピンクの働きによって魔族の侵攻こそは止められたものの、竜巻の被災者は一般人も含め数千にも及ぶ。
ハルシャがセレスを背負い帰還する途上、涙を流して教会からふらふらと歩いてゆく大勢の民衆とすれ違った。
ハインリヒ神父が『約束』で他人を生き返らせることが可能だとしても、所詮彼は人間であり、限界がある。
一定時間経た死体の蘇生は不可能だ。
雲中に閃く紫色の稲妻。
身を捩り、悶えているかのような枯れ木。
規則的に足を動かすだけの肉像。
ここは夢か現か。
はてな、疑わしいところである。

ハルシャ「おーい、開けてくれ。俺だ、ハルシャだよ。それとハインリヒ神父、あんたのお弟子さんも回収してきたぜ」

木製の扉を数回ノックすると、板の軋む音と共に蝋燭を持った修道女が姿を現した。
絹を思わせる艶やかな黒髪と、小柄な背丈、不敵な笑みに覗く八重歯が印象的な少女。
ミラだ。
彼女は一瞬だけ瞳を輝かせたが、負ぶさっている同僚を見て忌々しそうに舌打ちした。
ハルシャはそんな表情の変化にも気づかず、土足のまま階段を上がり、自室のベッドにセレスを横たえた。
後をついてきたミラが、拗ねたように口を尖らせ俯きながら呟く。

ミラ「みんな食堂にいるよ。そんなのに構ってないで早く来なよ」

ハルシャ「セレスは大切な仲間だ。ハルシャ組のためにも、失うわけにはいかない。先に食事を始めてくれ。治療を終えたら行く」

ミラ「やけにセレスには優しいのね」

ハルシャ「仲間にはなるべく平等に接してるつもりさ。ところで、今回の惨事……責任はバニー・レインボーが取るんだよね?」

ミラ「ううん、村長がなんとかするみたい。闘技場の空調設備に狂いが生じたとか何とかこじつけて。バニー・レインボーは歴戦の実力チームだし、狂信者も多いからさぁ」

ハルシャ「必殺、揉み消しの術」

ミラ「ご名答!」

ハルシャ「ハハッ、笑えねー」

ミラ「いやもう普通に笑ってるじゃん」

たわいもない世間話の最中も、ハルシャはせっせと治療の下準備を進める。
ツィードゥという薬草の湯に布を浸し、湿布代わりとして貼り付ける。
この薬草はサンバドル村周辺で採取でき、打撲によく効くと重宝されているのだ。
ミラも手伝おうと声をかけたが、ハルシャの返答は彼女の意表をつくものだった。

ハルシャ「ミラ、人間の肉ってさ……どうしてあんなに美味いんだろうな」

ミラ「え?」
104菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/07(月)14:56:03 ID:yku()
最中もってなんか変だな
最中でもに変えておきます(-。-;
105名無しさん@おーぷん :2016/03/07(月)18:39:19 ID:L7J
そこは

たわいない世間話の間にも、ハルシャの手はせっせと~

ぐらいでええんちゃう?
106菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/07(月)23:17:48 ID:kTf
あと三ヶ月でこの企画始まってから一年経つと言う驚愕の事実
107名無しさん@おーぷん :2016/03/09(水)23:11:22 ID:3wm
もう一年か…
108菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/11(金)00:42:53 ID:aKr
ジークとルーミアはミラの作った料理を前に座っていた。
入口から奥まで続く長テーブルをたった二人で占めているのは、何だか奇妙な感覚であった。
焦げ茶色の汁に浸された麺類らしきもの、何かの臓物に羊肉を詰め込んだもの、バター茶にパンを入れただけのもの。
なみなみと注がれた紅茶から立つ湯気には、微かに生姜の香りが混じっている。

ルーミア「じーく、じーく。おなかすいたですがらったよー」

ジーク「まだ何も手をつけるなよ。全員揃ってから『いただきます』だ」

ルーミア「むむー」

ルーミアは狼少年の耳や尻尾を引っ張ったりしている。
流石、好奇心旺盛で悪戯好きなエルフ族ということだけある。
そんな彼女をジークは鬱陶しいと思わない。
窃盗と殺戮に明け暮れていた昔の自分を癒してくれた、大切な存在だからだ。
この命が尽き果てようとも、ルーミアだけは守り通す。
ブロンドの髪をくしゃくしゃ撫でながら、ジークは辺りを見渡した。

ジーク「おいルーミア、誰か知らないが……テーブルの奥に先客がいるぜ」

全身漆黒の衣装であるため、最初はただの影であると勘違いしていた。
しかし、鯖缶の中身を口に運ぶ姿は確かに人間だ。
雪のような真っ白い肌と対照的に、顔の両側に結い垂らした髪は黒い。
両目の下にある隈や、唇まで黒色であるのが不気味に思える。
あの奇妙な少女が着ているドレスは、巷でゴスロリと呼ばれているものだ。
西欧風なエグバード王国の伝統衣装を、北方諸国の富裕層がアレンジしてできたと言われている。
全体的に烏みたいな黒が特徴なのだが唯一、首元のレースだけに白の要素がある。
戦士かどうかも分からず、明らかに危ない匂いがするので、ジークは話しかけるのを寸前で止めた。
再び顔をルーミアへ向けた時、食堂の扉が開け放たれ、初老の神父が笑顔で現れた。

ハインリヒ「やぁやぁ、遅くなって申し訳ございません。少し村長と話が弾んでしまいまして」

ジーク「ハルシャとミラは遅くなるのか? セレスの看病につきっきりみたいだけど」

ハインリヒ「そろそろ終わっても良い頃なのですが……気長に待ちましょう。お喋りも交えながらね」
109菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/11(金)01:16:50 ID:aKr
抜けてる部分があった
>>108の改訂版を載せます(;^ω^)
110菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/11(金)01:17:52 ID:aKr
灯された蝋燭が微風に揺れ、食堂の壁に映る影を波打たせる。
ゴシック特有の尖塔アーチと蝋燭の暖かな光に照り映えるステンドグラス。
ジークとルーミアはミラの作った料理を前に座っていた。
入口から奥まで続く長テーブルをたった二人で占めているのは、何だか奇妙な感覚であった。
焦げ茶色の汁に浸された麺類らしきもの、何かの臓物に羊肉を詰め込んだもの、バター茶にパンを入れただけのもの。
なみなみと注がれた紅茶から立つ湯気には、微かに生姜の香りが混じっている。

ルーミア「じーく、じーく。おなかすいたですがらったよー」

ジーク「まだ何も手をつけるなよ。全員揃ってから『いただきます』だ」

ルーミア「むむー」

ルーミアは狼少年の耳や尻尾を引っ張ったりしている。
流石、好奇心旺盛で悪戯好きなエルフ族ということだけある。
そんな彼女をジークは鬱陶しいと思わない。
窃盗と殺戮に明け暮れていた昔の自分を癒してくれた、大切な存在だからだ。
この命が尽き果てようとも、ルーミアだけは守り通す。
ブロンドの髪をくしゃくしゃ撫でながら、ジークは辺りを見渡した。

ジーク「おいルーミア、誰か知らないが……テーブルの奥に先客がいるぜ」

全身漆黒の衣装であるため、最初はただの影であると勘違いしていた。
しかし、鯖缶の中身を口に運ぶ姿は確かに人間だ。
雪のような真っ白い肌と対照的に、顔の両側に結い垂らした髪は黒い。
両目の下にある隈や、唇まで黒色であるのが不気味に思える。
あの奇妙な少女が着ているドレスは、巷でゴスロリと呼ばれているものだ。
西欧風なエグバード王国の伝統衣装を、北方諸国の富裕層がアレンジしてできたと言われている。
全体的に烏みたいな黒が特徴なのだが唯一、首元のレースだけに白の要素がある。
戦士かどうかも分からず、明らかに危ない匂いがするので、ジークは話しかけるのを寸前で止めた。
再び顔をルーミアへ向けた時、食堂の扉が開け放たれ、初老の神父が笑顔で現れた。

ハインリヒ「やぁやぁ、遅くなって申し訳ございません。少し村長と話が弾んでしまいまして」

ジーク「ハルシャとミラは遅くなるのか? セレスの看病につきっきりみたいだけど」

ハインリヒ「そろそろ終わっても良い頃なのですが……気長に待ちましょう。お喋りも交えながらね」
111名無しさん@おーぷん :2016/03/11(金)02:55:32 ID:aL9
ハインリヒさんって割とチートに片足突っ込んでるレベルですよね
112菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/12(土)00:18:06 ID:KYi()
>>111
ほとんどチートキャラしかいないっていうね^_^;
テングリカガンの不死身さや、タイガーの異世界移転技、そしてハインリヒの約束
後ろ二つに関しては発動の回数が限られてるから、辛うじてチート入りは避けてる感じ
さて、ようやくゴスロリさんがログインしてきた( ̄^ ̄)ゞ
113菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/12(土)17:24:27 ID:nKW
ハインリヒとジークは暫くお互い黙ったまま、仲間が食堂に現れるのを待っていた。
カチ、カチ、カチ、カチ。
壁にかけられた古時計の音だけが、静寂の中で淡々と時を刻む。
聖母のような笑みを浮かべ、ジークと連れの少女を眺めるハインリヒ神父。
元盗賊の狼少年は共通の話題が見つからず、隅で食事中の怪しい少女や扉の方へ視線を向けている。
つと、ハインリヒが口を開いた。

ハインリヒ「突然の質問ですみませんが、ジークさん。あなた……予定説というものを信じていますか?」

ジーク「すまねぇ、オレはこれまでずっと盗賊稼業をしてきた。宗教を信仰する余裕もなく、ただ生きることだけに必死だったんだ。難しい話はよしてくんな」

ルーミア「ルーミアしってる! かみさまにたすけられるひと、おしおきをうけるひと、みんながどちらになるかは、あらかじめきまってるらしいですがらったよ!」

ハインリヒ「ルーミアちゃんは賢い子ですね。ご褒美に芽玉キャンディをあげましょう。外見はまるっきり眼球で大変グロテスクですが、甘味と酸味が効いていますよ」

ルーミア「わーい! ふえぇ〜あまいですがらったよ〜。ぺろぺろぺろぺろ〜」

ジーク「グルメの話は置いといて。さっきルーミアが言ったことは正しいのか? 神に助けられる者と、罰を受ける者は生まれる前から既に決まっている」

ハインリヒ「ええ。人間がいくら善行を積んでも、主の意思を曲げることはできません。救われるべき者は、予め定められているのです。堕落した人間を戒めるために」

ジーク「神父は選ばれし民なのかい?」

ハインリヒ「おそらく違うでしょう。確かに私は多くの徳を積み、主に絶対の帰依を誓ってきました。ですが、私は禁忌を犯してしまった。人を蘇生させてしまったのです。もしこれが主の筋書き通りだとするなら、どうでしょうか。選ばれし民と言えますか?」

ジーク「だけど……神父のおかげで明日を生きられる人がいる。オレは神父の判断が間違いだとは思わねぇ。選ばれし民の枠を空けるため、戒めを破るように仕向ける神なんか本物の神じゃねえ! ただのクソッタレだ!」

勢い良く机を叩いたせいで、卓上のコップが横倒しになった。
葡萄酒がこぼれて純白のテーブルクロスに染みを作ったが、そんなことはどうでもよろしい。
全ての出来事を神が予め決定している世界。
予定説について完全に理解できた訳でないが、神のハインリヒに対する処遇に関して、ジークは烈火の如く怒り狂った。
大体やることが陰湿なのだ。
天国に行けないならば、面と向かってはっきり宣告すればよい。
影でこそこそハインリヒが罪を犯すような世界の台本を書くより、よっぽど神らしくてジークも仕方ないと頷ける。

ハインリヒ「ジークさん、気持ちを鎮めて下さい。主の定められたこと、私は素直に従います。どうせ死ねば、みな声なき骸。受け入れるより他ないのですよ……」

ジーク「不公平だ、救済される魂が決まっているなんて、八百長もいいところだ。ルーミア、こんな奴の言う事なぞ信じるなよ」

ハインリヒ「ははは、ジークさんは教育熱心ですな」
114菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/12(土)17:33:41 ID:nKW
人がどんなに抗おうと、それがすべて定められたものだとしたら
ちょっと予定説の本意からはずれてる気もするが、もしそんな世界があったら面白い
今こうして続きを考えているのだって神の書いた台本を辿るにすぎないのだから
115名無しさん@おーぷん :2016/03/12(土)23:34:42 ID:UcT
ふむ…
116名無しさん@おーぷん :2016/03/13(日)10:02:54 ID:vsm
今までずっとハイリンヒだと勘違いしてた
外名だとよくこういうのになっちゃう
117菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/13(日)18:19:22 ID:dOx()
4月からまた暇がなくなりそう
やべぇよ……今の内に何か書かないと
4月に小説の持ち込み会なるものがあるらしい
下手な物を提出したら笑い者ですな>_<
118名無しさん@おーぷん :2016/03/14(月)17:14:03 ID:Zfl
まじか…
まあ入学してすぐは厳しいか…
119名無しさん@おーぷん :2016/03/14(月)18:42:48 ID:8DY
小説の持ち込み会?大学に行くんだよな
サークルかなんかの話か
にしても入学したばかりの4月にそんなことあるんか
120菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/16(水)15:53:33 ID:JPm
>>119
サークルでそういうのがあるらしい
とにかく書かねばやべぇ
121菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/16(水)15:53:43 ID:JPm
ハインリヒ神父と会話を始めて十数分。
待てども待てども変化はなく、夜が深々と更けてゆくばかり。
不審に思ったジークは席を立つと、食堂のドアノブに手をかけた。
瞬間、彼の全身に電流の如き衝撃が走り、ジークは思わず動きを止めた。
この得も言われぬ心のざわめきは何だろう。
扉の隙間から漂ってくる不気味な瘴気に、内包していた不安が一層激しくなる。
ルーミアが怪訝そうに見上げるので、心配するなと笑いかける。
酸っぱい唾を飲み込み、ドアノブを回した。
一寸先は闇。

ハインリヒ「凄まじい毒霧ですね……幹部クラスの魔族が来たのでしょうか」

超人の声も心なしか少し硬い。
カンテラで道を照らしながら、三人は客人用の館へ繋がる道を急ぐ。
辺りは寂として、石畳を踏む乾いた音と荒い息遣いしか聞こえない。
近くの林からは今にも恐ろしい魔族が飛び出して来そうだ。
今、ジークの心を占めている感情はおそらく緊張であろう。
人は対象に恐れを抱けば抱くほど、かえって正体を確かめたがる。
恐怖と好奇心とがせめぎ合い、その化学反応で異常な緊張が生まれたのだ。

ハインリヒ「ジークさん、ルーミアさん! あれをご覧ください!」

館の頑丈な屋根を突き破り、天に沖する蒼雷一つ。
温厚な超人は戦慄した。
長い間サンバドル村の教会で、様々な旅人と語り合ってきたのだ。
地面から放たれる蒼雷の意味など、分からぬはずがない。
その場に膝をつき、痴呆の様に呟く。

ハインリヒ「魔族長、テングリカガン……」

気力を失った神父と反対に、狼少年は臆せず歩いていく。
食堂を出る時に携えてきた紅色の双剣を握りしめる。
自分に帰る場所を与えてくれた少年。
闇に生きていた自分を光の世界へ引き入れてくれた少年。
ここで失ったら、また元の生活に逆戻りだ。
悪鬼羅刹から取り返すのだ、希望を!

ジーク「ルーミア、お前魔法は使えるか?」

ルーミア「投げナイフならあるですがらっだよ」

ジーク「よし、ではそれでオレの援護をしろ。窓を割るなりして敵の気を引くんだ」

ルーミア「あーい!」
122名無しさん@おーぷん :2016/03/16(水)23:36:55 ID:hwM
族長自ら出張とは…
族長1人だと手が回らないだろうし
強力な魔族の幹部ももう少し増やして見てはどうだろうか?
123菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/17(木)00:16:04 ID:oah()
>>122
魔族はある勢力と同盟を結んでいる
まぁその話に関してはおいおい
124菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/17(木)23:59:06 ID:2X5
勇敢な狼少年が宿舎に踏み込んだ頃、ミラは壁際にうずくまっていた。
咄嗟の判断で物陰に潜み、声も発せず、濡れた子犬の如く小刻みに震えている。
胸元の十字架を汗ばんだ手で握りしめ、必死に退魔の呪文を唱え続けた。
退魔の呪文さえ唱えれば大抵の魔族は撃退できると、ミラの師であるハインリヒは言っていた。
けれども、眼前に悠然と立つ男にはほとんど効果がない。
呪文など何処吹く風、今も逃げ隠れたミラを探しているはず。
蒼白い光が室内をまるで昼間の様に明るく照らし、電流の流れる音と咆哮とが小夜曲を奏でる。
ただし、二階で歌っているのはおぞましい魔族であるのだが。
毒霧の狭間より薔薇色の月が顔を見せ、宿舎に顕現した邪悪を強調する。
ミラは再び物陰から魔族の容姿を確かめ、絶望の溜息を漏らした。
双角を頭から生やした男の髪は緋色、紛れもなくハルシャその人だったのだ。

ミラ「ハルシャ……どうして、どうしてそんなんなっちゃったのよ」

ミラと奇妙な人肉問答をしている最中、彼は激しい頭痛を訴えていた。
頭蓋骨の内側から、何か異物が突き破ってくるような痛み。
喩えるならば、頭に刺さったフォークをぐりぐり意地悪くかき回される様な感じだ。
吐き気と眩暈を同時に催し、セレスが寝ている牀の隣に倒れ込む。
根は真面目な修道女であるミラが駆け寄った時、既にハルシャの意識は闇へ溶けていた。
自分が自分で無くなる寸前、ハルシャの脳内に魔竜デズモンドの言葉が甦る。
貴様は朕と同類なのだ、いつまでヒトの世界にいるつもりか、早く戻って来い。
だがそれも一瞬であり、自分が何者であるかなどすぐにどうでもよくなった。

ハルシャ「腹が減った……肉が……喰いたい」

ハルシャは首を軽く鳴らし、部屋の窓へ右手を伸ばした。
閃光がほとばしり、派手な音と共に硝子を粉砕する。
久々に本来の姿を取り戻したので、未だ魔力の調節が不十分なようだ。
一通り辺りを探索した後、彼は安らかに眠っているセレスを認めた。

ハルシャ「修道女か……肉付きも悪い。復活祝いの品がこれとは、人間も気が利かぬ」

修道女は魔族の嫌う十字架や聖水を携帯しているので、人肉とはいえあまり食欲がそそられなかった。
それに教会勢力からどんなしっぺ返しを喰らうか知れたものでない。

ハルシャ「ま……見たところ地位も低そうだし……十字架さえ奪えばどうとでもなるか」

思い直した魔物が手を伸ばすと、背後で扉を蹴破る音が聞こえた。
振り返らずに誰何する。
答えは返ってこない。

ジーク「お前、まさかハルシャか!?」
125菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/18(金)00:11:28 ID:P8b
下で聞いてるのが双剣を構えた狼
上で歌ってるのが半山羊化した主人公
真っ赤な月が紫色の毒霧に浮かび、周囲は捻じ曲がった枯れ木だらけ
ダークサンバドル村( ;∀;)
126名無しさん@おーぷん :2016/03/18(金)13:29:02 ID:BAF
地獄絵図ってやつか
127名無しさん@おーぷん :2016/03/18(金)20:15:20 ID:hKT
ダークなサンバを踊る村?(難聴)
128菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/18(金)21:19:53 ID:3yb
やっとハルシャ組が全員揃う(´・ω・`)
129菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/18(金)23:10:50 ID:3yb
彼はジークを一瞥すると、抑揚の無い声で答えた。

ハルシャ「だったら、なんだ」

ジーク「まだオレには状況が理解できねぇ。どうしてお前が魔族になってるんだよ」

ハルシャ「獣人、貴様は帯刀しているが……ちとそれを貸してくれぬか。肉を小分けにしたいのでな」

ジーク「食事なんかしてる場合か! まず事情を説明しろ。お前は魔族だったのか!?」

ハルシャ「ええい、面倒な……」

ジークの問いに対するハルシャの回答は実に単純明快であった。
腕を水平に伸ばし、雷属性の魔弾をジークへ向けて撃ったのだ。
凶悪な魔物となった彼は、会話する労力さえ惜しんでいた。
名も知らぬ下等な獣人と話を拗らせるより、ここで殺してしまえば万事解決。
知恵の輪という玩具と同じで、無駄に頭を使うより絶大な力を以て破壊する方が早い。
もし魔族化したのが彼より賢いハインリヒ神父やセレスであったなら、この様な結論には至らなかったろう。
魔弾を辛くも回避したジークは姿勢を低くし、懐に飛び込めそうな隙を窺った。
自慢の脚力で側頭部に回し蹴りをしても良いのだが、失敗時のリスクが高過ぎる。

ジーク「足払いをしかけて転ばせるか、それとも決死の覚悟で猛攻をしかけるか」

ハルシャ「ぬん!」
130菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/18(金)23:11:05 ID:3yb
気合一喝。
ハルシャが拳を突き合わせた直後、ジークの鳩尾に微電流を纏った右膝がめり込んでいた。
抵抗する暇さえ与えられず、今度は両耳を荒々しく掴まれて渾身の頭突きを喰らう。
目から火花が飛び散り、両手に力が入らず、フランベルジュも落としてしまった。
もう剣技だの回避がなってないだのそんな些細な問題ではない。
真の魔族と単なる獣人にまたがる圧倒的な実力の差に、ジークは畏れ震えていた。
せめてもの抵抗でモフ毛を瞬時に生やしてみせたが、ハルシャが嫉妬を抱くはずもなく、毟り取られ失敗に終わった。
激闘の末、板張りの床に倒れた狼少年の背中を主人公が蹄で踏みつける構図が生まれた。

ハルシャ「ちっとも面白くないぞ、獣人。余の相手をするには数百年早かったな」

ジーク「目を覚ますんだ、ハルシャ! オレを受け入れてくれたお前はどこに行っちまったんだよ!」

ハルシャ「黙れ下衆が。貴様のせいで食事の時間が遅れたわ」

ハルシャの手刀がジークの頸椎をへし折ろうとした時、どこからともなく飛来したナイフが彼の太ももに深く突き刺さった。
それは命の恩人を救うため、エルフの少女が少ない臂力を振り絞り投げた物だった。

ジーク「ルーミア、よせ! お前の勝てる相手じゃない! ミラと一緒に神父の元へ逃げろ!」

ルーミア「じーくをおいてけないもん」

ルーミアは紺碧の瞳に涙を湛え、ひたすらかぶりを振った。
仲間を殺そうとする主人公の足にすがりつく。
勿論ナイフ一本で襲撃を諦めるほどハルシャは軟弱者でない。
もがくエルフの幼女をつまみ上げ、無造作に床へ叩き付けた。
彼女の小さな体は毬の様に跳ね飛び、部屋の隅に置かれている箪笥に激突した。

ジーク「野郎……! よりによってルーミアを!」

全身の毛を逆立て嚇怒したが、押さえつけられている以上どうにもならぬ。
箪笥の裏に隠れているミラへ視線を送ったが、彼女もアワアワ口を動かしているだけだ。

ハインリヒ「やぁハルシャさん。やってくれましたね」

生温かい風の吹きこむ窓からハインリヒ神父が現れ、光り輝く槌を魔物の頭上に生成した。
『約束』のストックが尽きたで、光の上位魔法で対応するしか神父に残された道はない。
だがそれも気休めであり、証明するかの様に案の定、魔法の槌は弾き返された。
それどころか、ハルシャは槌を操り窓辺に立つ神父を物理的に追放してしまったのである。
131菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/18(金)23:12:27 ID:3yb
尽きたで?
尽きたのでだった
あと幼女に変えておこう(-_-;)
132名無しさん@おーぷん :2016/03/18(金)23:14:34 ID:GrF
モフ毛w
133菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/18(金)23:26:49 ID:3yb
ゲスの極みハルシャ
134名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)00:22:36 ID:d0V
私以外魔族じゃないのー♪
135名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)01:09:17 ID:8Vf
ハルシャ「誰に謝ればいいのかわからない」
136菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)14:29:48 ID:CzV
仕分け終了
137菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)14:56:25 ID:CzV
ハルシャは魔族長テングリカガンの○○である
今回の件はそれを裏付けるもの
テングリカガンが彼を得れば、サンバドル村など半日で滅ぼせる
勿論LunaticもHarmoniaも然り
138名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)15:56:21 ID:8Vf
息子か
そりゃ魔族のトップなら村ぐらいはイチコロだろうな
城塞王国相手とかならともかく
139菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)16:18:41 ID:BHV
>>138
残念
息子じゃないんだなこれが
140名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)16:25:15 ID:d0V
祖父という可能性が微レ存

年齢? 野暮なことは言うな
141名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)17:19:37 ID:8Vf
じゃあ娘か!まさかのボクッ娘
142菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)17:25:38 ID:BHV
その女性は光に寄り添う影の如く現れた。
硝子細工のように繊細な白い手で十字架を持ち、鋭い眼光をハルシャに浴びせる。
ゴスロリと呼ばれる漆黒のドレスを身につけ、艶やかな髪を顔の両側に結い垂らした少女。
ジークが食堂で出会ったあの危険そうな匂いを醸していた女性だ。
いつの間に自分らを尾けていたのか。
無表情で彼女は仕事に取りかかった。
膨らみのある黒い唇が僅かに開き、静かな声で呪文をこぼしていく。
十字架の先端から細長い光の紐が伸び、蛇行しながらハルシャに襲いかかった。
放射状に広がる雷の包囲網を軽々とと切り抜け、標的の腕に巻き付く。
紐は彼の四肢と壁を繋ぎとめ、身動きできぬようにしてしまった。
もがけばもがくほど魔力を吸い取るらしく、真綿で首を絞める様にじわじわ拘束する強さを増す。
大量の魔力を吸収されてしまったハルシャを十字架の拘束より解き放つ者は、もはや誰もいまい。
そのうち、暴れ疲れた魔物は首を垂れ気絶した。
たった一撃で仕事を終えた女性に、ジークは急ぎその名を尋ねた。

ニュウ「流浪の祓魔師、ニュウ・クースー」

彼女は短く答えると、階段を下り食堂の方へ歩いていってしまった。
ジークもぐったりしているルーミアを連れて宿舎の外に出る。
二階の窓から転落したハインリヒが、腰をさすりながら歩いてきた。

ハインリヒ「ご無事でしたか、ジークさん。厄介なことになりましたね」

ジーク「ああ、でも大丈夫だ。ニュウ・クースーとかいう人のおかげで無事助かったぜ」

ハインリヒ「ニュウさんの手を煩わせるとは、まだまだ私も修行不足ですな」

ジーク「なぁに、神父は疲れているだけさ。『約束』があればハルシャも敵じゃないだろう?」

ハインリヒ「五分五分ですかね。ところで、本当に大変なのはこれからですよ。ハルシャさんの処遇に関してです」

ジーク「今晩みたいなことがまたあったら、オレ達だけじゃ抑えられないもんな。ルーミアもなるべく危険な目に遭わせたくないし」

ハインリヒ「私がニュウ・クースーさんにハルシャ組への加入をかけあってみましょう。彼女がいればいつハルシャさんが暴走しても止められるはずです」

ジーク「二つ返事で答えてくれたら嬉しいけどな。相手は流浪の身とか言ってたぜ。あまり無理はするなよ、神父さん」

ハインリヒ「おやおや、私の話術を見くびらないで頂きたいですね。期待しておいていいですよ」

こうしてサンバドル村の夜は明けた。
白金色の曙光が、闘技場の残骸を優しく照らし出す。
ハインリヒは手の甲で額の汗をぬぐい、目を細めて呟いた。

ハインリヒ「やれやれ……ニュウさんはなんと頑固な方だろう。これだけ説得しても返事がNOとはね」

ハインリヒ「ハルシャ組の前途はこの朝陽の如く明るい……とは言い難いですな」

ハインリヒ「ミラ! ミラ! 戦士の皆様に朝食の準備を!」

昨夜の地獄が嘘だったかのように、サンバドル村の賑やかな日常が再び幕を開けた。
143菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)17:26:29 ID:BHV
>>141
あんなグータラな娘欲しくないよ(´・ω・`)
144菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)17:33:03 ID:BHV
ハルシャはニュウ・クースーを無事手に入れることはできるのか?
そして、あの全裸大国に暗雲が立ち込める
聖剣はハヤブサとなりて黄昏の空を飛び、猛虎は光となりて異世界を駆ける
魔族と同盟を結んだ勢力とは?
ハーゲル軍総勢三人、新たなる仲間が?
老博士の好きな食べ物はインスタントラーメン

以上
簡単な流れ予告
145名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)17:40:50 ID:8Vf
>>143
見た目よければワンチャンあるやろ(震え声)
そして自信満々だったハインリヒさんェ…
あとこの世界にインスタントラーメン(つかそもそもラーメン)あったのか
146名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)17:47:06 ID:8Vf
ハルシャを抑えられるという事は同じ魔族の対テングリ戦においても
ニュウさんの魔力は戦力になるという事かな?夜限定だけど
仲間に率いれられたらテングリ討伐競争においては
他ギルドよりアドバンテージになるかもなハルシャ組
147菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/19(土)18:09:27 ID:BHV
>>145
老博士のいる世界とハルシャのいる世界は別
後者と違い前者は退廃的な近未来の世界

>>146
夜限定だけど十分頼りになる
特にミスティヴェールは強い
148名無しさん@おーぷん :2016/03/19(土)18:55:37 ID:8Vf
>>147
ああ老博士は別世界だったのか勘違いスマソ

それだけ強いなら他の有力ギルドからもスカウトはあったっぽいなニュウさん
でも群れたり一ヶ所にとどまるのが嫌いだからそういう誘い全部断ってきてるのかな
149菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/21(月)00:37:03 ID:aqR
灯りを消した暗い寝室で、彼は目覚めた。
夜鷹の単調な歌や、爽やかな夜気が開け放たれた窓から流れてくる。
彼は天井の染みをぼんやり眺めた。
昔はよく怪物の顔に見えて恐れたものだ。
正真正銘の怪物に出会い、仕えてからは何も感じなくなってしまったが。
どうにも眠れないので、睡魔が戻ってくるまで外を散歩することにした。
Lunaticとクリム山にて一戦交えた後、迅雷竜ラグードに乗って東に位置する隗国へ。
先代皇帝からの同盟国なだけあって、滞在を快く受け入れてくれた。
我が主は先の戦に関して無言を貫いているが、これは紛れもなく撤退であろう。
結果的に屋敷から追い出されたのだから。
十分な戦果も挙げられず、のうのうと隗国で飲み食いする自分が情けなく思える。
王宮の中庭に行き、月の姿を探した。
周囲には桃の花が咲き乱れ、重みで木々の枝が垂れ下がっている。
バルドは声を張り上げた。

バルド「おい、月よ! 何処にいるのだ! 何故漆黒の仮面で顔を隠すか! 何故いつもの様に私を照らしてくれぬのか!」

彼が信頼できる唯一の友、それは月だった。
任務に失敗した時も、成功した時も、物言わずひたすら光で包んでくれたからだ。
新月の存在を知らないバルドは、てっきり月が愛想を尽かして逃げてしまったのだと落胆していた。

男「今宵も綺麗な満月よの」

突然背後に現れた男に、バルドは表情出さないものの困惑を禁じ得なかった。
長い焦げ茶色の髪を後ろに纏め、青い漢服を緩やかに着こなしている。
隗国の貴族だろうか、夜更けに王宮を出入りするなど余程の身分でなければ不可能だ。
気品のある整った顔立ちと豪奢な扇を優雅に振る姿は、貴族と称すに相応しい。

バルド「どういう意味だ」

男「そのままさ。汚れた心を持つ者にはどうやら見えぬらしいがな」

バルド「私が卑劣漢だというのか」

男「だって汝は仕事仲間に嫉妬や憎悪を抱いているではないか」
150菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/21(月)00:37:17 ID:aqR
バルドはぎくりと身体を強張らせた。
ここ最近、ずっと他人を妬んでばかりいる。
新参のくせに重く用いられるダリア。
Lunaticとの戦いでも奴は戦功をかっさらった。
ダリアより早く生命の宝珠・ハイパーリーブを奪わねばならなかったのに。
主の信頼に応えたかったのに。
奴さえいなければ、とつくづく思う。
バルドは無意識に拳を握りしめていた。
愉快そうな視線を送る男。

男「ダリアはまた一つ、重要な任務を与えられるだろう。汝との差はますます開くばかり」

バルド「名乗れ。私は曲者に貸す耳を持っていない」

男「隗真……第三十代皇帝の隗真。魔族に道を与える者だ。勿論、汝にもな」
151菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/21(月)00:52:35 ID:Pkb()
登場人物盛り沢山で分からなくなった人へ
勢力図はこんな感じ
魔族&隗国&??VSそれ以外
老博士はまず存在する次元が違うので除外してる
152名無しさん@おーぷん :2016/03/21(月)02:30:11 ID:meR
ふむ
153菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/22(火)01:22:05 ID:Ien
キャラ多過ぎて自分でも把握できなくなってくるトラブル
無駄に風呂敷広げたことを猛省
まぁ次に活かせばいいだけなのだが
154名無しさん@おーぷん :2016/03/22(火)01:33:57 ID:RMs
キャラ募集しすぎたな
155菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/22(火)01:46:33 ID:pfX
>>154
本編で調整するよ……
156名無しさん@おーぷん :2016/03/22(火)21:30:11 ID:9kw
>>153
それ隣のスレのシモンと同じ過ちやんけ
キャラ募集タイプの小説は難しいな
扱いに差があると文句言う奴もいるし
157菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/23(水)01:16:59 ID:Wl2
翌朝、隗国の城中にて同盟国との宴が開かれた。
絹の王衣を纏った優男の隣に屈強な山羊が胡坐をかく。
奏者は縦笛を吹き鳴らし、調べに合わせて踊り子が舞う。
まさに酒池肉林という言葉が相応しい空間だ。
バルドは少し離れた場所で、間諜などがいないか煌びやかな城中に目を光らせていた。
彼に宴を楽しむ気は毛頭ない。
早く終わらせて対ハーゲル王国の戦略会議に移りたかった。
マフラーを下げ、まだ湯気が立っている羹を啜る。
大皿に一つ残った肉まんに右手を伸ばすと、横から伸びてきた褐色の手とぶつかった。

ダリア「やぁやぁバルド先輩」

バルド「貴様……」

バルドは眉をひそめた。
横にいた褐色の少女も、虎視眈々と肉まんを狙っていたのだ。
余った左手を剣の柄にかけたが、ここで抜刀すると自分ひいては主君の面子に関わる。
彼は殺意を漲らせながら、手放すまいと肉まんを握り締めた。
ダリアも深緑の瞳をさらに開いて、敵の動きを牽制する。
演出の一部として反響する銅鑼の音は、二人にとって戦闘の火蓋を切って落とすものだった。

バルド「そこまでこの饅頭が欲しいか。名誉も信頼も得ておきながら、まだ欲すというか!」

ダリア「バルド先輩こそ、新参者のボクに厳しく当たり過ぎじゃないかい。後輩には優しく、だよ?」

バルド「やかましい! その汚らわしい手を疾く饅頭から遠ざけよ。拒むなら斬る!」

ダリア「どうぞどうぞ~。ボクの方が地位は上だし、罰せられるのバルド先輩だけだから」

魔族軍の醜い争いを、対岸から超然とした風で眺める者がいた。
全身を白い伸縮性のある布で包み、顔面まで白粉を塗りたくっている。
傍から見れば完全に変態だが、それなりの地位がなければこの宴会には招かれない。
薬臭い変態は酒を呑む山羊へこっそり耳打ちした。

おーぷん「魔族軍ってのはどうしてこう……野蛮なのかしらねぇ?」

テングリカガン「ダリアとバルドのことですか。気分を害されたなら、申し訳ござらん」

おーぷん「いいのよ、ちょっと気になっただけだから。アナタは別に悪くないのよ」
158菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/23(水)01:22:56 ID:Wl2
あのテングリも隗国の皇帝や重臣には頭が上がらない
兵や拠点を貸してもらっているし、実力を認めているからだね
こいつらがハーゲル王国や極東を殺しにかかるわけだ
159名無しさん@おーぷん :2016/03/23(水)02:52:54 ID:WyV
おーぷんさんの場違い感すげえな
160菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/25(金)23:34:40 ID:FiK
猪の骨つき肉を齧りながら、魔族長はこれからのことを思案していた。
隗国という心強い味方を得たが、まだハーゲル王国の討伐には不安が残る。
王家に伝わる魔槍『アデ・ランス』や聖なる杖『アート・ネイチャー』。
その二つだけでも十分脅威なのに、風の噂によれば聖剣まであるらしいではないか。
数百年前、自分を消滅寸前にまで追い込んだ聖剣クチュルクを野放しにしてはならぬ。

隗真「魔族長テングリカガンとやら、汝はハーゲル王国をモノにしたいのだね?」

隣に座る優男がいきなり話しかけてきた。
酒気を帯びた赤い顔であるが、その瞳は凛と山羊を見据えている。
酔っ払い同士のたわいもない話をする気はないようだ。
腹の底にずっしりと響くような低い声で短く答える。

テングリカガン「いかにも」

隗真「兵や糧秣の支援は惜しまぬ。しかし……」

テングリカガン「しかし?」

隗真「ここより東に夷狄の島国があってな。後顧の憂いなきよう早めに潰しておきたいのだよ」

テングリカガン「貴国と極東は相互不可侵条約を結んでいたはずですが」

隗真「それはあくまで昔の話だ。平和な時代が終わったことなど、汝もよく理解しているだろう?」

テングリカガン「ならば先に貴殿の用事を優先せねばならぬ、ということですかな?」

隗真「汝はサンバドル村を潰せ。上位狩猟団と神父が厄介だが、それ以外は塵芥よ。簡単に蹂躙できる」
161菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/26(土)20:03:50 ID:hr8
おやおや
162菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/26(土)20:04:22 ID:hr8
書きこめんぞ
163菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/26(土)20:04:56 ID:hr8
東部戦線と西部戦線の展開。
魔族軍がサンバドル村に攻撃をしかける間、隗真も極東へ親征する。
手早く東の蛮族を片付けた後、敗残兵を連れて悠々と魔族の支援に回るそうだ。
北側から大軍で押し潰すもよし、南側から大艦隊を率いてハーゲル王国を攻め立てるもよし。
相手は鋼鉄の城壁を三重にも巡らせた要塞に潜む鼠である。
彼らを追い散らすには、そのくらいせねばなるまい。
テングリカガンにとって、問題はそこではなかった。
良き友である魔竜デズモンドを説得に向かわせているものの、未だ返事が無い。
我が半身であるハルシャを取り戻さなくては。
前にサンバドル村近くの草原で会った時は、敵意に満ち溢れ、矢まで放ってきた。
聖剣によって分裂してから数百年間、人間と共に暮らしていたのだ。
毒されるのも当然だろう。

テングリカガン「だが……」

宿敵を打ち倒すためには、どうしても必要だ。
もしサンバドル村へ攻め込んだ際、手違いで兵士がハルシャを殺してしまったら。
最悪の場合を考えると、ハルシャが魔族軍に帰ってくるまで容易に動くべきでない。
五年前、早とちりしてアルト族を滅ぼした失敗を忘れたのか。
好戦的な隗真に対し、テングリカガンはどこまでも慎重であった。

テングリカガン「ところでダリア、前に回収したハイパーリーブはどうなっている?」

ダリア「あそこにいますよー」

少女が指差した先には、椀に盛られた白米を手掴みで貪る宝箱がいた。
生命力を凝縮した奇跡の宝珠・ハイパーリーブ。
Lunaticの頭領である武琉はこれを守るため、保管する宝箱にとある魔法をしかけた。
開けようとする者の腕を食いちぎり、優れた格闘技で完膚なきまで叩きのめす怪物に変貌する魔法をである。
人間の魔族研究は昔から知られていたが、実際に創り出すところまでいった者はほとんどいない。
ダリアは宝箱を奪うと、いかなる技を使ったか宝箱の怪物を見事に屈服させてしまったのだ。
山羊は肉まんを取られて不機嫌そうな少女へ優しく尋ねた。

テングリカガン「使い道は考えておるか?」

ダリア「あいつ結構速く走りますよ。最近は専ら野原を駆けてばかりいますね。乗り心地も最高です」

テングリカガン「ファイターミミックを馬扱いするな。奴の喰らう物は何か? まぐさでなく人だろう」

隗真「まぁまぁそう熱くならずとも。それよりダリアとやら、こちらへ参れ」

ダリア「え? 何ですかー?」

隗真は山羊を諌めながら、片手でダリアに近寄るよう手招きした。
真横に座ったダリアへ、ごそごそと小声で呟く。
何やら重要な作戦を伝えているようだ。
どうして、ダリアだけが。
バルドの持つ星空のような夜光杯に小さく亀裂が走った。
164菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/26(土)20:05:33 ID:hr8
その日は何事もなく過ぎた。
新兵の調練をバルドは監督していたが、終始ダリアのことで頭が一杯だった。
彼女が隗真にどんな任務を言いつけられたのか、そして自分との差がまた開いてしまうのか。
内城を囲む城壁に立ち、兵士らの威勢良き掛け声を聞き流しながら、ぼんやりと考えていた。
城下町の外には、アルト族と呼ばれる遊牧民族がいた草原が彼方まで広がっている。
緑の草原に溶けてゆく太陽へ向かって、馬で疾駆する自分をバルドは想起した。
邪念を払うかの如くかぶりを振る。

バルド「……くだらんな、あの部族は五年前に滅んだ。私も、少し疲れが溜まっているようだ」

夕食後、バルドはダリアが部屋に戻らないのを不審に感じた。
広場で数時間も何かを探しているように見える。

バルド「ダリア、もう深更だ。自分の部屋に帰れ」

ダリア「バルド先輩は先に帰っててよ。ボク、髪飾り落としちゃってさ」

バルド「夕食から既に四時間ほど経過している。捜索の続きは明日にしろ」

ダリア「じゃあ、あと五分したら戻る! だからバルド先輩どっか行ってよ」

ファイターミミック「ドッカ、イキナサイ」

ダリアと一緒にうろついていたファイターミミックが戦闘の構えを見せる。
地位が上の相手に対し強制もできないので、バルドは広場から撤退した。
しかし、何かやはり引っかかるものがある。
妙な感覚に襲われた彼は急に引き返し、柱の陰から様子を確認した。
四肢の生えた宝箱がダリアを乗せて歩いている。
それもダリアの部屋とは逆の方向へだ。
深更を告げる寺の鐘が低く城内に鳴り響いた。
165菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/26(土)20:06:02 ID:hr8
良かった
一瞬おかしくなったのかと焦った( ;∀;)
166菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/03/26(土)20:19:48 ID:hr8
ハルシャ=糞山羊
これからどうなってしまうのか……
167名無しさん@おーぷん :2016/03/27(日)01:03:48 ID:Rvm
ヤギシャですね
168名無しさん@おーぷん :2016/03/27(日)01:18:13 ID:jJu
夜汽車みたいだな
169名無しさん@おーぷん :2016/04/01(金)00:30:07 ID:6mk
なかなか更新こない…
170名無しさん@おーぷん :2016/04/01(金)01:35:33 ID:0XE
まだか……
171菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/01(金)16:09:13 ID:0Ia
ダリアを乗せた宝箱は、宮殿の奥へ奥へと進んでいた。
二つ目の角を曲がったところで、つと立ち止まる。
何か気配を感じたらしい。
しきりに振り返ったり、来た道を数歩戻ってみたりしている。
ようやく誰もいないことを確認し、六角堂の様な形をしたお堂に入った。

バルド「ダリアめ、主の目の届かぬところで何かしら画策している」

建物の裏から姿を現したバルドは、無人の頃を見計らって同じくお堂へ侵入した。
伽羅の香りが漂う堂内の中央に、ぽつんと井戸が掘られてある。
苔むしており、もうとっくに地下水は枯渇しているみたいだった。

バルド「底はそれほど深くない。下まで降りても大丈夫だろう」

バルドは音もなく井戸の内壁を滑り降りた。
鉄扉が悠然と居座り、地下へと誘うが如く口を開けている。
門をくぐると、整備された狭い道に出た。
左右を竜の像に挟まれたこの通路は、テングリカガンさえ足を踏み入れたことがない。
いわば隗国の重鎮しか通れぬ『秘密の道』なのだ。

バルド「これは……兵士か」

首があらぬ方向に曲がっている者、頭と胴が離れている者、顎から上が無い者。
見張り番と思しき兵士の惨死体が道のあちらこちらに散らばっており、バルドは顔を背けた。
人差し指と中指を眉間に当て、怒りを抑えるべく嘆息する。
こんなことが隗真に伝わったら、ダリアどころか自分の首さえ危ない。
尾行の途中で死体処理を任されるとは、とことん今日はツいていないものだ。
死体を隠そうにも良さそうな空間が見当たらないので、尾行しながら探すことにした。

バルド「見張り番までおくなど、ここは余程重要な場所と見える」

バルドは剣の柄に手をかけながら、慎重に血塗られた道を歩いた。
172菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/02(土)01:31:12 ID:ETx
隗真とデズモンドのキャラがかぶっている気がする
いや、違う
隗真は優雅で変態だが、デズモンドは厳格だ
173菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/03(日)12:30:21 ID:4qs()
隗国の後宮ほど腐った環境はない。
かつて、隗国を訪問した極東の留学生はそう自身の書物に記している。
ファイターミミックと共に後宮へ侵入したダリアは、それが真実であることを知った。

周りを囲む赤錆びた鉄格子。
お世辞でも綺麗と言えぬ寝台。
何より太陽の光がほとんど届かず、鬱屈とした空気が後宮全体に漂っている。
世界中から招聘された后妃は、身籠ろうが身籠っていなかろうが、等しくこの牢獄の如き後宮に押し込まれる。
世継ぎが一人である以上、他の后妃や皇子などは不用であり、かといって殺すわけにもゆかず、この様な方法が用いられたのだ。

ダリア「そう言えば隗真の奴……宴の時に自らの趣味を暴露していたなぁ。女を収集するのが好きだとかなんだとか」

彼にとって、女性は人でなく物だった。
缶バッヂのように集め、眺めるだけの対象。
愛情の有無に関わらず、とにかく隗真は全世界の美女を我が物としたかったのだ。
物言わぬ、ただの肉人形として。
やけに静かなのは唇を縫い付けられたせいか、或いは抗う気力を無くしたせいか。

ダリア「まったく反吐が出る。こんな性的趣向を持った人間が同盟国のトップだなんて、テングリさんも案外バカだなぁ」

宝箱は廊下の突き当たりで止まった。
自慢の剛腕で鉄格子を飴みたいに折り曲げ、人が通れるほどの空間を生み出す。
ダリアの瞳に喜びの光が煌めき、人懐こい笑みが口元に浮かんだ。

ダリア「やっと見つけた!」

視線の先には、萎れた様子の少女が一人。
洋服とスカートを履いているが、どちらもダリアの見たことのない服装だ。
冷えた床にへたり込んでいる。
黒い瞳に光はない。

ダリア「えーと、北条さん? 大丈夫?」

北条と呼ばれた少女は、ダリアの方へ生気を失ったような蒼白い顔を向けた。
ダリアが何も答えないでいると、銀色の匙を玩具にして弄び始めた。
匙で鉄格子を強く叩くと高い音、弱く叩くと低い音。
いっぱしの演奏者が如く、少女は匙と鉄格子だけで様々な音色を奏でる。

ダリア「一体キミは何をしているんだい? 現実逃避なら止めときなよ。全ッ然面白くないし、見てるこっちが恥ずかしいから」

少女は無言でダリアを仰ぎ見た。
174菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/03(日)12:39:35 ID:4qs()
義輝の伏線を早く回収するべき
義輝さんがグシャグシャに引き裂いた極東からの手紙
彼は真相を確かめるため……
175菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/03(日)12:45:25 ID:4qs()
Lunaticには草むしりでもやらせとくか
176名無しさん@おーぷん :2016/04/03(日)23:27:12 ID:xsl
草むしり(意味深)
177名無しさん@おーぷん :2016/04/04(月)02:56:57 ID:BKI
そういえばあったなぁ
178菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/06(水)00:03:30 ID:Mud
ダリアはファイターミミックに命じて、少女を牢獄から引っ張り出した。
怯えた悲鳴を挙げることも、暴れて逃げようとすることもない。
毛糸で編まれたベージュ色の帽子をかぶり直し、鋭い視線をダリアに浴びせている。

北条「あなたは私を殺しに来たのね」

嗄れた声で少女は呟いた。
落ち着き払って立ち上がると、再び牢獄へと戻る。
両膝を抱えて座るその姿は、死の到来を待ちわびる子羊のようにも見えた。

北条「さぁ、好きなように処刑なさい。逃げも隠れもしないわ」

ダリア「ボクは処刑執行人じゃない。ある人の依頼でキミを逃がすために後宮を訪れたんだ」

北条「逃がす? どこへ逃がすっていうのよ」

ダリア「キミの故郷……極東へさ。依頼人から聞いた情報だけどね」

北条「私の故郷は、そんな所じゃない。冗談もほどほどにして」

囚われの姫君は顔をそらすと、素っ気なく答えた。
とんだ強情ぶりである。
ダリアは肩を竦めると、困ったように溜息を吐いた。

ダリア「依頼人はあの隗真皇帝。彼が妃であるキミを解放してやると言ってるんだよ」

北条「帰って。あなたに私を救うことはできない。この世界に漂着した時に、私の人生は終わりを告げたの」

ダリア「とにかく! 北条麗、ボクはキミを極東へ導くよう皇帝から勅命を受けた。拒否は許さないよ!」

不毛な問答に嫌気が差したか、ダリアは乱暴に少女の襟首を掴んだ。
自分の横に座らせ、宝箱の側面を軽く三回叩く。
二人の少女を乗せたファイターミミックは両手を大きく振りかぶり、出口めがけて疾走した。
狭い通路を爆走し、苔だらけの井戸を足も取られず駆けあがる。
外に飛び出した刹那、ダリアの頬を鋭利な刃が掠めた。

ダリア「伏せて!」
179菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/06(水)00:29:27 ID:Mud
ダリアと北条のいたところを、黒い光が鞭の様にしなりながら通り過ぎてゆく。
光はそのまま前方の厩に直撃し、横一直線に斬り裂いた。
それだけにとどまらず、逃げ惑う宝箱を漆黒の柱となりて執拗に追ってくる。
地面に映るは、翼を広げた悪魔の影。

ダリア「やっべ、バルド先輩だ」

歯を食いしばり、魔族軍幹部の少女はファイターミミックを必死の思いで叩いた。
今、バルドを敵に回すのは大変危険だ。
影の男と呼ばれ、魔族長の信頼も厚いバルド・シュヴァルツバルド。
彼女とファイターミミックの実力を合わせても、正攻法でバルドに勝利するのは不可能であろう。
入り組んだ隗国の王宮を利用して、埠頭まで逃げ切るのが上策だ。
そこまでいけば、船を拝借して極東までずらかることができる。
ダリアは自分の実力に関して、誰よりも理解していた。

北条「いきなりどうしたの!?」

ダリア「ちょっとね……ボクの行為が身内にバレてたみたい。それも相当に誤解されてるよ」

北条「誤解?」

ダリア「バルド先輩はああ見えて浅慮なとこあるからね。ボクを裏切り者と認識するのも無理ないさ」

なりふり構わず、近くの建物へ窓を突き破って侵入する。
天井が高く、奥行きもかなりあるその施設は厨房であった。
羹の香ばしい匂いと熱気が二人の顔を包むが、それどころではない。
道行く料理人を押しのけて、よろめきながらも走り去る。
窓を突き破ってきた黒い疾風は、殺意の炎を両目に燃やしながら調理台の上を駆ける。
まだ火が点いている台や、餡のせいで滑りやすくなっている箇所もあるが、バルドには通用しない。
彼が伸び縮みする剣を滅茶苦茶に振り回すので、厨房は阿鼻叫喚の流血地獄と化した。
腰を抜かす料理人から包丁を奪い、ダリアへと投げつけるも全て回避されてしまう。

ダリア「ミミックにそいつは効かないよ。バルド先輩勉強不足だねー」

ファイターミミックの眼球は側面についており、360度景色を見渡せる。
バルドの攻撃を察知できたのも、彼の視野が馬並みに広かったゆえ。
逆に言えば、彼がいなければ既にダリアの命は露と消えている。
厨房を脱出した宝箱は、広場へと躍り出た。
衛兵は眠りこけてしまっている。

ダリア「お勤めご苦労!」

ファイターミミックは衛兵の身体を宙へ放り投げた。
一拍おいてバルドの光剣により、鎧に包まれた衛兵が八つ裂きとなる。
180名無しさん@おーぷん :2016/04/06(水)02:14:34 ID:wLM
おっ更新きてる
181名無しさん@おーぷん :2016/04/07(木)01:56:40 ID:3Vw
文章スキルが上がってない…
やっぱりこういう所で書いても仕方ないんだろうね
182菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/07(木)07:30:06 ID:Row()
>>181
まぁ半分趣味だからな
例えばどこら辺が駄目なのか
後学のためにも教えてもらえると助かるよ
183名無しさん@おーぷん :2016/04/07(木)15:21:41 ID:CBL
小説家になろうには書いてる?
184菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/07(木)16:13:20 ID:Row()
>>183
書いてないよ
あそこ異世界転生ネタしかウケそうにないし
185菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/08(金)09:51:31 ID:4iv()
バルドの猛り狂った犬の様な追撃が止んだので、ダリアも不審に思い宝箱を停止させた。
彼は広場の中央で黒い光剣の刃先を下に向け、こちらを睨みつけたまま立っている。
隣で北条がびくりと震えるのを感じた。
震えという現象は概して二種類、恐怖によるものと武者震いによるものがある。
この時、彼女の全身を稲光の様に駆け抜けた震えは、紛れもなく前者であった。

ダリア「怖がらないで、北条さん。バルド先輩の出方を窺ってみよう」

無垢な赤児をあやす様に優しく語りかけると、ダリアは笑顔で殺戮者に手を振った。

ダリア「バルド先輩、夜更けにお散歩ですか? お身体に触りますよー」

バルド「貴様が怪しい行動をしていたので、尾行させてもらった。隗国の皇后を連れて何をしでかすつもりだ」

ダリア「後宮が地下にあると聞いて、夜風に当たらせてやろうと思ったんだ」

バルド「それだけのために兵士を斬り殺すか? 一時的であれど、仲間である国の戦力を削るか?」

ダリア「違う! あれは事故で……!」

バルド「本当の目的を言え。隗国の皇后を連れて何処へ雲隠れするつもりだった?」

バルドの頑なさに、彼女は閉口した。
きっと、彼としても都合が良いのだろう。
ダリアを裏切り者にすれば、自分は何の科もなく正式に処刑できる。
バルドに話を聞く気など最初から無いのだ。

ダリア「……ボクは皇帝の勅命で、北条さんを極東に送り届けねばならん。奴の目論見はさっぱりだけど、同盟国のトップに逆らうわけにゃいかないよ」

バルド「よくも、ぬけぬけとそのような嘘を吐けるものだ。極東と通じて我らが主に叛旗を翻す裏切り者が。芽が育たぬ内に摘み取ってやる。では、そこに直れッ」

剣を水平に構える。
刀身が敷地の限界まで伸びてゆく。
右脚を軸として回転しながら、バルドは殺意を籠めて剣を振り抜いた。
巻き起こる旋風で、広場の四隅に設置されていた篝火が一斉に掻き消える。
もしダリアが一瞬早く後退りの合図を送っていなかったなら、彼女と隗国の皇后は腰斬の憂き目に遭っていただろう。
186菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/08(金)09:53:34 ID:4iv()
ゴムゴムの剣、第二弾
187菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/10(日)12:45:54 ID:pwe
その身を颯爽と翻し、ファイターミミックは参差として連なる家屋の道を一直線に走りだした。
逃がすまいと、追尾者も屋根伝いに同じ道を狂奔する。
さながら取り逃がした栗鼠を狙う、夜の支配者である梟の如く。
梅の香りを微かに含んだ向かい風が、ダリアと北条の髪を逆立てる。
二人は実際のところ、かなり焦っていた。
敵を撒こうにも道が一直線に続いているので隠れる隙がない。
船のある埠頭まで、ファイターミミックの脚力を信じねばならないのだ。
とはいえ、予想外にバルドがずんずん迫ってくる。
港へ到着する前に、三人まとめて葬り去られてしまうかもしれぬ。

北条「私に任せて。秘策があるの」

隣にいた少女の言葉に、ダリアは思わず眉をひそめた。
つい先ほどまで地下の牢獄で震えていた少女に、一体何ができるというのか。
若干嘲りを含んだ視線で、彼女の右手に握られている長方形の白い箱を見やる。
いや、箱と呼ぶにはあまりに平べったい。

ダリア「その奇妙な物体でキミは何をするつもりだい?」

北条「これはスマートフォンっていうのよ。それも、普通の個体じゃないわ。かなりの魔力を温存しているの」

ダリア「ス、スマート……ボクには全然分からないよ。キミは一体どこから来たの?」

北条「あなたの知らないところからよ。そして、これからも永遠に交わることのない場所……」

スマホこそが、彼女がもと来た世界と結ぶ唯一の生命線であった。
北条はスマートフォンの電源を入れると、ほっそりした指を操りパスワードを解除した。
Safariと書かれたアイコンをタッチし、そのままお気に入りの項目に飛ぶ。
あの電子掲示板に、増援を要請するのだ。
画面が若竹色に光り、彼女は半ば祈る様に文字を打ちこむ。
伸びてきたバルドの剣が北条の肩を貫き、純白の夏服を紅に染め上げる。

北条「お願い、みんな私に力を貸して!」

名も無き窮鼠の呻きに呼応して、弾丸の如く飛び交う文字の数々。
彼女が電子掲示板に立てた救援要請の依頼は瞬く間に1000まで埋まり、顔も見知らぬ全国の戦士らは画面の向こうでキーボードに手をかけた。
とあるフリクションキーを、連打するために。
188菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/10(日)23:36:26 ID:q6A
書き溜め王に俺はなる
189名無しさん@おーぷん :2016/04/11(月)17:57:30 ID:rtf
なんか上に変な事言って文句つけてるやついるけど
ワイは更新楽しみに待ってます
190名無しさん@おーぷん :2016/04/11(月)23:38:01 ID:mpo
いきなり文明の利器が登場してびっくり
191菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/12(火)00:48:13 ID:HTC
>>189
ありがとう
でもやっぱり文章力の低下は否めない(-_-;)

>>190
異世界からのトリップ人間は違和感バリバリである
192菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/13(水)00:04:13 ID:qha
F5キーの連打による回線の過負荷状態。
通常ならばサーバーがダウンしてしまうが、彼女のスマートフォンに限っては違った。
過負荷状態が発生する前に、膨大な再送請求を網漁よろしく掬い上げ、自身の魔力として充填するのだ。
この世界にトリップするまで、彼女でも気がつかなかったスマホの隠されし能力。

北条「まったく恐ろしいわ。兵器にもなり得る機械を平然と持ち歩いていたんですもの」

機器がぼんやりと、淡い点滅を急速に繰り返し始めた。
恐れを知らぬ猛者達による、DoS攻撃祭が遂に開催されたらしい。
電波のみが元の世界と辛うじて繋がっているからこそ、このような芸当は完成するのである。
風に飛ばされぬよう毛糸の帽子を押さえながら、北条はダリアに顔を向けた。

北条「もう少し宝箱さんを頑張らせて。充填完了まで時間がかかるの」

ダリア「彼はこれくらいじゃへこたれないよ。並みの馬力じゃないからね。ところで、何を溜めているのだい?」

北条「じきあなたにも分かるわ。現代文明と魔法の相乗効果ってやつね」

画面下部に表示されたゲージが、みるみる上昇してゆく。
点滅の速度と輝きの強さも比例して増し、その光景はまるで森閑とした城下町を翔ける一つの流れ星だ。
充填完了を知らせる笛の音が高らかに鳴り響き、連打を終えた戦士達は電子掲示板に勝利の雄叫びを書き殴った。

北条「私が元々いた世界にはね、祭りの大好きな人が大勢いるの。どんなにバカみたいなことでも、本気で取り組む勇者達が」

ダリア「へぇ……つまりどういうこと?」

北条「私『達』の勝利よ。これより背後に迫る敵を永遠に足止めする」

流れる黒髪をそのままにして、北条はスマホの画面をバルドへかざした。
砂時計の模様をした光線が強烈な衝撃と共に、どうっと画面より溢れ出る。
追跡者はダリアと北条を甘く見ていたため、光線にそのまま突っ込んだ。
途端にバルドの脚の動きが緩慢となり、ほとんど動かないようになってしまった。
193菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/13(水)00:05:07 ID:qha
魔族軍幹部で名を馳せているバルドも、この攻撃には驚愕を隠せなかった。
両脚が宙に浮いたまま、氷漬けされたかのようにびくともしないのだ。
束縛魔法の一種であろうが、自分の精神力を以てしても抗えぬとは相当の魔力である。
遠ざかるファイターミミックを屹と睨みつけ、バルドは怨嗟のこもった獣の如き咆哮で夜霧を揺るがした。

ダリア「キミ、凄いなぁ。バルド先輩を抑えつけちゃうなんてさ」

北条「私一人の力じゃないわ。画面の向こうに座ってるみんなが協力してくれたから、この術式は完成したのよ」

ダリア「画面の向こう……? いまいち意味が不明なのだが、説明してくれるかな?」

北条「あなたに言っても無駄よ。私のことを理解してくれる人は、この世界に誰もいないんだから」

早朝、重い瞼をさすりながら目覚まし時計を止めて、そのままシャワーに入る。
母親の作ってくれたハムエッグと焦げ目のついたトーストを頬張り、面倒ながらも夏服の袖に華奢な腕を通す。
走って最寄りの駅まで行き、汗まみれのままぎゅうぎゅうのすし詰めになって電車に揺られる日々。
高校の近くで美味しい料理店だとか、ここ最近で面白いと思った本だとか、好きな芸能人だとか。
そんなごく普通のことを、ごく普通に友達と語りあえることの幸せさよ。

北条「私には友達と呼べる人なんていなかった。毎日図書館にこもって、日が暮れるまで本を読み漁っていたの」

ダリア「美人のくせに、ずっと孤独だったんだね。もちろん恋人もいないんでしょ?」

褐色の少女が放った何気ない一言は、北条の心に深い傷を残した。
好き、という程ではないが気になっている人ならいたのだ。
同じ図書委員で、いつも気だるそうで、けれども他の男子生徒にない大人っぽさを兼ね備えた人。
名前をわざと間違えて呼ぶのも、彼と話すきっかけが掴めればいいという歪んだ乙女心からだった。
神の悪戯によって異世界へトリップしてからは、彼に憎まれ口を叩くこともできない。
北条はスマホの画面に目を落とし、吐き捨てるように答えた。

北条「だから何? 前見て運転しないと、事故起こしても知らないわよ」

ダリア「心配ご無用。ファイターミミックはボクの指示がなくとも埠頭へ辿り着くよ」

波が埠頭に当たって砕ける音が聞こえてきた。
梅の香りはいつの間に潮風に変わり、周囲も直方体の積み荷が目立つようになってくる。
蜿蜒たる湾のいびつな曲線が、今の北条の心を反映しているように思われた。
194菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/13(水)00:11:14 ID:qha
やべぇ
この先のデータがなぜだかぶっ飛んだ
書き直し確定きえええええええ( ;∀;)
195菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/13(水)00:17:37 ID:qha
悔しいのう悔しいのう
196名無しさん@おーぷん :2016/04/13(水)00:50:06 ID:o8f
御愁傷様
197名無しさん@おーぷん :2016/04/14(木)08:38:44 ID:re3
褐色だからギャルだと思ったけど違うんだね…
198菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/14(木)09:02:27 ID:q3p()
>>197
この世界にそんなものは存在しないよ……
てか最近のギャルは意外なことに、白色化してきてるらしいじゃん
199菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/14(木)09:15:59 ID:q3p()
場面転換激しくてみんな着いてきてくれてるか心配
こっから更にブッ飛んでいくが、ショートしないよう祈ってるぜ
200菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/15(金)00:06:15 ID:Lzf
シモンとハルシャが闘ったらどうなるか
剣術は負けるけど、弓術と騎馬に関してはハルシャに軍配が上がると思ふ




……なんて考えたりする
201名無しさん@おーぷん :2016/04/15(金)00:35:03 ID:I5L
これはまさかのコラボクルー?
しかしハルシャさん魔族だから普通にハルシャが勝つような気がする
いかにシモンとて人間だし
それともあくまで人間バージョン限定ハルシャ対シモンということ?
202菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/15(金)07:43:21 ID:lG3()
>>201
コラボしたらキャラがエラいことになるw
確かにハルシャは魔族だが、まだ力を制御し切れていない
赤児が初めて手にした鉈を、闇雲にぶん回してるような状態だね
203菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/16(土)07:57:44 ID:kai()
ポスト・アポカリプス編のプロットが出来つつある
あとはこれを文章におこす度胸があれば満点だね
204菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/18(月)17:54:42 ID:E1r()
ダリアは宝箱を停止させ、蛙の如く地面へ飛び降りた。
周囲に敵がいないか確認すると、隗国の皇后についてくるよう合図する。
月明りの下、二つの影法師がゆらゆらと積み荷の森を縫うように進んでいく。
大国の港とあって、深夜といえど灯台に見張りの兵が立ち目を光らせている。
ダリアは樫で作られた小舟の前で止まった。
舟べりを念入りに叩きながら、少し高揚した様子で話しかける。

ダリア「ボクらは相当に運が良い。こんなにも早く移動手段が手に入ったのだから」

北条「こんな小舟で海を渡るの? 今にも底に穴が開きそうよ」

ダリア「見てくれは悪いけど、材質は中々の物を使ってる。それに、大きい帆船で出航したら隗国の見張りにバレちゃうじゃない」

ダリアの言葉が終わらない内に、北条は背中をどつかれて船内に転げ落ちた。
小舟がさざ波を立てながら岸から離れていく。
残されたファイターミミックは、酷く寂しげな様子で筋肉の鎧に覆われた腕を振った。
遠い異国へと旅立つ恋人を見送るかのように。

北条「あの宝箱は乗せてあげないの?」

ダリア「馬鹿だなぁ。あんな重いの乗せたら舟が沈んでしまうじゃないか」

北条「冷たい人ね」

ダリア「ボクは常識的に考えて述べただけだ。あと、彼にはまた新しい任務が皇帝から与えられているらしいし。極東に来てもらっちゃ、逆に迷惑というか、足手まといなんだよね」

二人は暫く無言のままであった。
話そうにも、ここ数時間で起こった状況の変化に、何から話せば良いか分からないのだ。

北条「あなたは何のために極東へ行くの? ただの護衛とは到底思えないわ」

ダリア「ボクはキミを送るよう、隗真から仰せつかったわけだが」

北条「いいえ、絶対に裏があるわ。だってあの男が閉じ込めた皇妃を外に出したことなど、今までに一度もないんだもの」

ダリア「……どうぞ、ご自由に想像してくれたまえ。その予想が正しいか否か。いずれ、時が教えてくれるだろうさ」

照覧せよ、水平線より昇る太陽の輝きを。
湾から出る頃には、すっかり夜が明けていた。
魔族に加担する人間の少女と、異世界から来た人間の少女。
この皇妃脱走事件こそが、二人の運命を後に大きく変えてゆくことになる。
205菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/18(月)23:56:15 ID:E1r()
2704年、8月24日。
ここ数日ずっとパソコンと睨めっこをしていたので、久しぶりに身体を洗うことにした。
シャワー室の前で白衣を脱ぐと、牛蒡のように痩せ細った腕や足が露わとなる。
老木博士は枯れ果てた身体を動かし、周囲がステンレス製の壁で囲まれた部屋に移動した。
数十年前から感じていたことだが、シャワー室の閉塞感には相変わらず馴染めない。
鏡も窓もなく、あるのはシャワーとマイナスイオンを噴射する殺菌用スプリンクラーだけ。
もう少しお洒落な内装にするべきだったか。

シャワー「アレクセイ博士。今日はどのコースでお身体をお流しになりますか」

人工知能の搭載された高性能シャワーが、老博士の眼前にデジタルメニューを表示する。
Aコースは髪の毛のみ、Bコースは髪の毛と身体全般、Cコースは心まで洗い流してくれる。
老博士が黙ったままなので、自動的にAコースが選択された。
左右の壁からニョキっと飛び出してきた機械の腕が彼を椅子に座らせ、モズの巣みたいな白髪をシャカシャカ搔きまわし始める。
前方の壁が真ん中から開き、カップヌードルを乗せたプレートが勢いよく飛び出た。

シャワー「カップヌードル。シーフード味」

ホカホカと湯気が立っているヌードルに真鍮のフォークを突っ込んだ老博士は、スパゲティの様にクルクル巻きつけ口に運んだ。
数百年も昔の古代食は、彼の大好物である。
あの濃いスープの味がクセになるのだ。
麺をかきわけて発掘したカニカマを舌の上に乗せ、閉じた口の中で転がすのも面白い。
荒んだ人生の、数少ないオアシスと言える。

ペッパー「まぁ……あなたったら。またシャワー入ってる時に食事なんかして。お行儀が悪いですこと」

老博士「月に数度の贅沢だ。大目に見てくれ」

老博士はバスタオルで髪を拭きながら、自分の助手であり妻でもある女性に返答した。
かなりの高齢だが、アンチエイジングを欠かさず心がけているので皺の数は少ない。
くりっとした若草色の瞳に見つめられると、今でも老博士の心に桃色の風が吹く。

ペッパー「頼まれた雑誌と図鑑、揃えて来ましたよ。くれぐれも、お仕事以外には使っちゃいけませんからね」

口を尖らせつつ、老博士に積み重なったグラビア雑誌の束を渡す。
彼の表情が明るく輝いた。

老博士「ありがとう、これで仕事が捗る。やっぱりお前は最高の妻だ。シャワー室で汚れを落としてきなさい」

バタバタと遠ざかっていく夫の足音。
それが完全に聞こえなくなった時、彼女は洗面台に蛍光グリーンの血を吐いた。
206菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/19(火)00:00:13 ID:yPQ()
SF書いたことない人間が挑戦するとこうなる
これはある意味実験だ
207名無しさん@おーぷん :2016/04/19(火)01:33:43 ID:TVd
どうしてもペッパーくんが脳裏を掠めるんだが
208名無しさん@おーぷん :2016/04/19(火)03:58:37 ID:ZGl
現代機器がオーパーツみたいになってるのかな
209名無しさん@おーぷん :2016/04/20(水)23:16:10 ID:PGS
スレチごめん。あえてお邪魔しますm(_ _)m
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1461154079/l50
このスレ主は私です。
菩薩どんが現れた時は焦ったよ。
レスありがとうね!
それが言いたかった。
210シモン◆qECGVNv88M :2016/04/20(水)23:16:43 ID:PGS
コテ忘れた(´Д` )
211菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/20(水)23:30:09 ID:nL6()
>>209
マジか!
全然分からなかったよ
こっちも書き上げるから、シモヌもオマサガとメタハー2頑張れ!
期待してるよ!
212シモン◆qECGVNv88M :2016/04/21(木)01:01:48 ID:xi1
>>211
ありがとうね!お互い頑張るべ。
しかし……菩薩どんが現れるだと時は
ズッコケたわww
なにやってんだよ〜と思ったけど、
それ書いたら即ブーメランで返って来るから
やめておいた。
213菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/21(木)23:00:46 ID:UyW()
この老博士は『ハルシャ=ナーマ』の根幹に関わる重要人物
それから2704年という馬鹿みたいな未来設定もね
ただのモブなんかじゃあないぜ






そろそろ、あの全裸大国に動きが見られる模様
214名無しさん@おーぷん :2016/04/22(金)12:17:25 ID:aMr
RPGツクール的な事をしているのか?…
215名無しさん@おーぷん :2016/04/22(金)20:33:51 ID:jtY
トハラ来るか…
216菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)10:37:19 ID:GC9()
パソコンと装置のある部屋へ急ぐ老博士。
その両手には先ほど妻から渡されたグラビア雑誌が、山のようにうず高く積まれている。
棺桶のような形状の機械に雑誌を放り込み、カタカタとキーボードを叩く。
画面をのたうつミミズの如き数式と、夜もすがら睨めっこをするのは嫌いではない。
古代人のグラビア誌が必要なのは、自分が構築している世界に水着の概念を持ち込むためだ。
コードの入力が済むと、油で黒く汚れた棺桶は白い霧を噴射しながら振動した。

ペッパー「あなた……いつまでこんなことを続けるつもりですの?」

人工声帯の機械的な声が、諌めるような調子で優しく老博士の頭上を通り抜ける。
これまで何万回も繰り返されてきた問答。
答えても不毛なだけなので、老博士は岩みたいに押し黙ったまま、冷たい珈琲を啜った。

ペッパー「試作品が完成……するまで?」

老博士「その通りだ。研究が完成すれば、瘴気に汚染された地球は浄化される。新たな世界として緑が蘇るのだよ。さぁどんどん死体を投下するぞ。ペッパーも手伝ってくれ、新世界への片道切符を無駄にするわけにゃいかん」

ペッパー「死者の魂を吸い続けて創られた世界ですか。あまり、良い風には聞こえませんね」

老博士「魂を吸うとは確かに聞こえが悪い。死んだ者に残る魂の断片からキャラを作り、仮想空間で平和な暮らしをさせる。消えゆく者に第二の人生を与えてやるのだ。これが社会奉仕と言えずして、何とするか」

ペッパー「ですが、その……まるで魂を燃料みたいに扱うものですから。私達の子供だって、イヴァンさんの子供だって、その試作品で『生きて』います。研究のためだとしても、私はそこまで冷徹になれません」

老婦人の両目から緑色の液体が流れ出した。
アトラス星人の彼女は、極度の緊張状態に陥ると眼球の毛細血管が破れて、緑色の体液を流してしまう繊細な体質なのだ。
一般人ならともかく、長年一緒に過ごしてきた夫がそれを知らぬはずがない。
すぐさま彼女を落ち着けようと、声を柔らかくして子供に言い聞かせるが如く宥める。

老博士「……すまなかった、お前がそこまで思いつめているとは想定外だったのでな。ただ、作業は続けねばならん。私は燦々と輝く太陽を死ぬ前にもう一度、この目で見てみたい」

投影機のボタンを押して外の景色を映し出す。
高濃度の瘴気によって空間全体が紫色に染まっているものの、浄化された暁には満天の星空が広がっていることだろう。
電子タバコを咥えて空を見上げる横顔に、妻はかつてスペースコロニーで初めて出会った頃の、野心に燃える彼の姿を見出した。
電源を消した彼は、また元の仄暗い研究室で古めかしいノートパソコンの前に座り、後ろに立っている老いた妻へ目配せした。

老博士「さて、そろそろ再開しようか。ハーゲル王国に暗雲が立ち込めるぞ。サンバドル村を潰しにテングリカガンが……」

ペッパー「あなた、ステテコパンツの虎男の存在も忘れてますわよ」

老博士「そんな奴もいたな……現在予測されている事柄はこの三つのみか。もし新たな展開があったなら私に教えてくれ。隣の中央管理室で異常がないか確認をしてくる」

今宵も、月の明かりは地上まで届かない。
動物はおろか、雑草すら育たぬ機械都市。
競うように建設されていた高層ビルは全て朽ち果て、遠くから俯瞰すればところどころ針の抜け落ちた格好の悪い剣山にも見える。
繁栄を極めた文明の終着点とは、かくも寂寞としたものであったのか。
217菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)10:37:52 ID:GC9()
全力でネタバレしていくスタイル
218菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)10:41:23 ID:GC9()
>>214
良い線いってる

>>215
トハラくるね〜
ふむふむ〜
219名無しさん@おーぷん :2016/04/23(土)14:02:14 ID:NQm
なるほどこの世界は老博士が作った箱庭的な話なのかな

そして嫌悪感を露にしながらしっかり登場キャラ把握して突っ込み入れるペッパーさんに草
まあ実際何かにクレームつける奴ってなんだかんだ言って実はそれに対してすっごい関心持ってるからなあ
220菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)17:28:57 ID:GC9()
>>219
ま〜そんな感じだね〜
クレームのある内が華ってわけね
221菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)17:29:39 ID:GC9()
ハルナマの主人公は計三人
分かった人がいたらすごい
222名無しさん@おーぷん :2016/04/23(土)18:50:03 ID:NQm
>>221
一瞬ハナマルに見えたw
そうそう、アンチなんて裏を返せばその作品にめちゃめちゃ
のめり込んでるからこそアンチになるわけで。だから仮に
菩薩の作品にアンチが来ても「おー俺って注目されてんなあw」
ぐらいにどーんと構えてればいいよw

ふむ、この時点でその問題を出せるってことはここまでに登場したキャラか
老博士、ハルシャと来てあと一人…わざわざ問題にするという事は
ギルマスのハゲスルメみたいに明らかにメインっぽいキャラではないよな
各ギルドの構成メンバーの誰かか。なんとなくだけど自分の幼少時代を
振り返ってるという設定で(未来の)ルーミア
223菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)19:30:52 ID:GC9()
>>222
せやなぁ
アンチにはスルーが上策
構っちゃうのはアホのやること

ルーミアはちょっと違うかな
凄まじい過去があるっつーのは確かなんだけどね
老博士も重要人物に変わりないが、主人公にしては歳を取り過ぎ
最近になって、ようやく物語の大筋がまとまってきたよ
あとは書くだけ( ´ ▽ ` )
224名無しさん@おーぷん :2016/04/23(土)19:52:29 ID:NQm
あれ?老博士違うんか
箱庭の?製作者的な意味で創造神のような立ち位置かと思ったんだが…意外に難しいな主人公探しw
なんにせよ続きが気になる作品だからむっちゃ期待してるわ
225菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/23(土)20:13:28 ID:GC9()
>>224
ありがとう!
「完」の文字をつけられるよう頑張る(`_´)ゞ
226菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/25(月)14:30:38 ID:aRF()
なんか過去スレをほじくり出してる奴がいるな
227菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/26(火)08:10:00 ID:eC2()
空はどこまでも高く、広い。
だが、その広がりがどこまで続いているかを知る者は誰一人としていない。
ゆえに、物知り顔で空の限界について語る学者は、総じて愚かなのである。

王家もまた然り。
王族の偉大さを国民は皆知っているが、人間関係や心境まで察せる者はゼロに等しい。
古参の臣下でさえも上っ面だけを見て、ハーゲル兄弟の仲が良好であると判断する。
父王の死に参じた長男が内心ほくそ笑んでいるのも分からず、同情の涙をこぼすのだ。
ハーゲル王国にて歴戦の勇者と讃えられたナンダ将軍も、前述の例に当てはまる。
彼は遺体のある部屋に入るなり、周囲の臣下がたじろぐ程の動揺を見せた。
鍛え抜かれた肉体を仔鹿の様に震わせ、顔面をくしゃくしゃに歪め、亡き王の名を幾度なく声が枯れるまで泣き叫ぶ。
その喧しさといったら、牛と象の合唱と喩えてもまだ足りないだろう。
小鬼のような醜い姿をした長男が、うずくまる不動明王の肩に手をかけた。

ケトーメロ「おやめなさい、ナンダ将軍。豪胆で有名な貴殿が慟哭しては兵の士気に障りが出ます。将軍たるもの、いかなる状況にあっても冷静さを保たなければなりません」

ナンダ「その通りでございます。しかし……あまりに皇子様はお強い。臣下の我々よりずっと親しい間柄ですのに、少しも取り乱さず国の将来を考えているのですから」

ナンダ将軍の言葉には僅かながら、皮肉の響きがこもっていた。
ケトーメロは自分を強いなどと思わない。
小心者で、卑劣で、利己的で、身体も小さい。
だからこそ、彼は自分が誰よりも狡猾な蛇であることを自負している。

ケトーメロ「玉座に腰かけるのは、この私だ」

レイギャン王の死も表向きは安らかな老衰とあるが、ただ蛇の毒牙にかかっただけのこと。
悲しむよりか、猜疑心に満ち溢れた暴政が終わり喜ぶべきなのである。
父を始末した不孝者が腹から湧き上がる笑いを堪えていると、大股で部屋に入る者があった。
闖入者が大理石のタイルを一歩踏みしめる度にあれは次男じゃないか、キラメロ・ハーゲルじゃないかと周囲で声が上がる。
長男と同じく禿げているが、その身体つきは比べ物にならないほどしっかりしている。
日に焼けた端正な顔は父の死に対する悲しみと、兄に先を越された憎悪とで激しく燃え上がっていた。

キラメロ「やりやがったな、兄貴」

ケトーメロ「はて? やりやがったとは、何をですかな? かわいいかわいい弟よ……」

キラメロ「親父を殺したのはテメェだろうが! ガルダが覗いたと言っていたぜ。昨日の夜、怪しげな薬を厨房で調合するテメェの姿をよ〜」

ケトーメロ「初耳ですなぁ、さような話は。昨日の夜、私が客人の家に行っていたことをあなたは知らないのですか?」

キラメロ「客人だと? そうかい、作った毒薬を盛るために客人を使ったんだな」

ケトーメロ「愚かな……」

次男の当て推量は、半ば当っている。
毒はある意味賭けだ。
ほぼ確実に殺せるが、失敗時のリスクも高い。
そのような亀裂の入った橋は渡らぬに限る。
安全至上主義のケトーメロが出した結論は、外部から強力な客人を招き、毒を凌駕する威力の技でレイギャンを暗殺することだった。
228菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/26(火)14:22:19 ID:eC2()
次男の追及に辟易したケトーメロは、父王のため盛大な国葬を執り行う旨を宰相に告げると、競歩の速さで部屋から退散していった。
バナナの樹が生い茂る中庭を横切り、絹のカーテンに閉ざされた客室の入口へ立つ。
布を手の甲でわずかに押し上げ、なるべく中の様子を眺めないよう気をつけながら囁いた。

ケトーメロ「武琉殿、ケトーメロですが入ってもよろしいですかな」

返事はない。
その代わりに、静寂を破り殺気の突風がゴウッと彼の身体を吹き抜けた。
狡猾な蛇の心臓はそれだけでも縮み上がり、危うくその場で嘔吐してしまうところだった。
脂汗をダラダラ垂らしつつも姿勢を整え、客人の返事を待つ。
すると。
旱魃でひび割れた大地のような声が、カーテンの隙間から細々と聞こえてきた。

武琉「殺気の応酬が展開されぬ。もしや貴方は正真正銘のケトーメロ殿下であったか。この老骨、誰の恨みを買ったか知らぬが命を狙われておりますゆえ、多少の警戒は許してくだされ」

ケトーメロ「いえ、別によろしいのです。貴殿はサンバドル村1位のギルド……Lunaticを率いる男。覇気も健在のようで安心致しました。では、お約束の物をお渡ししましょう」

恐る恐る客室に足を踏み入れると、赤いベレー帽を被った老人が寝台に座っていた。
小柄な全身より発せられる覇気に、ピリピリと肌が痺れるような痛みを感じる。
台風と戦う小鳥の気持ちが今、理解できた。

武琉「そう恐れずにもっと近寄んなさい。わしは殿下に拝謁できて喜んでいるのですから」

彼は震える手で腰に括り付けている巾着をまさぐり、一本の試験管を取り出した。
中身は何の変哲もない赤銅色の液体なのだが、他者を威圧する謎の闘気を放っている。
血が騒ぐという言葉がまさに相応しい。
武琉は目を細めて頷いた。

武琉「うむ、確かに受け取りましたぞ。ハーゲル王国の莫大な富は、遂に人間を魔物に変える禁断の術さえも簡便化したのですなぁ」

ケトーメロ「人間を魔物に変える……? それはどういうことでしょうか? ご説明を願いたいところですが」

武琉「説明したところで、小物のお前には到底分からぬことよ。……現在、レイギャン王の暗殺を知っているのはお前のみ。後始末もしっかりこなさねば、Lunatic全体に被害が及ぶ」

ケトーメロ「私を殺す気か!?」

武琉の雰囲気がガラリと変わった。
パイプに溜まっていた灰を落とすと、吊り下げられているようにふわりと浮く。
髪の毛が逆立ち、風もないのに武琉のマントが激しくはためいている。
ケトーメロは絶叫しながら両手を滅茶苦茶に振り回して、入口へ駆け出した。
勿論ここで逃してはギルドの名折れ。
壁に映る老人の影が霧状に分散して、逃げ惑う小鬼に襲いかかった。

ケトーメロ「ぬわあああああ!」

ケトーメロの鼻から、血と脳漿の混ざった物がスプレーの如く噴射された。
足を滑らせ大理石の床に顔を打ちつける。
動きを止めた全裸の小鬼を見下ろし、武琉は無表情で合掌した。
いくら狡猾といえど、所詮は蛇に過ぎぬ。
獰猛な鷲と協力しようとしたとしても、結局啄ばまれるのがオチなのだ。
229菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/26(火)14:36:08 ID:eC2()
武琉の行動を良しとするか否かでLunaticの運命は決まる
230名無しさん@おーぷん :2016/04/26(火)23:31:55 ID:hVE
>>227
誤 ガルダ
正 ガルガ

こいつら名前似すぎだろ
ちょっとイジルわ(後ろに性をつけたりする)
231菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/26(火)23:38:36 ID:hVE
ハルシャ=ナーマも結局人間VS魔族の戦争なので、半分くらい退場させる予定
こっからが正念場なんだよな、まさにここからが
232名無しさん@おーぷん :2016/04/27(水)00:13:48 ID:00n
(私のキャラは生き残るかな)
233菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/27(水)00:49:22 ID:Cx6()
>>232
まず誰だか分からない;^_^A
234名無しさん@おーぷん :2016/04/27(水)00:53:46 ID:UFE
半分とは結構思い切った割合だな
235菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/27(水)00:59:43 ID:Cx6()
>>234
死ぬのもあれば、死なずに物語から退場する者もいる
合わせて半分ってところですかね
236菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/28(木)10:31:30 ID:pVQ()
ケトーメロ・D・ハーゲルの変死から三日後。
次男のキラメロがハーゲル王国の皇帝、すなわちマハーラージャとして即位した。
大抵の皇帝は即位式のみで自室へ帰ってしまうのだが、それだけでは興が少ない。
是非とも皇帝となったキラメロ・D・ハーゲルという男を、いち早く国民に知らしめたい。
彼は宰相のパパロを呼び寄せた。

キラメロ「おい、パパロ」

パパロ「どうかなされましたか、我らが大王」

キラメロ「お前はハーゲル王国の宰相だろう。なら民がどこにどれくらい居住しているか、ある程度は調べているな?」

パパロ「戸籍の調査は済んでおりますが……」

キラメロ「ハーゲル王国の民草を、このボルドノープルに召喚しろ。まだ地方には、レイギャン王の治世と絶賛勘違い中の者も少なからずいるはずだ。国民の意識を刷新せねばならん」

パパロ「数千万人を一度に集めては、暴動が起こるのではないかしらん」

キラメロ「案ずるな、俺には王家伝来のアデランスとアートネイチャーがある。いざとなれば、ガルガに頼んで聖剣クチュルクも動員する。どこにも問題はない」

こうして全国の村に召集令がかかった。
農民からすれば、王の二人や三人変わったところで自分らの生活が楽になるわけでなし。
その上、足腰の悪い老人を背負って、泣き喚く子供を宥めて遠い道のりを歩かねばならない。
召集令など、傍迷惑も甚だしいところなのだ。
だが拒むわけにもゆかず。
数千万人の農民やら町人やら軍人やらが、ボルドノープルの王宮前にひしめくこととなった。

シュン「おい! 皇帝とやらはまだ出てこねぇのか!? テメェら知ってるか? 俺様はよォ〜このシュン・ブラック様はよォ〜! 病床の妹にチューリップを買ってやったんだがよォ〜! この人混みのせいで茎が折れちまったよォ〜!」

調子の外れたハゲ語からして、ひたすら野次を飛ばしている男は異邦人だろう。
激しく身悶えするので、周りの農民から頭を叩かれたり肘鉄を喰らったりしている。
太陽が真上まで登った時、宰相のパパロが展望台に立ち、小さな喇叭を吹き鳴らした。
正装のキラメロが続いて現れる。

パパロ「偉大なるマハーラージャのご登場だ。皆の者、しかと目に焼き付けよ」

中央にトパーズが埋め込まれた橙色のターバンをかぶり、綿入りの青い王衣を着ている。
右手に魔槍アデランス、左手に生命の杖アート・ネイチャーを持って佇むその姿は全く威厳に満ち溢れ、民に新たな王の誕生を悟らせた。
それまで野次を飛ばしていた無頼漢も鳴りを潜め、キラメロの言葉を待ちわびている様子。
ターバンの位置を整えると、第43代マハーラージャはゆっくり口を開いた。

キラメロ「俺は、理解している」

キラメロ「国の基盤が農民であることを、十二分に理解している」

キラメロ「親父や兄貴とは違って、贅沢もしない」

キラメロ「民よ、俺についてこい。年貢も減らしてやる。インフラ整備も進めてやる」

キラメロ「だから、黙ってこのキラメロについてこい」
237名無しさん@おーぷん :2016/04/29(金)01:22:57 ID:epY
ハゲ語…?
238菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/04/29(金)01:30:26 ID:xsY()
>>237
トハラのエピソードでちょびっとだけ触れた
全世界の共通語
英語みたいなものと思っておけばいい
239菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/01(日)00:44:52 ID:Jhc
彼の演説はそれほど大したものでなかった。
税を取らないだの、徴兵制度を廃止するだの、実現不可能な理想論を並べ立てているだけだからだ。
それでも民衆は神威に打たれたかの如く動きを止め、じいっと新しい大王を見つめている。
彼らはキラメロが持っている神器の価値を、赤ん坊の頃から言い聞かされて育ってきた。
魔槍アデ・ランスをひとたび突けば千の命が失われ、生命の杖アート・ネイチャーをひとたび振れば万の命が芽生える。
その二つを自由に動かせるマハーラージャは、民衆にとって神に等しい存在だったのだ。

武琉「発言内容が滅茶苦茶じゃな。王の座を守るため、必死に上辺だけ取り繕っておる」

展望台の奥に控えていた武琉は、失望のこもった目でキラメロを眺めた。
殺した長男よりも幾分骨のありそうな男だったが、それはどうやら間違いだったらしい。
広大な領土を得ることは、同時に国民の命を預かるという重大な責務が伴う。
玉座ばかり狙っていた彼に、果たして『その先』が見えているのだろうか。

武琉「せいぜい世間の荒波に揉まれるとよかろう。転覆せずにすむかは保証しないがな」

不敵に微笑むと、彼は腕組みをして立っているナンダ将軍に出立の旨を告げた。
キラメロ殿下の即位式を見届けた以上、もうこの国に留まる必要はない。
黒獅子のような大男は無言で頷くと、大王の傍にかしづいている小姓を呼び寄せた。
白皙の美少年で、長い睫毛が陶磁器の如く滑らかな頬に影を落としている。
焦げ茶色のくせっ毛を腰まで伸ばし、身体の線も男と思えないほど細い。

ナンダ「この者はリロス・デロルト。大王からの信頼厚き小姓です。これを案内につけさせましょう」

武琉「どこまで案内させるつもりかね?」

ナンダ「そうですな……北の国境辺りまでにしましょう。リロスは近道を知っています」

武琉「折角のご配慮だが、あえて断らせてもらう。わしは他に行かねばならぬ場所があるのでな」

ナンダ「あっお待ちを! リロス、武琉殿をお止めしろ。お前の能力があれば容易なはずだ」

リロスの周囲に旋風が巻き起こり、将軍の巨躯が風船のように浮き上がる。
しかし、風に乗って飛翔した武琉を止めることは誰にもできなかった。
放たれる闘気に気圧されたのもあるだろうが、一番の原因は彼の身体が軽すぎたことにある。
幸か不幸か、彼の体重が40kg程度だったために美しき小姓の能力が不発に終わったのだ。
ナンダ将軍は悔しそうに展望台の床を殴りつけた。

武琉「……キラメロめ、もう始末するための準備を施していたか」

武琉「わしが将来、この国を滅ぼすと踏んだからじゃろう」

ハーゲル王国の軍事力はレイギャン王の治世から、日に日に衰退の一途を辿っている。
国土を広げて豊かさを手に入れた反面、兵の調練を疎かにしてしまったのだ。
証拠として、Lunaticの情報を聞いた時、キラメロの瞳に一瞬ながら恐怖の色が宿っていた。
当時はからかいの気持ちだけだったが、もう一度考えてみれば別の感情が首をもたげてくる。

武琉「大国の征服……やってみるのも悪くないかの」
240菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/01(日)00:50:06 ID:Jhc
武琉の心に点いた野望の火種
協力者が息を吹けば一気に燃え上がる燎原の火となる
誰がその焚き付け役になるんでしょうねー
241名無しさん@おーぷん :2016/05/01(日)08:39:35 ID:hET
三男坊はまだか
242菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/01(日)21:22:34 ID:adg
>>241
次男坊VS三男坊の構図が現れる……のか?
243名無しさん@おーぷん :2016/05/01(日)23:01:12 ID:QEN
すごく面白い話なのに初期にふざけた設定採用しちゃったのがなんか悔やまれるなw
シリアスな場面でもアートネイチャーとかアデランスって単語が出てくるとギャグにしか見えんw
244菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/02(月)20:09:57 ID:uTm()
>>243
ある意味、中和剤だねw
245菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/03(火)00:48:25 ID:jbD
その頃、ガルガはハーゲル家の末弟・クナラズへ向けて伝書を記していた。
新しいマハーラージャが誕生した以上、その旨を親族に教えるのは臣下の務め。
そうでなくとも、彼がクナラズに情報を提供する約束は二人の間で取り決めてある。
表向きはキラメロの政治を補佐しながら、同時進行でクナラズのためにお膳立てを整えるのだ。
手紙を書き終えたガルガは、バナナの葉で作った腰蓑を巻き付けた。
レイギャン王が死んだ今、強制全裸なぞ暴挙と言える政策はもはや適用されない。

ガルガ「クチュルク! 仕事だ、出てこい!」

部屋の隅に立てかけてあった剣が、冷水をかけられたかのように勢いよく飛び起きた。
重層的な刃鳴りをけたたましく響かせながら、その剣は空中で一羽の鳥へと姿を変える。
夕焼けの如く鮮やかな橙色の鳥は、衝撃波で部屋の家具を吹き飛ばすと、そのまま一周してガルガの腕に止まった。
彼をよく知らない者が見れば、室内を破壊する害鳥と思われるかもしれない。
しかし、このハヤブサに似ている害鳥こそが数百年前に魔族長を討伐した聖剣クチュルクなのである。
魔族長は討たれた後また復活したが、従来に比べてまるで『半身を失った』かのように弱体化したのだという。
テングリカガンが元の力を取り戻す前に、一刻も早くハーゲル王国を強大にせねばならぬ。

ガルガ「キラメロ陛下では残念だが……国を立て直せない。証拠に肝心の就任演説がまるでなっていないのだ」

ケトーメロ、キラメロ両者はあまりにも我が強すぎる。
心に野望を燃やすのは、誰しも抱く支配欲ということでよろしい。
だがそれも煽る程度を知らなければ、自身を焼き焦がす災禍となりかねない。
クナラズは前者より間抜けな感じはあるものの、誠実で素直な性格だ。
だからこそ、佞臣に利用されてしまう可能性も拭えないが、そこは自分らが支えればいい。
少なくとも魔族長以上の奸雄を生み出すよりかは遥かにマシである。
彼は英雄の鳥足に木の皮をくくりつけた。

ガルガ「この書簡をクナラズ殿下に届けてくれんか。多分トハラかその近くにいるだろうから」

眠たげに鳴いた彼は、それでも機敏な動きでガルガの腕を離れた。
ベランダを通り抜けて青空に繰り出すと、雲を突き抜けて太陽めがけてぐんぐん飛翔していく。
途中、禍々しい気を放つ黒龍とすれ違ったが、彼は気にすることなく空の海を泳いでいった。
普通の剣が人を相棒とするならば、聖剣クチュルクにとっての相棒は天空だ。
気流に乗った時から、彼の双眸は水平線の向こう側を見据えている。
もくもくと塔のように聳える入道雲を横目に、クリム山のちょうど真上を通過した。
トハラにはあと数分もしない内に着くだろう。
246菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/03(火)00:55:55 ID:jbD
固有名詞のオンパレードでござるよ(*´▽`*)
247菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/04(水)21:59:14 ID:Im1
トハラ編のイメージ
http://youtu.be/AP3EfiPBuLw
248菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/05(木)23:38:47 ID:zFo
砂漠の玄関口として有名なトハラ。
その中央に位置するマドラサの鐘が、ぼーんぼーんと振り子時計よろしく昼休みの刻を告げた。
白いターバンを頭に巻いた少年や黒地の布で肌を隠している少女の群れが、濁流となって教室から流れてゆく。
自宅に帰る学生もいれば、食堂に立ち寄る学生もあり、彼らの行き先は多種多様である。
トハラ学院は独立した一個の街みたいなもので、授業の年間単位数さえ守れば、あとは何をしようが個人の勝手なのだ。

アグサ「ふわ~あ、眠かった。ウチってホント、朝に弱いなぁ……」

アグサ・シュテルツェは現役の魔法剣士による講義が終わると、欠伸をして彼女のいる12号館からほど近い食堂に向かった。
友人達は医者や聖騎士など目指す職業が異なるゆえ、一緒に食卓を囲む機会は滅多にない。
幾何学的なアラベスクの描かれた半円アーチの門をくぐり、清涼感溢れる緑色の葡萄棚を抜けて、ようやくトレイの置かれている場所に辿り着く。
パンの焼ける香ばしい匂いや肉料理を扱うブースの熱気が、奥からここまで伝わってくる。
中に入ると食器のぶつかる音に加えて、がやがやと喧噪もいっそう勢いを増した。
天井に描かれた絵画は、数百年前に発生したエグバード王国と魔族との戦争を表したものだ。
恐るべき魔神であるテングリカガンと、それを封印した聖剣のクチュルクが互いの陣営を背に睨み合っている。

アグサ「いつも思うけど、どうしてエグバード王国はあんなヤギに滅ぼされたんだろう。ウチだったら一瞬で骨の髄まで凍らせてやるのに」

トングで掴んだ白パンを大きな丸皿に乗せ、次にスパイスの効いた緑色のカレーをかけてゆく。
まるでパンがカレーの中央にどっしりと浮かぶ、塩で覆い尽くされた大陸のようだ。
トハラは隣国の影響を多く受けているので、食堂でも香辛料を用いた料理が提供される。
会計を済ませると、アグサは窓際の四人テーブルにトレイを置いた。
今思い返せば、一人用のカウンターに座った方が賢明だったかもしれない。
考えるのも忌々しい『あの男』にまた出会ってしまったのだから。
その男は以前のように豪奢な鎧ではなく、深緑色のチュニックを着ていた。

レムラス「アグサ……アグサだよね? その白と黒のまだら髪はアグサに決まってる」

アグサ「人の名前を気安く呼ぶな! ……まったく、昼休みくらい静かに食事させてよ」

レムラス「いいや、そうは参らんね。僕は君を探していたんだ。あのまま別れるのは実に勿体ない」

アグサ「お金はどうしたの? 一週間前に金がないからってウチの葡萄を盗もうとしたじゃん」

レムラス「アグサの知らないところでね、僕は資金稼ぎのためのギルドを組んでいたのさ。それで懐に余裕ができたってわけ」

茶髪の少年はトレイを向かい側に置き、頬杖をつきながらフォークでサラダをつつき始めた。
249名無しさん@おーぷん :2016/05/06(金)08:29:01 ID:nrj
アグサきた!
250菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/06(金)10:25:29 ID:pmj()
レムラスのCVは森久保希望
251名無しさん@おーぷん :2016/05/06(金)18:49:14 ID:DLw
主人公3人っていったら
とあるの上条さん達的なイメージ?
252菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/06(金)23:56:38 ID:pmj()
>>251
多分そんな感じ
253菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/07(土)00:00:46 ID:DRZ()
生きる場所は違えど、いずれ一つに結びつく
254菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/07(土)00:39:52 ID:ekU
つーか、まだ物語の半分もいっていないという絶望的な情報が入りましたm(__)m
255菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/11(水)00:50:33 ID:TCZ()
アグサかわいいよなぁ……(錯乱)
書かねば
256名無しさん@おーぷん :2016/05/11(水)19:35:18 ID:OR0
なかなか更新こないねぇ……
気長に待ってます
257名無しさん@おーぷん :2016/05/11(水)20:46:12 ID:Wcj
学業に支障が無いように…
258菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/11(水)22:12:19 ID:TCZ()
レムラス「それにしても、僕らの大将はいつになったら動くんだろうね」

アグサ「ええと……クナラズのことでしょ? ウチに聞かれても知らないよ」

レムラス「催促しているんだけど、ずーっと本の虫状態で。慎重なのは良いことだが、あれは流石に石橋を叩き過ぎってもんさ」

アグサ「だよね……」

ハーゲル王国の皇子と名乗る謎の巨漢に出会って、そろそろ一週間が経つ。
彼はこれから訪ねる場所の研究と称して、地下の書庫に籠りっきりのままだ。
怪しいハゲの話によれば、最終的な目的地は大陸西端のエグバード王国があった荒地で、そこにて反乱兵を集めるのだという。
単位を取るための試験に間に合ったので、密かに焦っていたアグサとしては嬉しいが、一方でいつになったら出発するのかと歯痒くも思う。
あれだけ豪語したのだから、そろそろ発言に見合った行動を起こして欲しい。
アグサは緑色のカレーに手で細かく千切ったパンを、水で濯ぐようにさっと浸した。
トマトの皮を奥歯に詰まらせ悪戦苦闘するレムラスへ、今度は彼女が静かに問いかける。

アグサ「本当にあの怪しいハゲと、西へ行くつもりなの?」

これは彼女の率直な疑問である。
アグサも忠誠こそ誓ったけれど、あれは半ば勢いに押されて成立したようなもの。
長いこと動きが無ければ、やはり狂人の戯言であったかと片付けたくもなる。
加えて、エグバード王国の故地へ行くためには、灼熱の砂漠を越えねばならない。
ああいう骨まで焼け焦げそうな砂の海は、本来なら暑さに耐性のある隊商や、魔族を狩りにゆくクレイジーなギルドが通る危険地帯だ。
一般人である自分がいきなり飛び込んだら、数秒とかからずに倒れてしまうだろう。

アグサ「どうなの? ウチは夕方ごろ断りに行こうと思うけど。レムラスも、あんな赤パン野郎に無理して付いてく必要なんてないんだよ」

若き茶髪の剣士は黙然と座っていたが、急に席を立ってアグサのすぐ隣に腰かけた。
親しい友人のように肩に手を回し、ぐっと自分の方へ引き寄せる。
そして、これまでの様子とは異なった、冷え冷えとした声で耳に囁くのだ。

レムラス「なぁ……あと三日だけ待ってみよう? 何しろ彼は生まれ故郷に反旗を翻すんだ。並大抵の精神でやり遂げられることではない。家族に刃を向ける葛藤を、部下である僕らが汲まずに何が団結だい? 笑っちゃうよな……」

冷静に考えれば滅茶苦茶な理論なのだが、アグサはただ首を縦に振ることしかできなかった。
259菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/11(水)22:12:57 ID:TCZ()
最近忙しくなってきたけど頑張ります
260菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/12(木)00:18:15 ID:ujJ
こいつは極東編のイメージだな
もうまんまって感じ
御長谷と北条は同じ世界から来たと思われ
スマホ持ってるしね
http://youtu.be/HWgveWU3vhY
261名無しさん@おーぷん :2016/05/12(木)13:16:56 ID:xfP
テスト
262名無しさん@おーぷん :2016/05/12(木)13:17:15 ID:xfP
あれ、書ける?
263名無しさん@おーぷん :2016/05/12(木)13:18:02 ID:xfP
なんだ、巻き添え食ってアク禁になってたのかw
俺、荒らし行為やった事実なかったんで、変だとは思ったんだよな
264名無しさん@おーぷん :2016/05/14(土)18:43:06 ID:FLw
>>263
なんだこいつ
265菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/16(月)01:16:15 ID:b2G
静寂の闇に、小さな炎がぽつんと浮かびあがる。
人魂にも似たそれはゆらゆら揺れて飛び回り、奥まで立ち並ぶ本棚を照らし出した。
黴くさい匂いが霧の如く辺りを漂い、紙面をめくる音も時折聞こえる。
なにを隠そう、ここはトハラ学院の地下深く広がっている研究書庫なのだ。
普段利用しているのは魔導士を志す学生や、指導する立場の教授であるが、身分証を提示すれば一般人でも中に入ることができる。
蔵書数はこの大陸に存在するどの図書館よりも、圧倒的に多いと言えるだろう。
古代から近代まで、原本や復刻版も合わせて約500万冊以上の本が収められているのだから。
昼食を済ませたレムラスは、嫌がるアグサを無理やり引き連れて地下に続く梯子を降りていった。
もちろん、ハーゲル王国の皇子と名乗る男に会うためである。
そして先ほど、窓口で渡された蝋燭に火を点けたところなのだった。

レムラス「壁が土だからなのかな、地上と違って意外とひんやりしているね」

アグサ「まるで天然の冷蔵庫ね……。寒いとまではいかないけど、油断したら鳥肌が立っちゃう感じ?」

レムラス「油断せずとも、僕の二の腕は鳥肌だらけだ。まるで新鮮な鶏の太ももみたいにねぇ」

アグサ「だから何なのよ! 鳥肌談義はよろしいから早く歩いて! ああ、何だかアンタと話してたら寒くなってきた」

震えるアグサを置いて、レムラスは何気なく近くの本棚に寄った。
会う前に面白そうな本を物色しておこうと思ったのだ。
棚の左端から、所狭しと詰められている本の背表紙を指でなぞってゆく。
狂戦士族の歴史、遊牧民のおとぎ話、ハーゲル王国の法律など様々な本がある。
レムラスは小さな頃から隙あれば読書をしていたので、大抵の本なら読まずとも題名だけで内容が手に取るように分かる。
その時、読書家である彼の指が止まった。
表紙は黄色く変色し、中のページも腐食がだいぶ進んでいる。
近代ではなく、古代に書かれた貴重な文献であろうか。

レムラス「アグサ……こっちに来てくれよ。見た事もない本があるぜ、ほら」

アグサ「なにこれ、『タイガー・ランペルージのすべて』? タイガーって……誰だっけ?」

レムラス「僕達がマニ車で魔族に襲われた時、助けてくれた虎男がいたろ? あの双剣を背負った変人だよ」

アグサ「でも、それがどうしたの?」
266菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/16(月)01:18:16 ID:b2G
変な箇所はあとで追加するなりなんなりで直します
267名無しさん@おーぷん :2016/05/16(月)14:00:32 ID:TBs
面白くなってきたな
更新楽しみにしてマッスル
268菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/19(木)00:35:58 ID:UYa
彼はアグサに蝋燭を渡し、紙面を照らすよう指示した。
ミミズがのたくっているような、解読するのも難しい文字に目を落とす。
著者不明、記された年や場所も詳細不明。
トハラ学院の研究書庫には、こういった奇書がしばしば落ちている。
普通に読書を嗜むのも良いが、奇書探索も乙な趣味。

レムラス「どれどれ……何が書いてあるのかな」

ほとんどが古代文字で埋め尽くされているので、内容は切れ切れにしか掴めない。
ただはっきりしているのは、タイガーが古代の人間であるということ。
耳元で不思議そうに囁く少女の声がする。

アグサ「ねぇ……これって何年前の書物なの? 表紙とかボロボロだし、すっごく古いのは確かだよね」

レムラス「多分、100年か200年くらいだろう。ひょっとしたら、もっと前かもしれない」

レムラスは虎男の存在が、急に恐ろしく思えてきた。
もしここに書かれていることが真実なら、今いるタイガーは何者なのか。
数百年も生きる種族といえば、エルフ辺りしか思い浮かばない。
それに、獣人族は短命の種族であったはずである。
彼の中に生まれた疑惑の雲は、とどまる所を知らずどんどん膨らんでいった。
その後も読み進めて、解読が可能な部分から情報を拾い上げる。
アグサは蝋燭を持つ腕が疲れたらしく、うんざりした視線を彼に投げかけている。
再び、レムラスの動きが止まった。

アグサ「また、何か見つけた?」

レムラス「ちょいとこれを見てくれ。一行だけでいいから」

彼は問題の場所をなぞりながら、アグサに分かるよう説明した。

レムラス「タイガー・ランペルージは偽名。彼は許されざる裏切り者、と書いてある」

本名が記されているであろう箇所は、墨で黒く塗り潰されていた。
後世の人物がタイガーの素性を隠すため、意図的に行ったものと思われる。
よく見ると、細かい血痕のような跡までこびりついていた。
一体、この時代に何があったのであろうか。
二人はトハラの闇を垣間見た気がした。
269名無しさん@おーぷん :2016/05/19(木)00:52:20 ID:s4u
タイガーとかいたなあ…
あのクソコテまだいるんかねオープンに
270菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/19(木)01:03:51 ID:UYa
>>269
いるね~
しぶとくいるね
まぁこのタイガーはアレとは別物と考えてくれ
実際タイガーは偽名だしね
271名無しさん@おーぷん :2016/05/19(木)01:19:29 ID:s4u
>>270
まだいたんかアイツw
272名無しさん@おーぷん :2016/05/19(木)07:06:30 ID:95g
許されざる裏切り者でワロタ
273名無しさん@おーぷん :2016/05/26(木)22:48:48 ID:5Zh
楽しみ
274菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/27(金)00:37:45 ID:adj
一人の巨漢が机にかじりついている。
人によっては肌寒くも感じる地下書庫で、ダラダラと滝のごとく全身から汗を流して。
文献の内容を黄ばんだ羊皮紙に孜々として書き写すその姿は、まるで暴れる猛獣を必死に組み伏せる格闘家のようだ。
新しいページを開くたびに頭が動くせいか、額に浮かんだ玉みたいな丸い汗が宙に飛ぶ。
息を大きく吐いて、ぼんやりとした暖かい光を放つ蝋燭にチラと視線をやる。
芯の近くまで溶けたそれは、膨大な作業を進めていた彼を焦らせるのに十分であった。

クナラズ「もうこんなに溶けているのか……」

蝋が無くなれば、また新しいのを取り替えるため地上まで梯子を昇らねばならぬ。
その間にもし誰かが、今自分の写しているモール族に関する文献を持ち去ってしまったら。
いつ本が戻るかなど、借りた本人でないクナラズには知りようもないのだ。
小便の近くなった子供さながら彼は歯を食いしばり、ますます筆写の速度を上げた。

クナラズ「モール族は光の当たらぬ地下を生活圏とする種族。鎌の如く内側に湾曲した爪で硬い地盤を割って泳ぐ」

クナラズ「彼らが魔族による襲撃を受けたのは、約十年前。それからずっと地上での生活を余儀なくされている……なるほど」

作業に徹する彼の背後に、暗闇よりも一層濃い影がゆらりと忍び寄る。
インクの壺に筆を漬けたところで、闖入者はいきなり両手で目隠しをしてきた。
予想外に力が強く、いくらもがいても離れるどころか、ますます締め付けてくる。

レムラス「はいはい、勉強はそこまで。暗い所で書物を読めば目が悪くなるだけですよ、我らが王子様」

アグサ「そうね。長時間の読書は目を疲れさせる。少しは休んだ方がいいんじゃない?」

クナラズ「ああ……お前らか」
275菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/27(金)00:41:40 ID:adj
実は次作(第二部)の主人公を早くも描いてもらった
まだ主要人物、二人しか考えてないのにねw
この娘が主人公の予定
公開できる情報はここまで
前編が終わったら、また新しい情報流出させます




276名無しさん@おーぷん :2016/05/27(金)20:05:56 ID:xCz
>>275
おお……
可愛い
女の子……誰だろ楽しみ
277菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/29(日)01:17:24 ID:mth
ちなハルシャ・グラヴィティス
最近VIPにいいスレが立った(*'ω'*)
そのおかげです(*^▽^*)



278菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/29(日)21:49:44 ID:TTn
キャラ絵が集まりつつある
そして進まない本編(゚ ω 。)
279名無しさん@おーぷん :2016/05/30(月)20:50:07 ID:GYa
まあ気長に待ってるよ
280菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/05/30(月)21:28:12 ID:e1H
図書館を出て、ポプラの並木道に沿ってゆるゆると散歩している間、レムラスの中で二つの選択肢が渦巻いていた。
それは虎戦士、タイガー・ランペルージの正体についてクナラズに言うべきか、言わざるべきかという問題である。
クナラズはタイガーの優れた剣技と、空間を切り出す謎の能力に惚れ込んでいた。
ランニングにステテコパンツといった珍妙な格好をしていても、実力は本物だ。
どうにかして、あの虎男を自軍に加えたい。
彼の熱意だけは、じゅうぶん理解できる。

レムラス「だけど、彼は文献によれば許されざる裏切り者だ。よくない風聞がある人を、栄光あるクナラズ軍に加えて良いのかな」

アグサ「なに言ってんの。王都を奪う時点で、ウチらは立派な反逆者じゃん。正当な理由をでっちあげてる、仮面に隠れた反逆者」

葛藤するレムラスの呟きを聞いたアグサは、呆れたような調子でぼやく。
実際のところ、彼女は正しい。
普通ならクナラズは、長兄のケトーメロを補佐する役目にあったのだ。
それを自分が掠め取ろうというのだから、朝敵と罵られても仕方ない。
タイガー・ランペルージの正体を暴露されたところで、評判にさほど影響は出ないのである。

アグサ「それに、みんなタイガーを知らないでしょ。トハラ生まれトハラ育ちのウチでさえ、バイバルスの名前を出されるまで誰だか分からなかったもん」

レムラス「あんなに強いのに、知名度が低いの? そんな馬鹿なことってあるかい」

ここで先を歩く巨漢が、話に割り込んできた。
彼はつるりと剃り上げた頭を撫でながら、遠くを見るような目つきで言う。

クナラズ「逆に強者だからこそ、バイバルスはタイガーの存在を隠していたのではないか? 空間を切り出す能力なんて、どこのギルドも欲しがるはずだ。トハラの切り札を易々と引き抜かれるわけにはいかないものな」

レムラス「つまり幻のno.5ってところか……。バイバルスも、味な真似をするね〜」

アグサ「トハラの切り札なのに、平然とマニ車の辺りをうろついてたなんてどうかしてるよ」

並木道が終わりにさしかかったところで、クナラズが天を仰いだ。
雲間より恐ろしい速度でこちらに接近する、小さな影が見える。
目を凝らしてみれば、それは一羽のハヤブサであった。

クナラズ「王都ボルドノープルの方で、なにやら動きがあったみたいだな」
281名無しさん@おーぷん :2016/06/05(日)15:32:58 ID:bly
まだかな…
282名無しさん@おーぷん :2016/06/11(土)23:05:38 ID:awj
wifiにすると書き込めなくなる謎現象
283菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/06/11(土)23:07:13 ID:awj
そろそろ一年かV(^_^)V
書き溜めようと思ったけど、無理だった
完全に怠慢です、すみません
284菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/06/11(土)23:13:54 ID:awj
ハーゲル王家の次男が皇帝の座に就いた、という速報はすぐに大陸全土へ広まった。
市井の井戸端会議から始まり、瓦版、わらべ歌、挙句の果てにはキラメロの活躍を描く演劇とまでなって瞬く間に波及した。
しかし。
全ての国民が今回の政権交代に関心を抱いていたわけでない。
逆に、大半の民草はハーゲル王国の主君が誰になろうとも、知ったこっちゃなかったのだ。
ただ、目先の生活が楽になればよい。
税負担が少しでも軽くなればよい。
徴兵制度がなくなればよい。
これら庶民の願いを叶える素晴らしい君主なら、誰が来ようと大歓迎だった。

ミリカ「ボルドノープルで新しい皇帝の即位式が行われたそうですって」

タイガー「ふむふむ……」

トハラの西に渺茫と広がる砂漠。
その中央にポツンと寂しく建つ、レンガ積みのキャラバンサライ。
一階に位置する酒屋で、タイガー・ランペルージは暫しの休息をとっていた。
薄汚れたジョッキに血の如く赤いウォッカを注ぎ、羊肉の燻製を肴にして一気に呷る。
その様子を眺めるのは、絹製のチャドルで顔以外を隠したうら若き少女だ。
彼女の名はミリカ。
この隊商宿をずっと一人で切り盛りしてきた、言うまでもなく敏腕の若女将である。
発育はまだ遅れているが、本人談によれば、魔物の一匹や二匹なら軽く退治できるという。
宿泊客の虎男は、そんなミリカに微かな不安と沢山の慈愛を持って接するのだった。

タイガー「このタイガー、ハゲの珍事に興味はない。あとどれくらいでエグバードの故地に到着するか、それだけが気になる」

ミリカ「お客さんたら、大層の物好きですね! エグバード王国のあった場所は三日ほど砂漠を行けば着きますよ。でも、シロアリさんに見つかると殺されちゃいますけど……」

タイガー「ふむふむ、ご心配ありがたいが、タイガーはデビルタームを殲滅する身。それなりの対策など、とうにできている」

その時、彼の返事を盛大な拍手が遮った。
285名無しさん@おーぷん :2016/06/15(水)02:06:39 ID:PzS
久しぶりに見に来た
286菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/06/17(金)17:58:23 ID:0iy
男「いやはや、大したもんだよアンタの占いは! まるで当っちまっているぜッ!」

カウンター席の端に、二人の男が座っている。
向かって右側は屈強な土木作業員、左には頭に白いターバンを巻いた面長の男が気怠げに頬杖をついて酒を飲んでいる。
快哉を叫んだのは、恐らく右の男だろう。
まだ興奮が冷めておらず、しきりに立ったり座ったりを繰り返している。

男「こんなボロくさい木賃宿にも、アンタみてぇな大物が泊まるんだなァ! 故郷を当てちまうなんて、千里眼でも持ってやがんのかい!?」

ミリカ「お客さん! ボロくさい木賃宿って何なんですか。老舗旅館と言いなさい!」

男「すまねぇすまねぇ! もう出て行くから、食事代はそこの虎戦士さんにツケといてくれ!」

ミリカ「えー! ちょっと誰かー! あの喰い逃げ犯を捕まえてー!」

タイガー「ふむふむ……」

彼にとって占いなど女子供が楽しむ軟弱な遊びに過ぎぬのだが、どうやら面長の男、ただ運勢を占うだけでなく、客の出身地をピタリと言い当てるらしい。

タイガー「どれ、このタイガーが一丁試してやろう。当たれば良し、外れたならイチャモンつけて小銭を数枚せしめりゃいいのだァ」

ほろ酔い気分の虎男はグラスを置くと、千鳥足で占い師に近寄った。
隣に腰を下ろし、新しい肴を注文する。
大皿いっぱいに盛られたピラフや揚げたばかりの鶏肉が、ほかほかと湯気を立てて並ぶ。
油したたる唐揚げを口へ運びながら、タイガーはさっきの割れるような拍手について質問した。

タイガー「ふむふむ、私はタイガー・ランペルージと申す者。少し貴殿と面談したい。まず、尊名を聞かせ願おう」

ゲイリー「ゲイリー。トハラでバーを営んでる。人は俺を占い師と呼ぶが、別にそんなんじゃねぇ。クソッタレな天賦の才があるだけだ」

タイガー「ふむふむ……凡人からすれば、実に贅沢な悩みだな。そうだ、ここは一つ、タイガーの出身地を当ててくれ」

ゲイリー「アンタ、分かってるか? 他人の訛りを聞き分けるたァ、相当に高度な技術が必要なんだぜ。加えて言語に関する膨大な知識も、当然求められる。並みの人間にゃ到底無理だ」

タイガー「だが、貴殿にはできるのだろう?」

ゲイリー「もちろんさ」

タイガー「なら、タイガーの故郷はどこだ。実のところ、タイガーにも分からないのだ。物心ついた時には、トハラで生活していた」

ゲイリー「なら、そこが出身地ってことでいいんじゃね? 俺に聞くまでもねぇな」
287名無しさん@おーぷん :2016/06/18(土)14:56:11 ID:USr
人物紹介みたら思いっきり某ケンミンショーのあの人じゃねえか
288菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/06/20(月)13:39:24 ID:aZb
タイガーはムッとして口を一文字に強く結んだ。
初対面の人間に対して、ここまで横柄な態度を取る占い師など見たことがない。
自分の容姿が珍妙であろうと、トハラを魔の手から守る一介の戦士である。
馬鹿にされる理由がどこにあろうか、いやない。ないはずなのだ。
気を害した様子のタイガーに、占い師は一言つけ加えた。

ゲイリー「そうだな……そこまで正体が知りたいのであれば教えてやる」

ゲイリー「西の果てにダムドラという魔物が暴れている。お前の種族と深い因縁を持つクソ野郎だ。奴を討った時、アンタの運命は大きく変わるだろう」

ダムドラ、という四文字にタイガーの血は不思議と騒いだ。
何かとても大切な物を、遥か遠くに置き去りにしてしまったかのような。
こなすべき仕事を未だ放ったままにしているような、そんな焦燥感が鎌首をもたげたのである。
タイガーは食事代の銅貨をカウンターに置くと、足早に酒場を立ち去った。
こんなところで、酒など悠長に飲んでいる場合ではなかった。
ダムドラとやらの首根っこを早くひっ捕まえて、ゲイリーの言う『因縁』を突き止めねばならぬ。
他にもデビルタームの掃討を始め、沢山の依頼が自分の所属するギルド・バイバルスに届いている。
休むのは全てを終えてからだ。

ミリカ「ふぅ……」

ちろちろと燃える篝火が、熱を含んだ風に揺れる。
タイガーが去った後、ミリカはウィスキーを飲む占い師に耳打ちした。

ミリカ「やっぱり、虎男さんが何者かあなたには分かってたんですよね?」

ゲイリー「ああ、だが公の場で発表するものでもなかったよ」

ミリカ「どいうことなんですか?」

ゲイリー「世の中には、首を突っ込んでいい領域と悪い領域がある。奴は後者の方さ」

ゲイリー「狂戦士族って知ってるかい? 南西の孤島で文明と隔絶した生活を送る野蛮極まる戦闘民族さ」

ミリカ「それは勉強済みですけど……資料にある外見と全然違いますよ? まるっきり虎さんですし」

ゲイリー「それは狂戦士化した仮の姿。本当はもっと器量のよい御仁だったんだろうよ」

ここで彼は話を切ってしまった。
これ以上、面倒なことに深入りしたくなかったのだろう。

ゲイリー「あばよ、ボルドノープル出身の嬢ちゃん。料理と酒美味かったぜ。皇族なら襲われないよう気ィつけるんだな」

ミリカ「いつの間に聞き分けてたんですか! その能力本当に欲しいですよ~!」

ゲイリー「残念だが、俺が提供できるのは酒だけさ。今度俺の店に来な、極上のワインを飲ませてやるよ」

ミリカ「ま、まいど~」
289名無しさん@おーぷん :2016/06/26(日)10:14:19 ID:e6w
ボルドノープルってどこかと思ったらハゲのとこか
290名無しさん@おーぷん :2016/06/28(火)02:32:01 ID:Yps
最近更新おそいね(´・ω・`)
291菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/06/28(火)08:48:34 ID:rm4
タイガーは厩に繋がれているラクダから、丈夫そうな数頭を引っ張りだした。
手綱を近くの杭に縛りつけ、羊皮で作った袋を肩にかける。
陽光が腰に差した長刀の錵を一直線に滑り、砂利だらけの地面へこぼれてゆく。
一颯、また一颯と鞍上で素振りをして、刃音の鋭さを確かめる。
剣というものは複雑なもので、使い手との『心』が重ならなければ本領を発揮しない。
ただ獲物を斬るだけの刃と意識している内は、永遠に達人の領域へ踏み込むことは叶わぬ。
物言わぬ鋼といえ、共に戦場を駆けるかけがえのない仲間であり、自分の分身なのである。
細心の注意を払って、まるで我が子を慈しむかのように手入れすることが肝要だ。

タイガー「刀の体調、良し。銃弾の数、良し。心の準備、良し」

虎男はそう呟くと、ラクダに乗ってキャラバンサライの門をくぐった。
白い砂漠が照りつける太陽光を跳ね返し、それぞれ上と下からタイガーの肌を焼く。
日焼け対策として申し訳程度に泥を塗ってみたが、あまり功を奏していないようだ。

タイガー「ダムドラ……ダムドラ……。聞いたことがあるような、ないような。だが不思議と、懐かしい響きを感じる」

タイガー「……ミズハ」

ふと口をついて出た言葉に、タイガーは思わずたじろいだ。
ラクダを止めて先の名を反芻する。
本能の叫びに、じっと耳を傾ける。
だが、何も頭に思い浮かばない。
代わりに聞こえたのは、砂に住む魔族が自分の周りを泳ぐ乾いた音のみであった。
おそらく、数十匹はいる。
集団で獲物を取り囲み、隙を見て攻撃をしかけてくるつもりなのだろう。
確認せずとも、敵がデビルタームであることなど手に取るように分かる。
タイガーは両腰の長刀を抜くと、腰を低く屈めて臨戦態勢に入った。

タイガー「ふむふむ……。奴ら、もうここまで勢力範囲を広げておったのか」
292菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/06/28(火)09:01:16 ID:rm4
虎がラクダの背に乗る構図
滑稽だが彼らにとっては大真面目
デビルタームの進撃を止めないとトハラないしは世界がヤバい
西のエグバード王国故地ではダムドラも暴れていると聞く
視点を転じて東では隗真が魔族長と同盟して、ハゲの王国を潰そうと目論んでいる最中
後編から大きく世界は動き始める
その前に色々とヤバい事件が発生するけど
293名無しさん@おーぷん :2016/06/28(火)12:03:18 ID:She
>>290
まあ他人のキャラ使って一から練り上げてるだろうし仕方ないっちゃ仕方ない
294冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/01(金)10:42:33 ID:5fr
砂中に泳ぐ白蟻型魔族を注視しながら、タイガーはその光景に違和感を抱いた。
デビルタームは元来、ゆるい楕円を描きながら獲物へ近寄って一気に仕留めるのだが、トハラで倒した歩兵に比べると、あまりに秩序立った動きなのである。
まるで自分を囲む透明な管の中を、水流に乗って移動しているかのようだ。
どこかに優れた指揮官でもいるのだろうか。
もしそうなら、単独で戦うのは得策でない。
必殺技のフルウェポン・コンビネーションも、使用可能な回数はあと指で数えるばかり。
ここは脆そうな部分を突いて、白蟻の陣形からいち早く脱出すべきだ。

タイガー「走れッ!」

彼はラクダの腹を蹴って走り出した。
通さぬ、と言い張るかの如く目の前に躍り出た歩兵を、一刀の下に斬り伏せる。
両側から飛びかかった白蟻も、次の瞬間には手足を失った肉となり、双刀を縦横無尽に振り回す虎男の足元へ転がった。
しかし、その時であった。
地面から突き出してきた一本の素槍が、ラクダの脇腹を貫いたのは。
右の脇腹から入った槍は左へ突き抜け、さらにタイガーの左脚まで深々と食い込んでいる。
放り出されたタイガーは体勢を整えようとしたが、山ほどいる白蟻の前では無力だった。
彼らは強靭な顎で、捕らえた獲物の身体を少しづつ食いちぎっていくのだ。
痛みに耐えかね、つい切り札を叫んでしまう。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
ミズハを救いに行かなければならない。

タイガー「ウ……ウオオオオオ! フルウェポン・コンビネー……」

急に背中が軽くなった。
噛み付いていた顎の力も、消え失せた。
無論、切り札が発動したわけではない。
うつ伏せのままでいると、頭上から陽気な若者の声が降りかかってきた。

レムラス「よう大将! 砂漠で魔族と雑魚寝なんて、大胆なことするじゃない」

アグサ「ウチらが来なかったら、本当にマズかったみたいね」

クナラズ「とにかく、無事で良かった。貴殿の力は百万の精兵に相当するからな」
295名無しさん@おーぷん :2016/07/01(金)18:45:20 ID:83M
虎……
296菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/01(金)20:12:35 ID:5fr
白蟻クソつよい
数の暴力
297名無しさん@おーぷん :2016/07/06(水)14:35:31 ID:HmZ
最近更新ないね……
298菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/07(木)09:13:39 ID:cc5
待っててくれる人、本当に申し訳ない
テスト期間やらスピンオフやら諸々ありまして……
言い訳する暇あるなら書けっつ話なんだろうけどヽ(´o`;
299菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/07(木)09:14:31 ID:cc5
次やる時は募集するキャラの数を減らそうと思ふ
300名無しさん@おーぷん :2016/07/07(木)14:52:00 ID:Tv6
キャラ総数やばいことになってるもんなー
今一体何人だ?
のんびり待ってます
301菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/07(木)16:51:08 ID:cc5
現在のキャラ161人
オマサガは130人
どちらも100の大台どっちも余裕で越えてる
302名無しさん@おーぷん :2016/07/07(木)17:04:46 ID:z8G
キャラの扱いの差で抗議があったりしたが正直その量だと仕方ないよなwww
303名無しさん@おーぷん :2016/07/07(木)18:48:09 ID:14n
>>302
抗議してた奴らは100人越が全員主役扱いできる小説が書けるんだろうか?だとしたら天才だわw
そもそも多数キャラがいたらどーしたって扱いに差は出る罠
304菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/13(水)20:52:10 ID:NiE
その夜、クナラズ達はトハラで仕入れた石と薪を使って、簡易的な焚き火台を作った。
パチパチと火の粉の爆ぜる音が小気味良い。
麻の袋から肉の塊を取り出したクナラズは、小麦のパンでそれを挟み、小枝に刺して焚べた。
王宮では毎日、大きな皿にピラフやらカレーやら異国の果物やらが盛られていたものだった。
あの頃を振り返ってみれば、今の食事は比べものにならないほど貧しい。
しかし、クナラズは考える。
気心の知れた仲間と食べる小さいパンの方が、一人で食べる豪勢なご馳走よりも、ずっと価値がある物なのだと。

クナラズ「……焼けたみたいだな」

少し焦げ目のついた肉汁溢れるパンを、向かい側に座るタイガーへ渡す。
アグサとレムラスにも配ったところで、ふと、タイガーが口を開いた。

タイガー「早朝の件、本当にかたじけない。あのまま貴様達が駆けつけなければ、白蟻の餌食となるところであった。礼を言う」

クナラズ「なんの、礼を言わねばならないのはこちらだ。貴殿がキャンプの跡や足跡を残してくれたおかげで、容易にここまで辿り着くことができたのだ」

アグサがクナラズの脇腹を肘で小突いた。
三人で示し合わせた内密の話があるらしい。
クナラズは串を捨て、その禿げあがった頭を額が地面に着くまで下げた。

クナラズ「タイガー・ランペルージ殿。ハーゲル王国第42代マハーラージャの子として、貴殿に頼みがある。どうか、ハーゲル軍の総帥として我々と共に王道を歩んではくれまいか。貴殿の力があれば、いかなる軍勢も打ち破ることができるのだが」
305菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/13(水)20:52:46 ID:NiE
近くで話を聞いていたレムラスは、総帥という言葉に思わず肉を吹き出しかけた。
隣を一瞥すると、アグサも同じく目を丸くしてハーゲル王国の皇子を見つめている。
こんな虎か人かも分からぬ珍妙な男が将来、栄えある反乱軍の総大将となって、鞍上から偉そうに指示を飛ばしてくるのだ。
滑稽な光景と言わずして、他に相応しい言葉があるだろうか。

タイガー「ふむふむ……。それは実に魅力的な提案だ。数万もの兵を率いて敵軍に攻め込む時の快感は、何にも代えがたい。金銀財宝の類も沢山手に入る」

アグサ(やっぱ食いついてきた! 総大将の座は大きいよね……)

タイガー「しかし、辞退させていただく」

アグサ「えっ」

意外な返答を受けて、レムラスとアグサは絶句してしまった。
自分がバイバルスの最重要機密であるから、人前に姿を見せたくないのか?
いや、それでは観光客の多いトハラをうろついていた理由が説明つかない。

タイガー「タイガーには、救わねばならぬ者がいる。心の奥底で助けを求める死人の声が聞こえる。ミズハを永劫の苦しみから解き放つまで、貴様達と同行することはできない」

タイガー「馳走になった。では先にゆく」

彼は深々と一礼して立ち上がると、夜の砂漠へと走り去った。
後を追おうとした部下二人を、水平に伸ばした腕で引き止める。
タイガーにはタイガーの正義がある。
それを曲げてまで、自軍に参入させようとすれば、君主の器量が疑われる。

クナラズ「違う……それは建前だ」

他者をむりやり杭に繋ぎ止める度胸を、クナラズは持ち合わせていなかったのだ。
皇子はその夜、声を押し殺して泣いた。
306菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/13(水)20:53:23 ID:NiE
だが断る的展開
307名無しさん@おーぷん :2016/07/13(水)22:59:38 ID:Fjg
更新来てた
虎仲間にはならんのか
(・д ・´ )だが断る!
308菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/13(水)23:36:59 ID:rYg
タイガーはコミュ障
309名無しさん@おーぷん :2016/07/15(金)02:44:13 ID:Htl
久しぶりに見ると文章上手くなってる
310名無しさん@おーぷん :2016/07/21(木)14:42:35 ID:0rk
あああ更新はまだか……
311菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/07/24(日)23:17:20 ID:6DF
次回予告!
サンバドル村の集会所に呼び出されたハルシャ達!
そこで村長ショ・クモーウから何やらキモい宿題を提示される!
旅立つハルシャ組を見送りに来たのは、なんとHarmoniaだった!
教会に再び迫る魔の手! 燃え盛る業火! 神父の託した思いを胸にメリーシャはハーゲル王国へ向かう!
最後に笑うのは人間と魔族、一体どちらか! 
そして、城門にかけられた首の瞳に映るものとは――――――

トハラ編が片付いたらボルドノープル攻城編に参ります!
ここらで前編は終わりとなります!
後編からは、御長谷なんとかさんや老博士の過去について焦点を当てていきたい!

最近遅くてすみません
次回予告出血大サービスで勘弁してくださいm(_ _)m
312名無しさん@おーぷん :2016/07/29(金)23:14:52 ID:xCJ
マダー?
313菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/04(木)00:36:27 ID:Rj8
タイガーと別れたクナラズ達は砂漠を進むこと三日、遂に終着点と思われる寒村に辿りついた。
粘土と石灰を固めて作られた不格好な家は、経済環境があまり芳しくないことを。
至る所に宿屋の看板が立っているのは、貧しい村でも憩いの場として利用する旅人の存在を。
そして見かける村人全員が腰に剣を佩いているのは、ここが油断のできない危険地帯であることを示していた。
ラクダの歩を進めながら、後ろに続くレムラスとアグサへささやく。

クナラズ「気をつけろ。白蟻の手がここまで届いていないとも限らん。実際、トハラに斥候が潜入していたからな」

アグサ「じゃあ、素性も明かさない方がいいかも。砂漠で沢山の仲間を失った隊商と思わせておこうよ、ねっ?」

レムラス「僕は反対だね。仮にもハーゲル王国の皇子様なのに。こそこそ動くのは性に合わない」

アグサ「ちょっとあんたね……」

レムラス「それから、もうひとつ。沢山の仲間を失うなんて、未来を暗示するような発言はよしてくれ」

ぐっと歯噛みする鳥人族の娘をかばうように、クナラズはのんびり声をかけた。

クナラズ「そう無碍に突き放すな。彼女の言うとおり、皇子という身分は隠すべきだ。お前達も従者でなく、別の職を探しておけ」

ラクダから降りた皇子は身にまとっていたマントを腰に巻き付け、あくまで平民になりすまして宿の門を叩いた。
虫食い穴だらけの板戸がきしみつつもゆっくりと開き、痩せ細った主人と思しき人物が顔をのぞかせた。
どうやら、何かに怯えている様子。
クナラズが客だと知っても、不審の色を顔に貼りつけたままだ。
狭い客室に案内された後、さっそく茶髪の剣士が口を開いた。

レムラス「村人全員が佩刀している事実といい、あの主人の対応といい、この村はちょいとおかしいぞ?」
314名無しさん@おーぷん :2016/08/05(金)22:55:40 ID:WjH
キタ━(゜∀゜)━!
315菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/12(金)20:17:05 ID:9Dp
真夜中、アグサは扉を開けて宿屋の外に出た。
とにかく部屋が蒸し暑い。
両脇を男に挟まれて、いつ襲われるか知れたものではない。
襲われる心配というのは無論、クナラズ皇子でなくレムラスの方である。
最近、妙にひっついてくるので距離を置かねばと考えていたのだ。
あくまでレムラスとは皇子に仕える臣下、戦友の関係だ。
男女の仲など、まだ自分には早過ぎる。

アグサ「ホントなら、あのままトハラ学院を卒業して、良い人と結婚して、幸せな家庭を築くつもりだったんだけどなぁー」

アグサ「はーぁ、どうしてこうなっちゃったんだろ……。でもこれ、ウチが選んだ道なんだよね」

今さら嘆いてもどうにもならない。
そんな時は、外に出て鬱屈をした気分を晴らすべきだ。
目をつむり、両手を広げて深呼吸する。
こうやってみると、まるで満天の星空を吸い込んでいるような気分になる。
近くの井戸に腰かけて、アグサはトハラでの生活を想った。
一人で暮らしているが、彼女にも父があり母がある。
娘からの便りが途絶えて、二人は心配していないだろうか。

アグサ「手紙の一つでも、書いてあげようかな」

レムラス「そうだ。それがいいとも」

全身の肌が粟立つのをアグサは感じた。
ぎこちない動きで振り向くと、砂塵を含んだ風に茶色の髪をなびかせながら立つ少年がいた。
人のいない真夜中くらい、一人で歩かせてほしいものである。
そんなアグサの内心などお構いなく、彼は隣まで来ると、彼女の肩にポンッと手を置いた。

レムラス「誰にだって望郷の心がある。それを唯一満たしてくれるのが、手紙さ。誰宛てかは知らないけど」

アグサ「あんた、何しに来たのよ」

レムラス「ちょっと、喉が渇いてね。どいてくれよ、水汲むから」

アグサ「ところで少し聞きたいんだけど。あんた、昼間この村がおかしいって言ったじゃん?」

レムラス「ああ、言ったよ……んん? あれ?」

井戸から桶を引き上げたレムラスは目を瞠った。
普通なら新鮮な地下水がなみなみと入っているはずが、この桶はカラカラに乾いていたのである。
オアシス都市であるのに、水、一滴すらない。
316名無しさん@おーぷん :2016/08/13(土)21:14:44 ID:lyL
更新してるやん!
317菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/15(月)15:42:02 ID:Wae
早く終わらせたいな!
でもまだ全体の半分もいってないんだよ
今やってるダムドラ編、ボルドノープル編、極東編、2664年編、アルト族編、Lunatic編
語るべきことが多すぎて、いつVIPに戻れるのやら
318名無しさん@おーぷん :2016/08/15(月)23:27:28 ID:M4y
(´p・ω・q`)ガンバレ♪
319菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/15(月)23:50:50 ID:3pd
レムラス「まさかッ……!」

何を思ったか、レムラスは桶を放っていきなり走りだした。
石垣をひらりと飛び越えて、隣の民家の敷地に踏み込む。
井戸にしがみつき、急いで桶を引き上げる。

レムラス「無い……やっぱりだ!」

アグサ「やっぱりって何が? 井戸が枯れてたことが、そんなに深刻な事態なの? 別に、一晩我慢すれば済むことじゃない」

レムラスは後を追ってきたアグサに構わず、畑の方へ再び走った。
蒼い月光の中、静かに横たわる野菜の死骸がそこにはあった。
水の不足で死に絶えたのではない。
野菜はすべて、土から根こそぎ掘り返されている。
まるで、この畑だけ激しい洪水で流されたかのように。
あまりの惨状に、レムラスはもちろん、アグサでさえも息を飲んで呆然と立ち尽くしていた。

アグサ「なによ……どうやったらここまで畑を滅茶苦茶に荒らせるのよ。まさか、人間の仕業だっていうの?」

レムラス「少なくとも、この村の人間ではないはずだ。彼らは何かに相当怯えていたし、僕らが泊まった宿の井戸、そして被害者の井戸」

レムラス「どちらも砂漠のように枯れ果てていたからね。たとえ村人達が結託し、それぞれの井戸から水を集めてここの家を襲ったとしても、実行するまでに手間がかかり過ぎる。どこかでバレてしまうだろうよ」

アグサ「えーっと……レムラス。あんたが考えるに、外部から来た悪意ある魔術師、あるいは魔族の仕業ってこと?」

レムラス「わざわざ、顔も名前も知らない他人の畑を荒らす動機が分からないけどね。多分、その考えで間違いないと思うよ」

アグサ「確かに。住む場所を持たない旅人が、一介の村人の畑を駄目にするはずないよね」

レムラス「一応、畑にヒントとなる痕跡が残っていないか確かめてみよう」

二人は黒く濡れている畑の上を歩き、注意深く土や野菜の状態を観察した。
目立った外傷は見受けられず、侵入者の足跡すらない。
その時、夜目の利くアグサが何かを発見した。

アグサ「ねぇちょっと、これ見てよ……」
320菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/15(月)23:53:50 ID:3pd
ハゲ皇子が空気な感じだけど、ここは我慢してください
後々、ハゲマッチョ皇子は重要となってきますm(__)m
321菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/19(金)18:14:57 ID:8M3
登場人物を本家wiki風に改変中
本編の振り返りにもなる
322名無しさん@おーぷん :2016/08/20(土)20:51:21 ID:rz8
アグサかわいい
323菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/20(土)21:59:19 ID:CQI
>>322
私もそう思います
324菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/20(土)21:59:36 ID:CQI
アグサが畑の畝から拾い上げたのは、小さい青銅色の欠片だった。
表面では古代トハラ語で呪文らしき言葉がつづられているが、その意味はまったく分からない。
断片しかないので、その文章が何を表すのか読み取ることができないのだ。
彼女はレムラスに欠片を見せて意味を聞いたが、彼も首をひねるばかりであった。

レムラス「それを貸してくれ。明日、クナラズ皇子に見せよう。三人寄れば文殊の知恵とも言うしね」

アグサ「王宮にこもってばかりの皇子に見せても、何が変わるわけでもなさそうね」

レムラス「まぁそう文句を垂れずに。僕はこれから夜の散歩に出かけるけど、一緒に来るかい?」

アグサ「遠慮しとく。気分転換しに来ただけだし。宿に戻って寝るよ。あんたのスペースまで占領してね」

レムラス「ちょっと、すぐ帰るから僕が寝る場所は残しておいてくれよ?」

アグサ「やーだ! いない人のスペースは保証できませんー!」

レムラス「この鳥女め、人がどっかに行くと知ればいい気になって。じゃあ、どうぞご勝手にするといいさ!」

アグサ「うしし、悪いねー」

背伸びをして体をほぐすと、アグサは石垣を乗り越えて宿の敷地に降り立った。
扉を開いて、月の光が届かない暗い寝室に足を踏み入れる。
スゴォ、スゴォと耳障りな皇子のイビキに眉を顰めながら、両腕を頭へ回して冷えた床に横たわる。
二人分の寝床を占領できるのは、これまで男に挟まれて寝ていた身として喜ばしい。
まるで、トハラの自宅に戻ってきたような解放感だ。
アグサは目を閉じてうつらうつらしていたが、ふと、何かの気配をそばで感じて目を開けた。

アグサ「あっ」

人型の黒い影が、彼女の寝顔をじっと動かずに見降ろしているのである。
325菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/20(土)22:40:19 ID:CQI
アグサ「魔族!?」

反射的に身を起こし、影に向けて氷の槍を放った。
槍は惜しくも対象の首元をかすめ、奥の壁に突き刺さる。
飛び退いた不審者に休む暇を与えず、瞬時に生成した氷剣で斬りかかる。
暗闇に水色の軌跡が輝き、続いて硬い物同士がぶつかった甲高い音が響く。
またも影は彼女の攻撃をかわしたのだ。
刃は壁に刺さった氷槍の柄を斬り落とすのみに終わった。

レムラス「おい、やめろって! 僕だよ、寝ぼけてるのか!?」

影がアグサの細い両腕を掴み、ぐいっと顔の前まで引き寄せる。
よく見ると、正体はレムラスだった。
アグサはさっきまで自分が敵だと信じていた相手が味方だと気づき、羞恥心で桃のように顔を赤らめた。
彼女の腕を放し、壁に立てかけてある剣を取りにいくレムラス。

レムラス「暗闇の中で死ぬかと思ったよ。いきなり襲いかかってくるんだもん」

アグサ「あんたね、散歩するんじゃなかったの? すっごく驚いたじゃない」

レムラス「剣を忘れた」

アグサ「そんなくだらない理由で、ウチを怖がらせたってわけ!?」

レムラス「ごめんごめん、もう出るから。おやすみ」

レムラスは噛みつく鳥人族の娘を、脇に押しやった。
鎧は身に着けず、深緑色のチュニックのまま扉を開ける。
最後に振り返って、まだ立っているアグサを見た。

レムラス「じゃ、行ってくる。朝には戻るよ」

アグサ「寒村といっても、夜は魔族の活動時間。油断してると死角から餌にされるわよ」

レムラス「心配してくれたの? 愛してるよ、僕のアグサ」

アグサ「あーもう! そのむず痒くなるようなセリフはやめろ! あんたなんか魔族に食われちゃえ!」
326菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/20(土)22:40:39 ID:CQI
このキモいやり取りが次への布石となる
327名無しさん@おーぷん :2016/08/21(日)07:07:00 ID:ACQ
ヒェッ
328名無しさん@おーぷん :2016/08/21(日)22:06:38 ID:Hut


グ?
329菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/21(日)23:41:26 ID:yWC
>>328
フラグ回収に定評のある私(´・ω・`)
今回は吉と出るか凶と出るか
330名無しさん@おーぷん :2016/08/22(月)02:36:11 ID:u9t
更新してるやん!
331菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/22(月)17:19:18 ID:J5a
レムラスは閑散とした夜の村をゆるゆると練り歩く。
片手に青銅色の欠片をもてあそびながら、何を考えるわけでなく、ただゆるゆると足の行く先に任せて練り歩く。
トハラを旅立ってから、こうして一人で行動する機会が減った。
もちろん主であるクナラズや気に入っているアグサと旅をするのは楽しいけれど、それとこれとは話が違う。
誰にも邪魔されない自分だけの時間というのは、集団行動をする者にとって、万の金塊よりも価値がある。
井戸の水が一気に枯れたり、畑が水浸しになっていたり、このような異常事態の時こそ、冷静な判断力が必要だ。
つまり、混乱した脳内を鎮めるためにレムラスは誰も連れず、たった一人のナイトウォークへ繰り出したのである。

レムラス「お、あの塔よさそうだな」

村のはずれにある、小ぢんまりとしたミナレットの最上階まで登り、夜空をたゆたう月に右手をかざす。
指の隙間を通り抜けた蒼白い光は、冷たい気を放ちながらレムラスの顔を滑り落ちて、背後のレンガ壁に濃い影を映し出した。

レムラス「綺麗な景色だ……。まったく、心まで洗われるような感じだよ」

右手を下したレムラスは深く溜息をついて、ミナレットの窓から首だけ出して、下界の様子をうかがった。
土づくりの家々は呼吸を止め、大通りには人っ子一人見えぬ。
アグサが夜を『魔族の時間』と呼んだのも、納得できる気がした。
そんな凍りついた時の中を、悠々と歩いてゆく影がある。
レムラスは目を大きく見開き、身を乗り出してその不可解な物体を注視した。
虎の獣人だ。
それも、白のランニングシャツを着て、ステテコパンツの両脇に長刀を佩くという珍妙な格好。
弾かれたように走りだしたレムラスは、巨大な柱を軸とする螺旋階段を駆け下り、虎男の前に踊り出た。

レムラス「待て、そこの虎男! タイガー・ランペルージ!」

タイガー「ふむぅ……? なんだ貴様は。話があるならば、まず名乗れ」

レムラス「レムラス・アクエリア。ハーゲル王国第43代マハーラージャ・クナラズの家臣!」

タイガー「はて? 今ボルドノープルの実権を握っているのはキラメロでなかったか。……まぁ良しとしよう。で、クナラズの家臣がタイガーに何の用か?」

レムラス「どうしてこんな真夜中に、外をほっつき歩いているんだ。ミナレットから見ていて、とても異様だったぞ」

タイガー「それなら貴様も、家臣であるのに主君のもとを離れて良いのか?」

レムラス「す、少し散歩をしているだけだ。最近、世間が騒々しいからな」

タイガー「ふふん。このタイガーも同じよ。単に空気が重苦しくなったから、散歩をしているまでのこと」
332名無しさん@おーぷん :2016/08/25(木)22:16:12 ID:tTS
最近更新多くて嬉しい
333菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/28(日)00:17:06 ID:L4W
レムラス「トハラの最強戦士様ってのは、ただの散歩ですらガッチリ武装しているんだな。まったく、勉強になったよ」

タイガー「いついかなる時も、敵の襲撃に備えて刃を近くに置いておく。タイガーだけでなく、戦士一般の教養だ。貴様は今まで何を学んできたのだ。それに、早くこの村を出立せねば、存亡の危殆に瀕している、モール族を救えなくなってしまう」

レムラスは、虎男の発言に隙が生まれたのを聞き取った。

レムラス「なるほどね、やっぱりただの散歩じゃなかったじゃない」

タイガーはこの村を今夜中に引き払うつもりだったのだ。
以前、トハラの巨大マニ車で初めて出会った時、彼はエグバード王国の故地に行くと言い残していた。
彼の目的は自分の主君であるクナラズと同じ、巨大白蟻デビルタームの討伐だ。
なら、話が早い。
もう一度、彼に仕官の話を持ちかけてみよう。
行きつく場所が同じなら、絶対に協力してくれるはずだ。

タイガー「む……思い出したぞ。貴様は会うのが三度目だな。また皇子のように仕官の話をしてくるか? いくら言っても無駄だ。タイガーは誰ともつるまない。仕官する気もない。若造、これで満足か?」

彼の心を見透かしたようなタイガーの返答に、レムラスはギクリと体をこわばらせた。
しかし、今ここで臆してはクナラズ軍にとって大きな鯛を逃すこととなる。
トハラ学院の地下図書館で知った、タイガーの過去を引き合いに出して違う角度から攻めてみる。

レムラス「タイガー・ランペルージ。君、ずっと昔から生きているんだってね。それも百年や二百年も前から」
334菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/28(日)00:20:28 ID:L4W
タイガー「それがどうした」

レムラス「タイガーは許されざる裏切り者。文献にこう書いてあったんだけど、どんな意味か説明してもらえるかな?」

タイガー「なんだと」

レムラス「確かに、仕官してほしい気持ちがあったことは嘘じゃない。けど、それは半分だ。残りの半分は謎に包まれた君の正体を知りたい、凡人によくある知的好奇心だよ。過去に何かやらかしたから、許されざる裏切り者なんて不名誉な異名を与えられるんだろう?」

タイガーが双刀の柄に手をかける。
話の内容次第では、レムラスを斬るのも厭わない、断固とした意志表明だ。
むしろ、レムラスはこの時を待っていた。
やはり、タイガーは他人に触れてほしくない過去がある。
裏切り者という言葉に反応したことから、自分の行動は正しかったと信じているのだろう。

レムラス「いいや、君がそこまで話したくないなら、無理に聞くまい。けどね、今のままじゃ君は永遠に過去の汚名を払拭できない」

タイガー「払拭する気などない。タイガーは部族に異邦人を招きこんだ、掟破りの卑劣漢でいい。ミズハを守れるのなら」

レムラス「やっと本来の目的を言うようになったな。君が二百年前、裏切り者と言われたのは、異邦人であるミズハさんとやらを集落に招きいれ、部族の純潔なる血を汚した」

レムラス「つまり掟を破ったからだね?」

タイガーの頬がピクリと動く。
強く歯を噛みしめ、瞳に強烈な光が灯る。

レムラス「君はたぶん、たった一人でミズハさんのために戦ったんだろう。けど、結果はどうだ? ミズハさんを守ることはできたのか?」

レムラスの問いに、タイガーはうなだれて呟く。

タイガー「守ることはできなかった。集落は抜け出せたが、その先で憎き魔族ダムドラに、全てを奪われた。ミズハも、タイガーの命も、約束された幸福も、全部だ!」

タイガー「ゆえにタイガーは殺してやるのだ、ダムドラを。誰の助けも借りん。これはタイガー自身の問題だからな」
335菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/28(日)00:22:23 ID:L4W
再び歩きかけた虎男の背に、レムラスは冷たい言葉を投げかけた。

レムラス「それじゃ、過去の繰り返しだ。君は永遠にミズハさんの仇を討つことはできない」

タイガー「どういう意味だ」

レムラス「デビルタームごときに手こずる実力で、ダムドラとかいう魔族に勝てるのかい? それは君が一番よく分かっているはずだぜ」

タイガー「勝算なら……ある。貴様もトハラで体感したろう。フルウェポン・コンビネーション。この技を使えば、どんな魔族でも粉々となる」

タイガー「このタイガーだけで済む話だ。貴様がついてくる必要はない」

踵を返し、去ってゆくタイガー。
ここまでの頑固者は、今までの人生で見たことがない。
レムラスも負けじと、大声で呼び止める。

レムラス「なら、取引はどうだ? 君が僕らを手伝ってくれるなら、僕はダムドラの居場所を君に教えよう。これなら、良いだろう?」

タイガー「そんな口約束、誰が信じる」

レムラスは一歩前に進み出て、腰の鞘から一振りの剣を引き抜いた。
顔の前で剣先を天へ向け、右膝を地面について首を垂れる。
月光に包まれた二人の姿は、教会での騎士の叙任式を思わせるほど、近寄りがたい厳格さを漂わせていた。

レムラス「この剣とレムラス・アクエリア、そして我が主君クナラズ・ハーゲル殿下の名にかけて、言葉が真実であることを誓う」

虎男は黙ってレムラスの宣誓を聞いていたが、深く溜息をつくと毛むくじゃらの手を差し伸べた。

タイガー「一度だけだ。ダムドラの情報を提供するなら、協力してやらんこともない」

レムラス「フッ……それでこそ大将だよ。少し待ってな」

起き上がったレムラスは、指を口に当てて鋭く吹き鳴らした。
澄んだ笛の音が夜空に道を描き、その道を滑るように辿ってくる小さな影があった。
 
336菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/28(日)00:25:42 ID:L4W
虎チョロすぎたかな
巻きでいくぞ
337名無しさん@おーぷん :2016/08/28(日)14:24:25 ID:j63
かっこいいじゃん!
338菩薩◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/29(月)01:42:39 ID:o7M
続編で出す予定のモンスターを名前だけ先行公開
密林の主、イトゥパ・アンガトル
お前らのキャラはこの謎モンスターにどう挑むのか……
339冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/30(火)01:32:57 ID:I6z
小さな影はレムラスの左腕に留まり、琥珀色の瞳でジッとタイガーを睨んだ。
一羽のハヤブサである。
彼こそが魔族長テングリカガンを一度滅ぼした聖剣クチュルクなのだが、レムラスはそのことを知らない。
情報の漏洩を恐れたクナラズが、信用のおける腹心ガルガとの秘密にしようと決めたのだ。

レムラス「さて、じゃあ先に僕が君にダムドラの居場所を教えるよ」

レムラスは虎男にダムドラの容姿について、覚えている部分を聞いた。
なにぶん200年も前に出会った魔族なので、流石のタイガーも細かいところは忘れてしまっている。
しかし、丸太のような四足で巨体を引きずるように歩く、トカゲ型の魔族であることは判明した。
ダムドラの容姿を伝えると、レムラスはハヤブサをそっと宙に放った。

レムラス「少し経てば戻ってくる。皇子様に聞いたところによると、あの鳥はボルドノープルとトハラを半日たらずで移動するそうだ」

彼の言葉を体現するかのごとく、疾風の勢いでハヤブサは戻ってきた。
近くに落ちていた小枝を嘴でつまみ、砂地に大きな円と小さな円を二つ描く。
左に大きな円、右に小さな円という構図が完成した。
ハヤブサは大きい円の縁に木を突き立て、レムラスの肩に留まった。

レムラス「タイガー、どういうことだか分かる? こいつが魔族の位置を探し当てたのは確かなんだけどな」

タイガー「ふむふむ……理解した。図は雑だが、短時間でよく見つけてこれたものだ」

レムラス「この図式だけで分かったの!?」

タイガー「おそらく、小さな円はタイガー達が現在いる村。そして大きな円はこれより西に存在する『精霊の湖』を表しているのだろう」

レムラス「どうして精霊の湖だと思った? 街かもしれないし、塔かもしれない。一言に湖と決めつけるのは、早計だと考えるよ僕は」

タイガー「放浪の身であるタイガーだからこそ分かるのだ。エグバード王国は滅び、街は徹底的に破壊し尽された。この先、文明的な建築物と呼べる物は残っていない」

レムラス「なっ……」

タイガー「瓦礫と霧に包まれた、亡者の地が延々と果てまで続くのみよ。だが、おかげでダムドラの居場所を知ることができた。礼を言う」

精霊の湖という言葉を聞いて、レムラスは手中にある青銅の欠片がほんのり温みを帯びたような気がした。
340冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/31(水)00:58:53 ID:qet
朝になっても、レムラスは宿に帰らなかった。
どこかで道草を食っているのだろう、とアグサは考えていたがクナラズや他の村人が起きてくると、心の中で不安と焦燥の芽がニョキニョキと伸び始めた。
朝食の席に座っても心ここにあらずといった調子で、頻繁に立ち上がってはナンの欠片を片手に、扉を開けてレムラスの姿を探すのだ。
クナラズは朝食時に見せたアグサの奇行がレムラスの失踪と関係していることに、いち早く気づいた。
そしてもう一つ、アグサが徐々にレムラスを『仲間』として認識しつつあることも感づいたのである。

クナラズ「本人は理解していないだろうが、アグサは確かにレムラスを仲間だと識閾下で認めている。そうでなければ、彼が失踪しても大した動揺は見せないはずだ」

軍において、将同士の信頼は不可欠である。
アグサが無意識とはいえレムラスの存在を求めていることは、組織としての団結が強まった証拠だ。
クナラズは嬉しく思いながら、玄関先にいる鳥人族の娘へ声をかけた。

クナラズ「昨夜からレムラスの姿が見えないな。アグサ、何か知っていることはないか?」

アグサ「いいや、何も……」

クナラズ「朝食も満足に食べなかったみたいだな。いつも強気なお前を、そこまで追い詰めることがあるとは思えんが」

アグサ「別になんでもないよ! ただ、あいつが散歩したいと言ってて。朝には戻るって約束したのに、夜は魔族の時間だから気をつけろって注意したのに……!」

魔法で生成した翼を小刻みに震わせ、アグサは絞り出すような声で呻いた。
あの時、レムラスを無理にでも引きとめていれば。
後悔と自分への怒りがアグサの中で渦巻き、溶岩のごとくグツグツと煮え立つ。
341冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/31(水)01:00:44 ID:qet
乱気流が吹き荒れる彼女の心を察した巨漢皇子は、朝陽を照り返す自分の頭に手を置き、撫でながら言った。

クナラズ「ただ散歩に行ったわけではないだろう。他に彼が言い残したことは? 負の感情だけで物事は解決できぬ」

クナラズ「それに、まだレムラスが死んだとは限らない。顔を上げて、彼を探しに行こう」

宿を出た二人は、隣の民家に何やら沢山の野次馬が集まっているのを見た。
家主が洪水で水浸しとなった畑の中央にうずくまり、取り囲む野次馬達もみな無言である。

家主「わしが湖底の腕輪を釣り上げて、しかも壊してしもうたから、精霊様の怒りを買ったのじゃ。ああ、なんたることをしてしまったのじゃ……」

家主の言葉には、諦めの響きが強くこもっていた。
無知ほど恐ろしいものはない。
精霊の湖で腕輪を偶然釣り上げてしまった家主は、その価値が分からず外見だけでガラクタと判断したのだろう。
壊してしまった報復を、昨夜受けたというわけだ。

アグサ「ウチとレムラスね、ここで青銅の欠片を拾ったんだ。それってもしかして……」

クナラズ「たぶん、ウンディーネの腕輪だろう。ここより西に精霊の湖という場所があるのだが、その湖底に保管されていた代物だ。」

アグサ「あいつ、それを持って散歩に出かけたから、ひょっとしたらウンディーネに襲われてるかも……」

クナラズ「あるいは、精霊の湖に行った可能性が高い。いずれにせよ、我々の次の行き先は決まった。精霊の湖に立ち寄って、レムラスを救い出す」
342冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/08/31(水)01:06:48 ID:qet
二人はまだ宿の中にいたか
wikiに載せるとき変えます
343名無しさん@おーぷん :2016/08/31(水)20:36:25 ID:hyL
お、更新してる
344冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/01(木)01:39:12 ID:Y85
レムラスとタイガーは湖畔の湿った砂利を踏みしめた。
あの夜、タイガーと邂逅を果たしてから西へずっと歩き続けてきたのだ。
太陽が真上まで昇ってきている頃なのだが、湖の水面から流れてくる白い濃霧のせいで、まったく前が見えない。
二人の目的地である精霊の湖は、普段なら沢山の旅人が憩いの場として利用するが、今日はレムラスとタイガー以外、誰も訪れていないようだ。
夜空を映し出したような群青色の澄み切った湖も、漂う苔と粘土で灰色に濁っている。
虹色の鱗を持つ魚達は窒息死したのか、真っ白な腹を向けてあちらこちらに浮かんでいた。
試しに水中へ手を突っ込んだレムラスは、小さく悲鳴を挙げて飛び退いた。

レムラス「ここの湖、水がなんだかヌルヌルしてる!」

タイガー「ふむふむ、湖底に苔が密生しているためだ。他に、魚やその他諸々の死骸が溶けているのだろう。忠告しておくが、ここの水を飲むと死ぬぞ」

レムラス「精霊の湖って、前から酷い場所だったのかい? 名前は綺麗なのに実が微妙なんて、子供のころ剣士学校の給食で食べたオーロラスープ以来だよ!」

トハラの剣士学校で昼休みに出されたオーロラスープは、まさに見た目だけすれば吐瀉物そのものであった。
オーロラと聞いて七色のスープが出ると思っていた幼き日のレムラスは、スープの入った木の椀を両手にしばらく固まってしまったのだった。
毒虫よりも苦い思い出が、彼の心に蘇る。

レムラス「僕には分からない。昔からこうだったのなら、どうして先人は『精霊の湖』なんて美しい名前をつけたんだ。皮肉か? あまりの汚れに笑うしかなくて、皮肉をつけたのかい?」

レムラスは虎男に詰め寄った。
遠くを眺めるような表情で答えるタイガー。

タイガー「精霊の湖はもともと、多くの旅人が訪れる休息の杜であった。水を一口飲んだだけで不思議と力が全身にみなぎり、万の魔族を相手にしても負けぬと吟遊詩人によって謳われたほどだ」

レムラス「どうしてここまで汚れてしまったの?」

タイガー「腕輪を村人が勝手に盗んだせいだ。湖を浄化する機能があったか、あるいはウンディーネの怒りに触れたか。タイガーは前者であると予想する。欠片でもよいから、湖底の祭壇に腕輪を置いてくるのだ」

レムラス「湖底……まさか、湖に潜る気!? この腐肉と苔で汚れきった湖に裸で飛び込むの!?」

タイガー「ふむふむ、その通りだ。だがタイガーはゆかん。これはあくまで貴様の問題、タイガーが口出しすべき場面ではない」

レムラス「肝心なところで逃げやがって……それでもバイバルス所属の武人かよ」
345冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/01(木)01:40:26 ID:Y85
みんなのオーロラスープはどうでしたか?
私の学校はレムラスと同じく見た目はゲロでした
うまかったから何度もおかわりしたけど
346名無しさん@おーぷん :2016/09/05(月)05:00:13 ID:2Nx
オーロラスープwww
懐かしいな
俺の記憶では美味かった希ガスwww
そういやクジラのオーロラ煮なんてのも出てたけど関連性あるのかな
347名無しさん@おーぷん :2016/09/06(火)15:06:45 ID:yZS
俺のとこはそんなのでなかった
348名無しさん@おーぷん :2016/09/07(水)19:06:28 ID:8KS
てか
349名無しさん@おーぷん :2016/09/07(水)19:06:45 ID:8KS
名前が変わってる…
350冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/07(水)21:15:50 ID:Z3K
>>349
コテのことか?
本当はVIP帰還時に変えるつもりだったんだけど、面倒になったので一本化した
名前が変わったところで、本編になにか影響があるわけでもない
そこまで気にしなくていい
351冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/08(木)13:52:15 ID:TUX
http://youtu.be/8swmRbWbnHA

精霊の湖はこんなイメージ
何が潜んでいるか分からない、静かな恐怖だね
352冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/10(土)22:55:55 ID:3E5
レムラスはチュニックを脱ぎ、地面に置いた。
両手を天に突き上げ軽く伸びをした後に、屈伸と肩回しをそれぞれ数回ずつ、満足ゆくまで繰り返す。
腐敗物の漂う湖に潜るのだから、口はもちろん目も閉じなければならない。
全く光のない暗闇での水泳は初めてだが、レムラスは泳ぎに関してそれほど心配していなかった。
砂漠の玄関口と呼ばれるトハラも、ボルドノープルと同じく海に面している。
水中戦も想定して、剣士科の実技演習に素潜りや遠泳が組み込まれていたのだ。

タイガー「泳ぎに大した自信があるようだな」

レムラス「ああ、もちろんさ。水中では、君より機敏に動くことができるよ。絶対にね」

タイガー「フッ。しかし、念には念を入れさせてもらう」

そう言うとタイガーは右手の指を伸ばして手刀を作り、レムラスの両目めがけて勢いよく打ち下ろした。
バチバチッと電気の弾ける音と共にレムラスは吹き飛ばされ、そのまま湖に背中から落ちた。

レムラス「な、なにするんだよ!」

タイガー「防御魔法だ。タイガーの魔力が低いので眼球しか守れぬ。口や腹の中は貴様が守れ」

レムラス「目を開いたまま潜ってもいいの!?」

タイガー「それくらい、考えて分からぬか。タイガーは湖畔を散歩する。貴様を助けることはできぬから、そのつもりで腕輪を返してこい」

レムラス「分かった……。ありがとう」

レムラスは礼を言うと、腐臭に満ちた空気を吸い込んで汚れた湖の底へ潜水を開始した。
353冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/10(土)22:57:06 ID:3E5
無駄な脂肪の無い痩せた身体を一直線に伸ばし、両脚で水を交互に蹴って深く深く沈んでゆく。
防御魔法のかけられた目で水中を見回すも、水面に漂う濃霧のせいで月の光がほとんど届かない。
これでは、目を閉じて行動するのと同じようなものだ。
頭のてっぺんから足先まで水の冷たさを感じつつ、着実に水を掻いて人魚のごとくスイスイ進む。

レムラス(予想以上に暗いなぁ。まるで夜空を落ちているみたいだ。地面にぶつかっても怪我はしないけどね)

生い茂る藻と溶けかけた魚や動物の死骸を押しのけ、ついにレムラスは湖底の祭壇へと辿りついた。
と言っても、半ば手探りで発見したようなものだが。

レムラス(祭壇……じゃないなこれは)

祭壇と呼ぶよりは、小さな祠であった。
湖底の岩を切り出して作っただけの、良く言えば素朴、悪く言えば面白味のない雑な祠。
祠の中央に円形の窪みがあり、どうやら腕輪はここに収まっていたらしい。

レムラス(やっぱりな。ここに置くと、湖が綺麗になったりするんだろう? たとえ欠片だけであっても)

腕輪の欠片を窪みに置いてみる。
何も起こらない。
彼の理想に反して現実は甘くなく、全て集めなければ湖は浄化されないようだった。
レムラスが諦めて浮上しかけたその時、骨まで響く重い衝撃が彼の全身を襲い、数mほど弾き飛ばした。

レムラス「うがッ……!?」

回る視界の中で、気泡が水面へ昇ってゆくのが見える。
水と異物が、喉を通って腹の下にすとんと落ちる。

レムラス(やべッ……! 水を飲んじまった!)

汚染された湖の水を飲むと死に至る。
タイガーの言葉を思い出したレムラスは、必死に手足を動かして水面へ浮上した。
人差し指を口に入れて水を吐き出そうとするも、両脚を氷のように冷たい手に掴まれ、再び湖の深淵へむりやり引き戻された。

レムラス「ごぼッ……ごががッ……!」

レムラス(誰だ? この足首を掴む異様な力、普通じゃないぞ。タイガーの言っていたウンディーネか!?)

気だるげな、低い女性の声がレムラスの脳内に響く。

ウンディーネ「これこれ、吾輩の湖で吐くでない。ただでさえ無知な人間のおかげで汚れてしまったというに」
354名無しさん@おーぷん :2016/09/19(月)20:24:00 ID:Ihj
更新……
355冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/09/21(水)16:16:13 ID:Yik
すんません
色々ありまして
明日から本気だす(ーー;)
356名無しさん@おーぷん :2016/09/24(土)02:34:53 ID:O9d
(´・ω・`)
357名無しさん@おーぷん :2016/09/25(日)11:12:32 ID:9XH

358名無しさん@おーぷん :2016/09/30(金)09:02:30 ID:RzO
………
359名無しさん@おーぷん :2016/10/01(土)13:46:02 ID:Erf
悲しいなぁ
360冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/10/02(日)23:15:08 ID:oIv
水を司る精霊、ウンディーネ。
その姿は絹のトーガを身にまとった美しい女性とも、はたまた無数の触手をうねらせる恐ろしい化け物とも言われている。
自分を襲った存在が果たしてどちらなのか、レムラスに考える余裕はなかった。
このままでは、なすすべもなく溺れてしまう。
必死に体を動かして、足首に絡みつく手を振りほどこうとする。

ウンディーネ「よく暴れるヒトじゃな」

ふと、足にかかる重さが嘘のように軽くなった。
絡みついていた手が離れたのだ。
しかしその直後、強い衝撃がレムラスを吹き飛ばし、尖っている岩に彼の身体を叩きつけた。
口の中に勢いよく流れ込んでくる腐った水。
吐き出したくても、次にどこから敵が攻撃をしかけてくるか警戒せねばならない。
ここは、突き飛ばされた機に乗じて、何としても湖岸まで逃れる必要がある。

レムラス(誰か知らないけど、腕輪の欠片は置いた。さっさと帰ろう。あばよ!)

レムラスは岩を足場にして、一気に岸へ向かって泳ぎ出した。
水面に顔を出し、胸いっぱいに空気を吸い込む。
左右の腕で交互に水を掻く、父がクロールと名付けていた泳法だ。
足の爪先に激しい水の流れを感じる。
化け物が自分の失敗に気付いて、死に物狂いで追ってきているのだろう。

レムラス(そう易々と捕まってたまるかよ。こっちも命がかかってんだ)

湖面がザザッと盛り上がり、槍を片手に構えた群青色の女神が姿を現した。
分厚い暗雲が流れるように押し寄せ、滝のように雨を降らせる。
霧は晴れたが、代わりに強風による高潮と雨とでレムラスは見事に翻弄されていた。

レムラス「なるほどね、これが『雨の魔王』と呼ばれる所以かい」

水の精霊は天の恵みとして枯れた地を雨で潤すが、加減というものを知らない。
おかげで洪水が発生したり、田畑がダメになってしまったりするのだ。
トハラ学院で習った精霊学が、ここで役に立つとは思いもしなかった。

ウンディーネ「待て、我が腕輪を壊した人間め!」

ウンディーネの投げた槍が、レムラスの脇をかすめて水に沈んでゆく。
361冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/10/02(日)23:15:35 ID:oIv
遅れてすみませんm(__)m
やっぱりウンディーネ戦は難しい
362冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/10/02(日)23:17:19 ID:oIv
雨の魔王=ウンディーネ
363名無しさん@おーぷん :2016/10/05(水)12:54:18 ID:PeZ
水系の能力って戦闘描写しづらそう
364名無しさん@おーぷん :2016/10/19(水)21:55:00 ID:Ep8

365名無しさん@おーぷん :2016/10/23(日)02:01:33 ID:85M
(´・ω・`)
366名無しさん@おーぷん :2016/10/23(日)11:54:39 ID:c7o
         ,, _
       /     ` 、
      /  (_ノL_)  ヽ
      /   ´・  ・`  l    残念だが冒頓単于は死んだんだ
     (l     し    l)    いくら呼んでも帰っては来ないんだ
.     l    __   l    もうあの時間は終わって、君も人生と向き合う時なんだ
      > 、 _      ィ
     /      ̄   ヽ
     / |         iヽ
    |\|         |/|
    | ||/\/\/\/| |
367名無しさん@おーぷん :2016/10/25(火)21:05:08 ID:GV5

368冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/10/30(日)20:16:53 ID:SNi
すまん
そろそろ戻る
369名無しさん@おーぷん :2016/10/31(月)21:14:51 ID:4d4
その言葉、信じていいのか?
370名無しさん@おーぷん :2016/11/06(日)23:35:59 ID:gqV

371名無しさん@おーぷん :2016/11/14(月)00:47:45 ID:arG
悲しいなぁ
372シモン◆69mGmU.0fw :2016/11/14(月)21:24:10 ID:MLQ
パワーアップして戻って来る……はず(´Д` )
373名無しさん@おーぷん :2016/11/15(火)17:01:18 ID:BWw
(º∀º)
374名無しさん@おーぷん :2016/11/15(火)18:02:27 ID:U9X
こんばんは
むかしこのスレを荒らした者です
今日はその事で謝りにきました

本当にすみません
375名無しさん@おーぷん :2016/11/16(水)16:55:51 ID:Ifs

376名無しさん@おーぷん :2016/11/19(土)00:00:12 ID:Cql
時々向こうで見かけるだけに更新が無いのは寂しいな
377名無しさん@おーぷん :2016/11/19(土)13:20:09 ID:iwj
飽きたか…
忙がしいのか…
どうでもよくなったのか…
378シモン◆MOCOY8gPys :2016/11/23(水)20:21:54 ID:5U5
( ´Д`)y━・~~あいたたたた
やる気無くしたか、
別の作品を手掛けているか

どっちなの?
379名無しさん@おーぷん :2016/11/27(日)10:03:01 ID:QyC
未完…
380冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/11/27(日)23:15:21 ID:Mi0
ちょっと書けなくなってた
トハラ編のプロットはできているので、それに沿ってボルドノープル攻防編まで書いています
一ヶ月も音沙汰なくて申し訳ないです
381冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/12/05(月)23:35:54 ID:KVN
レムラスが必死に未知の敵から逃れようと奮闘する一方、岸で待機中のタイガー・ランペルージは呑気に釣りをしていた。
ここ、精霊の湖にダムドラがいると推測してやってきたのだが、どうにも未だ姿を現す気配が感じられない。
孤独な虎男はハヤブサが運んできた小枝と糸を使って、退屈しのぎに釣竿を作ってみた。

タイガー「我が宿敵、ダムドラ。早く来い」

じっと、餌の無い糸を水中へ垂らす。
渭水の畔で時節を待つ太公望が如く。
ゆるやかに時が流れてゆく。
乳のような霧はますます濃くなり、照り付ける太陽の光を反射して、銀白色に煌めく。
遠くで、轟音と共に巨大な水柱が立ち昇った。
タイガーはゆっくりと腰を上げた。
釣竿を捨て、代わりに鞘から長刀を抜き取る。
レムラスに異変があったことは確実だが、霧で目視できない以上、水に潜るのは軽率だ。
折しも、タイガーは霧の向こう側に、ヌウッと小山が蠢くのを見出した。

タイガー「獣……?」
382冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/12/05(月)23:36:20 ID:KVN
四本足で歩く獣の額には、見知らぬ少女が裸のまま吸収されかけている。
ミズハ。
ダムドラの名を聞いたと同時に思い出した、記憶の断片に生きる少女。
自分とどういう関係があったか、分からない。
しかし、命よりも大切な存在であることは、直感で悟っていた。

タイガー「久方ぶりだな、ミズハ。出逢えてこれ程まで嬉しいと感じたことは、生まれて初めてやもしれん」

少女は哭いていた。
血涙を石膏の如く乾いた瞳から潸潸と流し、声にならぬ叫びを辺りに響かせて。
何故だか知らないが、タイガーは彼女の姿を見ると、胸が締め付けられるように感じた。

タイガー「魔獣に囚われ苦しいだろう、悔しいだろう。ああ、タイガーも同じよ。だが案ずるな、貴様だけはこの畜生道、塗炭の苦しみから救い出してやる」

ダムドラが咆哮する。
湖全体がさざめく。
まるで、ダムドラを恐れているかのように。
存在してはならぬ者が、ここにいる。
地球をも震えさせる凶星が、ここにいる。

タイガー「逃すかッ!」

ダムドラにしがみついた虎男は、その重厚な筋肉と脂肪の鎧に包まれた背中へ、細長い愛刀を思い切り突き立てた。
皮膚が裂けて赤黒い血が噴き出すものの、致命傷はおろか敵の歩みすら止められていない。
バキン、と硬い音がした。

タイガー「む、これは……!」

タイガーは、呆然と短くなった剣を見つめた。
ダムドラの背筋は刀が刺し込まれる刹那、一瞬で収縮し、刃先をへし折っていたのだ。
筋肉を駆使した、真剣白刃取り。
流石のタイガーも、この無意識の内に繰り出される驚異的な技には戦慄せざるを得なかった。
ならばこれはどうかと拳銃を至近距離で発砲するも、鋼のような皮膚に弾かれてしまう。
通常攻撃では、討ち取るに力不足だ。

タイガー「フッ、この程度では擦り傷すら創れないか。ならば受けるがいい、我が奥義を」

タイガー「砕け散れ、フルウェポン・コンビネーション!」
383冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2016/12/05(月)23:42:03 ID:KVN
ダムドラの散歩>>タイガーの通常攻撃
タイガー・ランペルージは必殺技があってこそ輝く
通常の剣技はハルシャやジークとそう変わらない
要するに平均よりちょい上
384名無しさん@おーぷん :2016/12/18(日)02:38:36 ID:DKW
更新きてた
385名無しさん@おーぷん :2016/12/19(月)23:36:03 ID:TnX

386名無しさん@おーぷん :2016/12/28(水)12:09:19 ID:SEh

387名無しさん@おーぷん :2016/12/28(水)17:24:05 ID:26T
もう来ないのかな
388名無しさん@おーぷん :2016/12/29(木)02:52:01 ID:aOE
まぁしゃーない
ここまで続いただけ凄いことやと思うで
389名無しさん@おーぷん :2017/01/10(火)23:23:15 ID:ECP
もう本当に終わったったのか
390冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/11(水)22:19:01 ID:adi
一ヶ月もほっぽってすみません(;´Д`A
トハラ編のくだりが本当に書けなくて(;´Д`A
ポケモンに逃げてました(;´Д`A
ちょっとだけ更新
391冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/11(水)22:23:33 ID:adi
確かにフルウェポン・コンビネーションを発動したはずだった。
しかし、広がり始めた方眼上の世界はどういうわけか途中で弾かれ、代わりに見えないエネルギーの拳がタイガーを天高く突き上げたのである。
虎戦士は吹き飛ばされながら、即座にそれが強烈なカウンターであることを悟った。
吸収したミズハの魔力を利用して、あらゆる魔法攻撃を弾くカウンターバリアを張っているのだろう。
もちろん、タイガーもただでは転ばない。
ちょうどダムドラの頭に着地すると、二本の刀を勢いよく突き立てた。

タイガー「ふむふむ……逆に言うと魔力の供給源となるミズハを剥がせば、カウンターはできなくなるわけだ」

双刀が頭に刺さっても、ダムドラは意に介せず歩を進める。
ギョロリギョロリと魚眼のように丸く赤い目が互い違いに動き、獲物となる魚がいないか確かめる。
魚は全て、毒気にやられて腹を上に向け浮かんでいた。
まるで湖が遅れて訪れた客人へ、馳走を振る舞っているようだ。
ダムドラは首を伸ばして水中に口を着けると、見る者をアッと言わせるような恐ろしい速さで水を呑み始めた。

タイガー「うぬッ……湖を呑み干す気だな」

タイガー「レムラス! レムラス、聞こえるか! 腕輪を置いても、こちらへ戻ってきてはいかん!」

枯れるほど声を張り上げてみたが、返事はない。
さっきの水柱といい、レムラスに何か大事が起こっているのかもしれない。
タイガーは、奥義を発動する構えに入った。
ダムドラでなく、遠く離れたレムラスに向けてである。
視認できないので『世界』に組み込めるか怪しいが、やってみなければ分からない。
再び、縦線と横線の交錯する白い空間が広がり始めた。
392シモン◆MOCOY8gPys :2017/01/11(水)22:39:16 ID:ZLO
おかえりなさい(=゚ω゚)ノ待ってたぜ
393冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/12(木)08:14:20 ID:GaZ
>>392
ただいも(*^^*)
394名無しさん@おーぷん :2017/01/12(木)09:34:06 ID:10w
更新キテター

ダムドラダイソン……
395冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/12(木)23:38:44 ID:GaZ
空虚な部屋を一人、タイガーは泳いでいく。
一秒一秒ごとに、身体の負担が重くなっていくのが分かる。
薄氷を踏むような音と共に、親指の爪が割れた。
この調子では、左右合わせて十も割れるのに、そう時間はかかるまい。
爪だけではない、脳も眼球も、腹に詰まった臓器も彼が思う以上に脆かった。

タイガー「そこか……世話のかかる奴め」

レムラスは天を仰いで、海月さながら虚無の波間を漂っていた。
腕を掴み、グッと引き寄せる。
その後、直感的に湖岸だと感じ取れる場所に着くまで、タイガーは力の続くかぎり移動していった。
フルウェポン・コンビネーションの世界は現実世界と対応している。
疲れたからといって、レムラスを助けた場所で技を解除してはタイガーも湖に落ちてしまう。

レムラス「タイガー!? あれ、どうしてぼく、いつの間に岸に上がっているんだ?」

タイガー「あれを見ろ」

レムラス「……怪物が、湖を呑んでる!」

タイガー「ふむふむ、貴様が放ったハヤブサの報告は当たっていたようだな。ダムドラは食事のため、湖へ訪れていた」

二人は精霊の湖が枯れ果ててゆく様を、岸辺でぼんやりと眺めていた。

タイガー「対策が必要だ」

レムラス「対策? 漁場を壊されて猛り狂った村人を宥める対策かい?」

タイガー「否、ダムドラ討伐に関してのだ。俺一人では、まるで歯が立たなかった」
396冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/19(木)22:08:56 ID:uFZ
レムラス「タイガー! 何か青っぽいのがいるぞ!」

枯れ果てた湖底の中央で、大の字に両手両足を広げて寝転ぶ少女がいた。
もはやこれまでと、観念の目を閉じているらしい。
死んだ魚のようなくすんだ瞳に、悠々と空を泳ぐ雲の群れが映る。
水色の髪は力なく萎れ、触手のごとくウネウネと水を求めて四方に伸びている。
レムラスが木の枝でつついてみると、腹に溜まった水を吐き出し、掠れた声を絞り出した。

ウンディーネ「もう駄目じゃ……。あやつ、わしの全てを吸い尽しおった……」

魔力を奪われると、精霊は姿形まで幼児退行してしまうのだ。
レムラスは目を丸くして、タイガーを振り仰いだ。
神妙な顔つきで見下ろす虎男の背後に、ダムドラの後ろ姿が霞んでゆく。
大魔獣の食事による二次災害は、ウンディーネにとって甚大なものだった。

レムラス「もしかして、魔力を吸い取られた雨の魔王だったり……するのかな?」

タイガー「ふむふむ、間違いなく雨の魔王だろう」

ウンディーネ「その名で呼ぶな!」

レムラス「うわッ、こいつまだ結構元気だぞ」

タイガー「安心しろ、この状態では水鉄砲程度の魔法しか使えん」

ウンディーネ「バカを申せ! 弱体化はしたが、まだまだお主らを吹き飛ばせるほどの魔力なら残しておるわ!」

雨の魔王は自分にできる精一杯の『怖い顔』を演出してみせたが、少女が駄々をこねているようにしか見えなかった。

レムラス「タイガー、こいつどうする?」

タイガー「貴様の好きにしろ。俺は精霊になぞ、興味はない」

レムラス「そうだな……。じゃあ、村の井戸を元通りに戻してほしいな。水神様なら、それくらい訳ないでしょう?」

ウンディーネ「嫌じゃ! 人間共はわしの腕輪を壊したのだぞ! 許せるわけがなかろう!」
397名無しさん@おーぷん :2017/01/19(木)23:17:42 ID:c1U
のじゃロリキター
398冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/19(木)23:48:33 ID:uFZ
なかなかトハラ編が終わらなくて済みません(;´Д`A
終わったら色々と出てくるんで、お待ちを
399冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/23(月)00:07:13 ID:d9D
人間は勝手な生き物だ。
彼女はこの世に生を受けてから1000年間、そう硬く信じてきた。
豪華な祭壇を建て、大仰な儀式を行うくせ、いざ恩恵が得られなければ親の仇のごとく辛辣に責め立てる。
森が焼けたり川が枯れるのもお構いなく、ニョキニョキ土筆のように家を建てまくる。
本当に人間は勝手な生き物だ。世界が自分中心に回るものだと勘違いをしている。
そして今、眼前にいる少年も太陽のように朗らかな笑顔で、グイグイ無理強いをしてくるのだ。

レムラス「たかが腕輪を壊されたくらい、後でどうにでもなるよ。それより、井戸の方を早く頼む」

ウンディーネ「い、嫌じゃ!」

レムラス「君が暴れたせいで、沢山の人が死活問題に直面しているんだぞ。水がなければ何もできないからね」

言葉だけなら柔らかいが、剣を彼女の喉元に当てながら喋るので、ウンディーネは内心かなり冷や汗を垂らしていた。
ここは一旦従う振りをして、あたかも井戸の復活呪文を唱えたように思わせるしかあるまい。
自分や湖にとって重要な腕輪を壊した人間のために、残り少ない魔力を浪費したくはなかったのだ。
ウンディーネは両手の平を合わせて、ごもごも適当な呪文を唱えた。

ウンディーネ「ぶつぶつぶつ……。ほれ、終わったぞ。今頃、村の井戸から溢れんばかりの水が噴き出しとるはずじゃ」

レムラス「よし、じゃあ一緒に見に行こうか!」

ウンディーネ「えッ!? あッちょ、それは……」

レムラス「それは? どうしたのだい?」

ウンディーネ「いや……何でもないわい!」

レムラスとタイガーが踵を返した瞬間を狙って、ウンディーネはこっそり十字を切り、復活の呪文を唱えたのだった。
400冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/23(月)00:08:03 ID:d9D
村の通りに入ると、赤いブリーフを履いた坊主頭の男が巨体を揺らし駆けてきた。
ハーゲル王国の第三皇子、クナラズ・D・ハーゲルである。
同伴者のレムラスがいないことを聞き、いざ救出せんと出発の準備をしていたのだ。
手の甲で額の汗をぬぐい、虎男と青い髪の少女を連れて帰還した勇者に手を差し伸べる。

クナラズ「よくぞ帰った。今、荷物をまとめて出発しようとしたところだ」

レムラス「ご心配をおかけして申し訳ございません。レムラス・アクエリア。ただ今戻りました」

クナラズ「怪我がないなら十分だ。それより、鳥人族の娘がお前を血眼になって探していたぞ」

レムラス「アグサがですか? しまった……朝までに戻るって約束してたんだった」

ウンディーネ「おい」

レムラスのズボンの裾を引っ張る少女に、クナラズも気づいたようだった。
それは何者か、と怪訝な顔つきで誰何する。
レムラスは精霊の湖であったことを、始めから終わりまで包み隠さず話した。

クナラズ「井戸のことは問題ない。急に村中の枯れた井戸から新鮮な水が湧き出して、みんなお祭り状態だからな」

ウンディーネ「えっへん、わしは1000年以上も生きてきた大精霊なのだぞ! 思い知ったか、その力!」

クナラズ「しかし、水の大精霊まで太刀打ちできぬとは……。デビルタームよりダムドラという魔族の方が気になる」

彼は一本も毛のない頭を撫でると、レムラスとウンディーネに席を外すよう顎で示した。
ダムドラについて、関わりの深そうな虎男とじっくり話したいというのである。

クナラズ「ちょっとお時間を割いて頂いても構わぬか、タイガー殿」

タイガー「話は移動しながらしよう。ダムドラが湖付近にいると知った以上、一刻も早く討ちに行かねば」
401冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/23(月)14:14:11 ID:d9D
クナラズは挙兵のため
タイガーは記憶の片隅に住む少女のため
それぞれの思惑が絡まり、周囲を巻き込みながらデビルターム決戦へ突き進みます
ハゲ皇子達は果たして、大陸西部に一大勢力を築き上げることができるのかー
402冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/26(木)23:27:43 ID:KPV
レムラスは人混みに入りつつ、アグサを探していた。

レムラス「アグサ、絶対怒ってるよなー。悪いのは僕だけど、拳骨だけは嫌だなー」

ウンディーネ「アグサとは誰じゃ?」

レムラス「僕と一緒に旅をしてる女の子。鳥人族は温厚なはずなのに、あの子とっても気が強いんだ」

ウンディーネ「そうか尻に敷かれてるわけじゃな。色々と面倒そうじゃ。ちょい部屋を借りるぞ」

レムラス「は?」

少女の身体が泡のように四散し、レムラスの剣へ吸い込まれていった。焦って鞘から剣を引き抜くと、仄かな蒼白い煌めきが月光のように手元を照らし出した。精霊が憑依した証として、彼の刀は水属性の魔力をまとったのである。

レムラス「なんだこれ……」

ウンディーネ「ムフフ、驚いたじゃろう。お主の剣に取り憑いたぞ。暫くはここを仮寝の宿とさせてもらうわ」

レムラス「仮寝の宿だって?」

ウンディーネ「うむ。元の力を取り戻すまで、お主と行動することを決めた。ま、簡単に言えば試用期間みたいなものじゃな」

ウンディーネ「しっかし汚い剣じゃのう。手入れしてるのか? あちこちにガタが来ておるぞ。不快じゃ不快じゃ!」

レムラス「贅沢言うなよ、腕のいい鍛冶師がいないんだから」

???「ほう……腕のいい鍛冶師、か……」
403冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/26(木)23:29:50 ID:KPV
隣から風采の上がらない格好をした青年が、ズイッと顔を突き出してきた。眼の下にくっきりと影のような隈があり、肌は白く、短く切り揃えた黒髪にはフケが積もっている。見るからに怪しい。長い冬眠を終えて洞窟から出てきた熊のような、ともかく良い印象ではない。

レムラス「鍛冶師について、何か知っているのかい?」

ソルティドッグ「この私、『狂気に満ちた暗黒錬金術師(マッドネスダークアルケミスト)』。耳にしたことくらいあるだろう?」
レムラス「いいえ、知りません」

ソルティドッグ「お? 知らんのか? フッ……これだから『愚者(ザ・フール)』は面倒なのだよ。また最初から説明せねばならん」

時はアディスト暦546年、北の覇権を握るパーデクト帝国に一人の珠のように美しい皇子が生まれた。
名をソルティドッグ。パーデクト語で『神の恩寵を受けし聖人の御子』の意。凄まじい美少年。知能指数は5000。
動植物に名前を付けるのが好きで、最近の自信作は路傍のタンポポにつけた『灼熱の獅子男爵(ヒートダンデライオン)」。
あまりに顔面が美しく、その衝撃波で世界一高いロルッソティプラン山を木っ端微塵に破壊したことがある。
生まれた時に立ち上がり天を指差して『天にまします我らが神よ、その御力を我に授けよ』と斜に構えながら呟いた。
全世界の富を一身に受けた彼は14歳の時、この世が無常であることを悟り、家を出奔する。
顔から流れ出る汗によって、枯れ果てた不毛の荒野は緑の大地へと蘇り、花々は咲き乱れ、美女は歓喜乱舞した。
どうやらソルティドッグ、体内から分泌される汗に生命を復活させるほどのイケメン成分が含まれているらしい。
このエキスでたぶらかした王女は数知れない。北はゾルォディエ帝国から南はボンボロポンポン族の娘まで……。

ウンディーネ「パーデクト? ボンボン? そんな国は見たことも聞いたこともないのじゃが」

レムラス「なかなか珍妙な人だね、この人」

いきなり現れた変人の身の上話を、二人は華麗に受け流した。触れてはいけなかった人のようだ。この場から速やかに立ち去らなければなるまい。
404冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/26(木)23:38:06 ID:KPV
そろそろデカい休みが来るし、ガチろうと思う
まだ前編すら終わってないのは流石にヤバい
405名無しさん@おーぷん :2017/01/27(金)02:45:18 ID:YoT
おう、がんばえ
406名無しさん@おーぷん :2017/01/28(土)02:27:50 ID:YHq
投稿するんだよあくしろよ
407名無しさん@おーぷん :2017/01/28(土)14:46:08 ID:EVp
待ってやれよ…
408冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/28(土)21:40:45 ID:Fc1
くねくね蛇のようにまとわりつくソルティドッグを振り払い、レムラスは人混みの中を走り出した。剣の研磨を頼んで、その見返りとして変な宗教団体に勧誘されるかもしれない。
その日は井戸が復活したので、多くの村人が表へ繰り出し騒ぎ立てていた。
喧騒に紛れるのは造作もないことである。
しばらく歩いて村の終わりに近づいた頃。
見えない壁にぶつかったかのように、レムラスはいきなり足を止めた。いそいそと家の陰に身を隠す。半分、顔を覗かせる。

レムラス「アグサ……何をやっているんだ?」

集落から少し離れた砂丘、その頂上に一人の娘が立っている。アグサ・シュテルツェだ。
アグサは両手に、黒い指貫グローブをはめている最中だった。息を大きく吸い込み、吐く。
一陣の風、巻き上がる砂塵。
彼女の身体がふわりと羽毛の如く軽やかに浮き上がった。勢いよく羽ばたく背中の翼。
同時に凍てつくような冷気が四方へ解き放たれる。彼女の周囲に広がる砂地は、一瞬で真っ白い氷の絨毯と化した。
螺旋を描いて空中へ急上昇したアグサは、再び翼を激しく動かした。羽根が舞い散る。アグサが指を地上へ向け、発射の合図を下す。
宙を舞う羽根は鋼のように硬く鋭さを増し、地上へと降り注いだ。まるで、何千本もの矢が織りなす集中豪雨だ。たちまち砂丘は、吹き飛んだ柔らかい砂の嵐で包まれた。

レムラス「本気だ、本気で怒ってるよ! 近寄ったら間違いなく殺られる……!」

ウンディーネ「逆じゃ」

レムラス「逆?」

ウンディーネ「殺気が感じられぬ。……あれは焦りと苛つきじゃな。早くお主を助けに行かねばと焦っておるのじゃよ」

レムラス「焦り……アグサが?」

ウンディーネ「うむ、まさかお主が殺されるとは思いもしなかったのじゃろう。それゆえ、あんな風に付け焼き刃の訓練をしとるわけじゃ」

レムラス「僕が殺された!? そんな訳ないだろう! 変なこと言うなよ!」

ウンディーネ「ほれ、とっとと行かんか」

レムラス「待って。その前に……」

両手を口元に当て、聞こえるように叫んだ。

レムラス「アグサ!」

少女の動きがピタリと、錆び付いた機械のように止まった。右に左に首を振り、声の飛んできた方向を躍起になって探している。
しかし結局、分からずじまいで肩を落とす。
レムラスはその姿がおかしくて、クスクス笑わずにいられなかった。強気な女が見せる弱々しい表情ほど、可愛らしいものはない。鞘を通して少女の呆れを含んだ声が聞こえる。

ウンディーネ「性格の悪い男は好かれぬぞ」

レムラス「分かってるよ。ちょっと遊んでみたかっただけだよ」
409冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/30(月)23:03:13 ID:JQg
レムラスは地上に舞い降りたアグサの背後へこっそり近寄ると、その両肩を思い切り叩いた。
短い悲鳴を挙げて飛び退くアグサ。
敵ではないことを知らせるため、レムラスは笑顔を作って挨拶した。

レムラス「ただいま!」

アグサ「レムラス!?」

レムラス「遅くなってごめんな。強い魔族と闘っていてさ。もう一人で出歩いたりしないよ」

アグサ「魔族と……!?」

アグサの目は一瞬だけ大きく見開かれたが、すぐに吊り上がってきつい光を帯びた。
固く握り締めた拳がレムラスの頭に飛んでくる。軽い衝撃と共に、鈍い痛みが脳天から顎まで突き抜けた。そこへアグサが一喝。

アグサ「このバカ! あたしがどれだけ心配したと思ってんのよ!」

アグサ「でも……」

ふと、アグサの表情が緩む。
眩しそうに目を細め、口元には微笑すら湛え、普段の乱暴な彼女からは想像もつかないほど柔らかい、麗らかな春の日差しのような顔つき。
さっきまで烈火の如き怒りを見せていた少女がいきなり菩薩となったので、鈍感なレムラスも流石に不審がり、その意を聞いてみる。

レムラス「でも? どうしたの?」

アグサ「ううん、何でもない。あのハゲ皇子には顔見せた? ちゃんと謝りなよ。迷惑かけて、すみませんでしたって」

レムラス「もう会ってきたよ。皇子様は今、タイガーと会談中だけどさ」

アグサ「タイガー? あの虎男も連れてきたの? アンタ、意外とやるじゃない。ほら、ハゲのとこ行くよ。早く来ないと置いてくからね!」

アグサは背中の翼を消すと、穴だらけの砂丘を駆け下っていった。一人取り残されたレムラス。腰に吊るした剣が不満げにぼやく。

ウンディーネ「なんじゃ、つまらんのう」

レムラス「つまらん? 何がだよ」

ウンディーネ「わしとしては、お主とあの女が喧嘩して殺し合うのが面白かったのじゃが」

ウンディーネ「あの女、よほどお主の生還が嬉しかったみたいじゃ。それが青臭い。質の低い恋愛小説を読まされているみたいでの」

レムラス「へー、やっぱり1000年も生きてると他人の人生にケチつけたくなるんだね。大精霊さまってのは」

ウンディーネ「長いこと同じ場所で生きるとな、退屈で死にそうになるんじゃよ。みんな見たことがあるものばっかり」

ウンディーネ「ハラハラドキドキする、スリリングな大戦争でも体験してみたいもんじゃ。あ〜あ、退屈退屈!」
410冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/01/30(月)23:16:31 ID:JQg
魔族と隗の国が同盟を組み、東西に分かれて戦線を敷く。
魔族が大陸中央のサンバドル村を侵略したら、隗軍が合流するまで待機。
連合軍で南のハーゲル国王都・ボルドノープルを一気に押し潰す。
主人公ハルシャの所属するハルシャ組を始め、LunaticやHarmoniaやスルメ倶楽部やバニー・レインボー
これらは全てサンバドル村を拠点として活動するギルドである。
さてさて、みんなどうなってしまうのか〜
トハラ編が終わったら、血みどろの攻防戦が始まります〜
ジャンジャン死にますので、覚悟してください〜
411名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)23:19:15 ID:R61
うんちしたいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
412名無しさん@おーぷん :2017/02/05(日)02:40:59 ID:Ox4
(´・ω・`)
413名無しさん@おーぷん :2017/02/05(日)13:58:12 ID:Y9g
まだ一週間じゃないか(´・ω・`)
414名無しさん@おーぷん :2017/02/05(日)15:11:09 ID:kfb
待とうぜ…(´-ω-`)
415名無しさん@おーぷん :2017/02/10(金)00:47:21 ID:5Zu
(´;ω;`)
416名無しさん@おーぷん :2017/02/10(金)20:43:29 ID:dy6
(´-ω-`)…
417冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/02/11(土)23:47:35 ID:8RS
明日、明後日あたりから再開予定です
極東編のキャラ設定が久々に投稿されていたので、それ頂きます
ありがとうございます
418名無しさん@おーぷん :2017/02/13(月)03:43:50 ID:eh3
待ってるぜ
419冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/02/13(月)22:40:11 ID:dy2
一方、クナラズとタイガーは漆喰の壁に寄りかかり話を進めていた。
タイガーは別に臣従を誓ったわけでなく、ダムドラの討伐協力という条件つきで行動を共にしているのだという。
てっきり将軍の座を受けてくれるのかと期待したが、ぬか喜びに終わってしまったようだ。
ふと、目を細めて踊り騒ぐ村人らを眺めていたタイガーが指をさしてきた。

タイガー「おい……誰かいるぞ」

小悪党のような雰囲気の青年が、揉み手をしながらクナラズの傍に佇んでいる。
目元を縁取る黒い隈、不健康そうな青白い顔、冬でもないのに粉雪の積もった黒髪。
吐く息は腐った牛乳の香りがする。腹の中に魔族やら何やら狩っているのであろうか。
普通の乞食にしては、あまりに怪しい。垂れた前髪の隙間から見える鋭い眼光も侮れぬ。
怪訝な表情でクナラズは口を開いた。

クナラズ「なんだお前は?」

ソルティドッグ「あなたのお友達、といったらどうします? クナラズ殿下……」

クナラズ「お前みたいな友人なぞ知らんが」

ソルティドッグ「まぁ、待ちたまえ。このソルティドッグ、必ずや殿下の役に立ってみせますぜ」

クナラズ「何ができる」

ソルティドッグ「殿下もご存知でしょうが、私は『狂気に満ちた暗黒錬金術師(マッドネスダークアルケミスト)』という異名を持っています」

ソルティドッグ「つまりですね、冥界の竜王より授かりし漆黒の業魔力で刀をにらぐのです。いや刀だけではありません。何でも作れますよ。ケヒッ」

ソルティドッグ「たとえば、そーですなぁ……。殿下、お仲間がたったの三人だけでは心許ないでしょう。私が来たからにはご安心を。ざっと戦士を工面して参ります」

丸まった背を向けて、汚らしい風体の青年は往来へと消えていった。
そして十数分後、クナラズとタイガーの前に屈強な男達を山ほど連れて悠々と凱旋してきたのである。

ソルティドッグ「こいつら、腕っぷしは強いですが戦い方を知りません。どうです、私にごろつき共の調練を任せてはくださいませんかね」

人手不足に悩んでいた皇子は、頷かざるを得なかった。
420名無しさん@おーぷん :2017/02/14(火)02:22:44 ID:oib
どう考えても怪しいのに頷かざるを得ないのか…(困惑)
421冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/02/14(火)22:18:51 ID:OhN
焼けつくような砂の大海、渡るは背に利口な猿を乗せたラクダ数十頭。
前をゆく者がつけた足跡をひたすら辿り、絶滅寸前のモール族を求めて練り歩く。湿気がないので汗はかかない。ただ、吸い込む空気が嫌というほど熱い。
砂も若干混じっており、おちおち深呼吸などできやしない。

レムラス「殿下、僕はあなたの判断を否定しているわけじゃない。けれど、もう少し他に選択肢はなかったのですか?」

クナラズ「ないぞ」

レムラス「はぁ……」

村を出発してから数時間、早くもレムラスは音を上げていた。
彼が不平不満を漏らしているのはもちろん、ソルティドッグについてである。
意味不明な言葉を吐きながらまとわりついてきた変質者を隊列に加えるとは何事か。彼一人だけならまだしも、兵法の何たるやも知らぬ愉快なごろつき達まで雇うなど言語道断。
しかしクナラズ皇子の決断なので、渋々レムラスもソルティドッグを仲間として迎え入れるしかなかった。レムラスはラクダの歩みを緩め、飄々と鼻をほじる浮浪者に並んだ。

レムラス「おい、君!」

ソルティドッグ「吹きすさぶ熱風にまぎれ、シルフの囁きが聞こえる。はて、どうしたものか。私もついに神聴者(ゴッドリスナー)としての資格を……」

レムラス「こっちだよ! おい、どこを見ているんだ!」

ソルティドッグ「フッ、レムラス氏……。そこにいたのだね」

レムラス「君は実に珍妙な男だねぇ! 皇子が君を騎士団長として雇った理由が分からんよ!」

ソルティドッグ「語るまでもない、私が有能だからだ。皇子は人の能力を見抜く目がある。能ある鷹の爪を引っぺがす力がある」

ウンディーネ「お主が有能とはとても思えんがのう。現に連れてきた者はごろつきばかりではないか」

レムラスの帯剣から少女が亀のように首を突き出してきた。
青い髪の先から水がとめどなく滴り落ちている。魔力を吸われたとて、元は水の大精霊。
完全に力を失ったわけではないのだ。

ソルティドッグ「私は有能であるがゆえ、モール族の集落へ着くまでに彼らを超一流の『血に飢えし地獄の番犬(ブラッドケルベロス)』に育て上げてみせるよ」

アグサ「だっさ」
422名無しさん@おーぷん :2017/02/26(日)00:07:39 ID:Zkr
(´・ω・`)まだかな?
423名無しさん@おーぷん :2017/02/26(日)12:00:10 ID:vJT
(´-ω-`)…
424名無しさん@おーぷん :2017/02/26(日)13:02:00 ID:l4N
この作者vipでは小説スレとかでわりとよく見かけるから忙しいわけじゃなさそう
あんまり言いたくないけどぶっちゃけもう半分このスレどうでもいいと思ってんじゃない
じゃなきゃやりかけのこのスレほっといてvipで駄弁ってる意味がわからない
425名無しさん@おーぷん :2017/02/26(日)19:09:18 ID:gYf
ぶっちゃけ自分で作ったキャラならまだしも他人が作ったキャラを大量に使う必要がある時点で難しいからな
作り込まれてるのも多いし
426名無しさん@おーぷん :2017/03/04(土)20:11:12 ID:OaR
(´-ω-`)…
427名無しさん@おーぷん :2017/03/07(火)03:05:48 ID:S7I
キャラ全員登場とか無茶なことしなくていいから完走してほしい(切実)
428冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/07(火)23:11:31 ID:dxb
遅くなりました(>_<)
429冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/07(火)23:11:40 ID:dxb
アグサの言葉を受けてなお、ソルティドッグは口元に歪んだ笑みを浮かべていた。どんなに見苦しかろうが構わない。ここでのし上がらなくては、一生あの粗末な粘土小屋でみすぼらしい生活をせねばならぬ。

ソルティドッグ「せっかく、神が私に与し給うたのだ。無駄にしては、あまりに無礼極まる」

独りごちるソルティドッグのそばに、アグサが氷剣を携えラクダを寄せてきた。

アグサ「そうね、なら天に恵まれた魔力の腕前、とくと拝見させてもらおうかしら」

ソルティドッグ「おっと? ひょっとして『闘る(やる)』おつもり? 暗黒錬金術師として各国で名を馳せた、この私と?」

タイガー「待て」

ラクダの足が一斉に止まった。最前列にいるタイガーが耳をヒクヒクと動かし、微妙な空気の揺れを感知する。

タイガー「空気が小刻みに震えている。おそらく、小隊が簡易的な拠点を築いているのだろう。煙の匂いも若干するな」

クナラズ「ならば早く焚火の場所まで行って、物資の補給なり共有なり……」

だからこそだ、とタイガーは逸るクナラズをじろりと睨みつけた。休憩中の勢力が必ずしも味方であるとは限らない。
真正面から突っ込んでいくなど、下の下策。最悪、全滅もあり得る。

タイガー「みな、ラクダを降りろ。なるべく音を立てるな。先に俺が様子を見に行く。それからアグサ、貴様は俺と共に来い。もしもの場合だが、やってもらいたいことがある」

アグサ「え? どうしてウチまで」

タイガー「貴様にしかできないことだ。いいからついてこい。クナラズ皇子、他の兵を頼む」
430冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/07(火)23:37:36 ID:dxb
アグサ「これって……」

タイガー「やはり、魔族の拠点であったよ。武装解除して呑気に近づいていたら、間違いなく全員殺されていた」

タイガーの予想は的中した。巨大白蟻デビルタームの一隊が、焚火を囲んで飲めや歌えやの宴会に興じていたのである。剣と盾を装備したタームソルジャーが50匹。長い鉄槍を小脇に抱えた、タームバトラーの姿も見受けられる。

タイガー「女王蟻の護衛がわざわざ出向くということは、よほど重要な拠点か任務のようだ」

アグサ「ねぇ、あれ見て!」

松明を持った白蟻が、黒い瞳を磨き切った宝石のように輝かせ、塵の一つも逃さぬと周囲を見渡している。櫓は四つ。監視塔同士を線で結べば、正方形の敷地ができあがる。

タイガー「貴様の魔法で凍らせろ。撃ち殺したり櫓を壊してはならん。あくまで、対象の凍結のみに集中するのだ。可能ならば頭から凍らせてゆけ。叫び声を挙げられては厄介だ」

そのために自分を連れてきたのか。臆病というか、用意周到というか。アグサは半ば呆れながら、手中に空色の光を生成した。溢れているのは、雪の結晶であろう。まともに喰らえば、凍結は免れない。

アグサ「はぁ……注文の多い虎だこと。いいよ、やったげるから離れて」

アグサは掌を一番近い監視兵の頭へ向けた。
魔力の矢が弧を描いて飛び、標的の頭に着弾した。
たちまち冷気のベールに全身を包まれる監視兵。
醜い氷像が完成した。美術展に出品しても、一部の魔族マニアしか目を向けないだろう。

タイガー「よし、次だ。四つの櫓を全て無力化しろ」
431冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/08(水)00:01:34 ID:AwB
1ヶ月近くも空けてたのか
ヤバス
明日からガチる(>_<)
432冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/08(水)23:28:08 ID:AwB
アグサは時計回りに見張り兵を仕留めていった。霧のおかげで、ある程度近づいても愚かな白蟻兵達はアグサの存在に全く気づかない。
以前、トハラのマニ車で戦った時は苦戦させられたが、意外と扱い易い相手なのかもしれない。前髪を掻き上げ、じっと機をうかがう。

レムラス「何をそんなに張り詰めてるの」

いきなり肩を掴まれ、アグサは全身の肌が粟立つのを感じた。レムラス・アクエリア。この男は、もう少しマシな声のかけ方を知らないのだろうか。彼の頭を軽くはたき、静かにするよう叱りつける。すると、レムラスの隣に腰を下ろした者がある。

ソルティドッグ「やれやれ、隠密行動は終いだというに。周りをよく見て発言しようね」

アグサ「あんたら、いつから……」

レムラス「タイガーに呼ばれたんだ。もう来てもいいってさ」

ソルティドッグ「あなたの役目は終わった。大人しく後ろで我らの勇姿を眺めているがいい」

アグサ「ソルティドッグ、それ何よ?」

彼は錫メッキの施された鍋を手にしていた。ソルティドッグだけではない、彼の連れてきたごろつき共まで装備済みだ。荒くれ者の軍隊はパラパラと散らばり、白蟻の拠点を囲い込んだ。だが、万全の状態とは言い難い。何しろ数に差があり過ぎる。倍以上もある敵に、どう立ち向かうのだろう。
しばらくして、ソルティドッグが指を口に当てた。甲高い警笛が空気を切り裂く。

ソルティドッグ「鳴らせ!」

号令が終わらない内に、ガランガランと岩を砕くような音が響き渡った。突然の奇襲に白蟻兵はあたふたと走り回っている。冷静なタームバトラーさえ、迂闊に武器を振るえなかった。
視界の悪さに加え、包囲されているという不利な状況。反響する鍋の音で、大軍の襲撃を受けたのかと錯覚してしまう。

ソルティドッグ「血に飢えし狼達よ、哀れな仔羊を一網打尽にせよ!」

アグサ「いや、あれ蟻だから! 羊じゃないから!」

レムラス「いくよ、ウンディーネ! 援護頼むぜ!」

ウンディーネ「はあ!? わしは無駄な争いなどしたくないわー!」
433名無しさん@おーぷん :2017/03/08(水)23:40:17 ID:GLc
(´-ω-`)ゞ
434冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/09(木)00:14:54 ID:EmK
クナラズ皇子の投げた槍がタームソルジャーの頭部を貫いた。
白蟻の頭は水風船のように弾け飛び、緑色に光る体液を地面にぶちまけた。
クナラズは素早く槍を引き抜くと、背後から剣を振りかざし跳びかかってきた三匹のタームソルジャーを、一気に薙ぎ払った。
首が宙を舞い、新緑の雨が降る。豪傑無双とは、よく言ったものである。

レムラス「やるなぁ、皇子様! ただの温室育ちってわけじゃないんですね」

クナラズ「最初はしくじったが、動きに慣れてしまえばこちらのものよ。レムラス、今が武功の稼ぎ時だぞ。荒くれ共に負けるな」

乱戦状態となった。慌てふためく魔族軍は互いを敵と勘違いし、相打ちを始めた。
ソルティドッグの指示により、ごろつき達は三人一組で強力なタームバトラーを仕留めていった。
勿論、レムラスやアグサも負けてはいない。

ごろつきA「おい、あの女ヤベェぞ。どんなカラクリ使ってるか知らねぇが、手も触れずにでっかい氷の塊を振り回してやがる。あれじゃ、オレらも近寄れねーや……」

ごろつきB「いやいや、あっちの茶髪のガキもヤベェ。濁流に乗って蟻共を蹴散らしてんだぞ。どっから水を引いてんだ……不気味ったらありゃしねぇ」

しかし、クナラズ軍は徐々に押されていった。敵が一向に減る気配を見せないのである。逆に、増えている。
一匹殺すと二、三匹の新たな兵が地中より湧き出る。
そんな非現実的な理論でない限り、この不可思議な現象の説明がつかない。
一人、また一人と私兵は倒れていった。実戦経験の薄い寄せ集めの軍では、やはり無理があったのだ。

クナラズ「クッ……旗色が悪い」

タイガー「おそらく、地中に予備兵を隠していたのだろう。それも、特に強い精兵をだ。地上の軍が壊滅した時に備えてな……」

クナラズ「つまり、一杯食わされたということか」

タイガー「うむ……不覚だった。敵軍にも、頭の切れる奴がいるようだな」
435名無しさん@おーぷん :2017/03/15(水)01:54:17 ID:4Zx
デビルタームって二本足で歩いてるん?
436冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/15(水)07:59:10 ID:jT2
>>435
道具や武器を持っているので、六本ある脚のうち、後ろ四本で歩いているのではないかと
437名無しさん@おーぷん :2017/03/16(木)05:55:55 ID:RtT




こんな感じじゃないのかな?
438冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/16(木)08:37:58 ID:tAc
>>437
そうそう、こんな感じ……
てかもういたんかいw
439名無しさん@おーぷん :2017/03/16(木)08:47:55 ID:RtT
ロマサガ2のシロアリのモンスター
440名無しさん@おーぷん :2017/03/16(木)13:54:22 ID:ZVb
このスレにしか人いないっぽいね
441冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/25(土)22:53:18 ID:F7m
その時。
バババババ、と何かの破裂するような音が連続して聞こえた。同時に、頭上を巨大な影が凄まじい速さで飛び去っていく。
通り過ぎた『それ』は空中で鳥に似た身体を半回転させ、再びこちらへ向かってきた。
翼の下から小さな鉄塊が落ちてくる。興味を示した白蟻達がそれぞれの得物を突き出した瞬間、彼らは跡形もなく吹き飛んでいた。
新種の爆弾である。腹に爆弾を抱えた鳥はその後も、執拗に白蟻達を狙い続けた。
まるで、彼らに親兄弟を殺されその復讐を、煮え滾る憎悪を晴らすかのように。

クナラズ「誰かは知らんが、我々の手助けをしてくれているみたいだな。それッ、体勢を立て直せ! 我らは流れを掴んだぞ!」

クナラズ軍は息を吹き返し、勢いに乗ってデビルタームの拠点を一つ制圧したのだった。
勝鬨を挙げる兵の前に、謎の鳥は静かに舞い降りた。砂埃が巻き上がる。アグサは氷の剣先でレムラスをチョンチョン小突いた。

アグサ「動きを止めたみたいね。レムラス、あんたちょっと見てきなさいよ」

レムラス「だってさ……どうする? 精霊様」

ウンディーネ「面倒じゃな。断る」

レムラス「というわけで、僕らは無理です」

ウンディーネ「うむ」

アグサ「おい!」

アグサは立ち去ろうとするレムラスの右腕を掴んだ。一歩踏み出し、左腕も抱え込む。

アグサ「逃げる気?」

レムラス「ちょ……顔近いって」

二人の距離はキスもできるほど、縮まった。これほど近づけば、羞恥と興奮でどちらかの体温が火を噴くように上がってもおかしくない。
しかし、彼らの間は凍てついていた。
絶対に逃さない。強固な意志が冷気となり、アグサの全身から溢れ出しているからだ。距離が近づけば近づくほど体温が下がるとは、何とも皮肉なものである。

レムラス「分かった……。行くよ! 行くから手を離して! 身体が凍ってしまいそうだ!」
442名無しさん@おーぷん :2017/03/26(日)21:17:14 ID:iZq
更新嬉しいなぁ!!
443冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/26(日)21:42:25 ID:L63
トハラ編が全然終わらなくてすみませんね
色々とキャラを登場させなあかんし
444冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/03/27(月)12:17:43 ID:GTM
用語集追加
数百年前の戦争とか、色々とワケワカメにならんように
445名無しさん@おーぷん :2017/03/30(木)06:06:09 ID:2mS
(´-ω-`)ゞ
446冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/01(土)21:45:58 ID:Gyn
腰の鞘から剣ば抜くと、レムラスは警戒しながら近づいていったとよ。それはましゃしく、鳥と呼ぶに相応しか姿やったとよ。
鈍く光る流線型のフォルム。左っかわ右っかわについとる台形の鉄板は翼の役割ば果たすのやろうか。
頭部は水晶のごとく透き通っており、そん中に人形っちゃんうな物体が座っとるとよ。
小しゃな石ば拾い、投げつけてみるとよ。石と鋼がぶつかる乾いた音が響いたものの、反応はなか。
眠っとるのやろうか? それとも先ほどの攻撃で力ば使い果たしてしもうたとやろうか?
いずれにしぇよ、レムラスの考えとることは一つやったとよ。

ウンディーネ「こぎゃんに大きな物体、見たことも聞いたこともなかのう……」

レムラス「それ、僕も思ったたい。援護ばしてくれたからには味方ばいと信じたいけど、素性も分からなかし……」

ウンディーネ「人間共が使役しとる『キカイ』やろ。ばってんくしゃキカイは人の手が無ければ動かん。どっかに人間が潜んでいるはずや」

レムラス「ウンディーネ、頼む。頭の辺りに人影が見えたんばい」

ウンディーネ「お主も物好いとぉやな」

レムラスの足元から大量の水が溢れ出し、彼ば翼の上へ吹き飛ばしたとよ。
力の加減ば誤れば大惨事となる技、ジャンプでは届かいなかけん仕方なか。
滑らなかよう腰ばかがめて慎重に外板ばしゃるき、そろそろと覗き込む。
まるで、水飲み場へ来よる鹿が水中に天敵が潜んでいなかか確かめるごと。
そこにいたとは怪物ではなく、全身ば深緑色の服で包んばい奇人やったとよ。
特に頭は頑丈な丸い兜っちゃんうなもけんすっぽり覆ってあり、表情はおろか年齢や性別も分からなか。

レムラス「なんばいこいつ……ほんまに人間ばいか?」
447冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/01(土)21:46:27 ID:Gyn
博多弁バージョンばいとッ……!?
448冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/01(土)23:12:11 ID:Gyn
レムラスが恐る恐るガラスの窓ばつついた時、微かいな振動と共に窓が上へと持ち上がったとよ。
手も触れんでん、いきなり宝箱が開いたたいうな衝撃ばレムラスは受けたとよ。
たじろぐ彼ばキカイの中に居座る怪人はじっと見つめとったが、無言で右っかわ手ば差し伸べてきたとよ。
これは握手? いや、握手に見しぇかけた罠? 手ば掴んばい瞬間、引きずり込まれてどっかへ拉致しゃれてしまうかもしれなか。
ああ、傍らにアグサがいればどれほど心強かったろうとよ。レムラスは剣の柄ば握りしめたとよ。応えるごと、刀身が淡く光るとよ。

レムラス「クッ……」

ウンディーネ。
元が水の大精霊とはいえ、魔力のしゃばか幼女体では不安が残るとよ。
すると、展開は相手の方からやってきたとよ。
謎の怪人が今にも消え入りそうな声で呻いたけんあるとよ。

???「そこんお方。お手数やけど、うちば引き上げて貰えましぇんか。いえね、ドラゴンとの戦いで少々被弾しまして」

若い男の声やけん。

レムラス「ドラゴン?」

???「はい。うち、ドラゴンば狩って生活費ば稼いでいる者なけんすよ。普段なら容易く撃ち落としぇるけんすが、今日は相手が悪かった」

レムラス「相手?」

???「ええ。トハラで狩猟難易度が最高の星7に指定しゃれとる、魔竜デズモンドとよ。魔界から這い出すところば見つけたけん戦いば挑みたとたいが、自慢の精神攻撃でこん有様ばい」

男は兜ば脱いでみしぇたとよ。
短く切った黒髪と、笑った時に目尻に寄る三本の皺が特徴的な男やったとよ。
目、鼻、耳、口。顔のいたる場所に、血の流れた跡が残っとるとよ。
どうやら、怪人ではなしゃそうやけん。男の左っかわ腕ば肩に回しながら、レムラスは微笑んで聞いたとよ。

レムラス「クナラズ皇子のもとへあんたば連れて行きましょーたいとよ。竜の狩人、尊名ば教えてくれんね」

川上「川上太一。航空総隊直轄部隊、警戒航空隊司令……分かるけんか? 一等空佐は? いかがばい?」

レムラス「いや……失礼ながら。僕は無知なもけん」

川上「まぁ、偉い人ばいと思ってもらえればよかばい。あんイカした戦闘機ば操れる程度にはね」
449冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/01(土)23:18:20 ID:Gyn
標準語verはまとめる時に載しぇます
450名無しさん@おーぷん :2017/04/04(火)02:10:20 ID:BEl
燃料とか弾薬とかどうしてるのかね…?
451名無しさん@おーぷん :2017/04/04(火)02:13:24 ID:uCZ
博多弁で草生えた
452冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/06(木)01:13:17 ID:tES
今さらwikiの話なんだけど
オマサガに倣って登場人物欄に、登場済みニッコリ・死者アワアワ
というように絵文字で区別してみた
453名無しさん@おーぷん :2017/04/06(木)01:43:45 ID:HU4
アワアワ顔ワラタ
色がついてると見た目でもっとわかりやすいかもね
454名無しさん@おーぷん :2017/04/07(金)21:02:41 ID:pqH
滑走路の無いところに着陸するって、VTOL機かな?
455冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/10(月)23:04:24 ID:yWE
キャンプ場はデビルタームの体液で深緑色に染まっていた。
まるで、繁殖力の強い苔がここら一帯を埋め尽くしたようだった。
ソルティドッグはごろつき達を連れて櫓の上に避難しており、クナラズとタイガー、そしてアグサのみがその場に残っていた。
怪我人である川上を、綺麗な丸太に横たえる。彼は低く呻きながら右手の甲を額に乗せた。

レムラス「皇子、この方……川上さんがキカイで白蟻を撃ち殺していた勇者です」

クナラズ「奇怪な服を着ているが……異国の者か? 肌や目の色も我々と少し違う」

アグサ「おそらく、極東の人間ね。トハラ学院の極東概論Ⅱで、嫌というほど目にしてきた顔だから」

極東概論Ⅱ。トハラ学院魔法剣士科で最も退屈な講義だった。
掠れて何を話しているかよく分からない老教授の声。
後ろの席で勝手に麻痺系だの即死系だの危険な魔法を連発する不良達。
極東と言われても、あまりに遠すぎて現実味が湧かない。まるで絵本の中の世界だ。

アグサ「言葉は通じるの?」

レムラス「訛ってはいたけど、ちゃんとハゲ語を喋っていたよ。世界共通語だし、勉強済みだったんだろう」

川上「ああ……みなさん、どうも助けてくださりありがとうございます」

川上は身を起こすと、辺りを見渡して小さく会釈した。
ふらふらとよろめきながら、水の張った桶に近づいてゆく。
胸ポケットから白いハンカチを取り出し、水に浸す。顔についた血の汚れを落とすためだろう。
一通り彼の行動が終わったところで、クナラズが切り出した。

クナラズ「お前は一体誰だ? 先の爆撃も、お前がやったものなのか?」

川上「27世紀の日本」

クナラズ「ぬ?」

川上「そこから飛んできた航空自衛隊と言えば……信じて頂けますか?」
456冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/10(月)23:25:52 ID:yWE
クナラズは日本も航空自衛隊も知らなかった。
他の面々に目を向けても、みな首をかしげるばかり。
場の空気を察した川上は、手を振りながらからからと笑った。

川上「すみませんすみません、ただの冗談ですよ。私は極東から来ました、ドラゴン狩りの川上太一と申します」

クナラズ「ドラゴン狩り?」

タイガー「あの巨大なキカイに乗って、ドラゴンを撃墜するのだろう。そうやって生計を立てる者がいると聞いた」

魔竜デズモンドを追ってきたのだが、途中で白蟻の群れを見かけたのですぐさま助太刀に入った。
そう、川上はクナラズ達に話した。だが、レムラスは一人疑念を抱いていた。
彼が乗っていたキカイ。確かにレムラスもトハラでキカイを見たことはあるが、どれも樫と歯車を組み合わせて作ったお粗末なものだ。
デビルタームを一瞬で吹き飛ばす威力の火薬を抱え悠々と飛行する鋼鉄のキカイなど、ウンディーネの言葉通り見たことも聞いたこともない。
それとも、極東はトハラよりも文明が遥かに進んでいるのであろうか。
時代遅れは自分だけなのではないのだろうか。
考え込むレムラスを横目に、川上はポンッと手を打った。

川上「そうだ、あの人も助けないと」

レムラス「あの人?」

川上「はい。知人に腕のいい鍛冶屋がいるんです。名前はゲロマンk……おっと失礼、ゲロマンさんです」

レムラス「どうして口ごもったんだい? 素直にゲロマンコって言えばいいじゃない」

川上は肩をすくめて溜息をついた。

川上「本名で呼ぶと、二度と口をきいてもらえませんので。私は日頃から、必ずゲロマンあるいはコーさんと呼ぶよう心掛けているのです」
457冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/10(月)23:44:39 ID:yWE
アグサ「ゲロマンだけでも十分ひどいと思うんだけど。本当にそんなへんちくりんな名前の人がいるの?」

クナラズ「俄かには信じがたいな」

川上「ええ、いますとも。実は、もう私の戦闘機の後部座席に乗せてきたのです。彼は燃料となるケロシンを常備していますので」

川上が指差した先、戦闘機の後部座席にプルプルと怒りに震えこちらを凝視する髭面の男がいた。

レムラス「ヴェッ!」

アグサ「あーあ、やっちゃった。もう二度と口をきいてもらえないね、アンタ」

川上「いや、貴女も人のこと言えませんからね」

大柄な男は戦闘機の翼から飛び降りると、ズシンズシンと地面を踏み鳴らしながら歩いてきた。
両腕の筋肉は異常なほど隆起し、血管の筋がはっきり浮き出ている。
長い白髪を後ろに結わえ、口周りからもしゃもしゃ伸びた白い髭は、厚い胸板の上で綺麗に切り揃えられていた。
もはや将軍と称しても通用する。なぜ恵まれた肉体を持ちながら、鍛冶屋をやっているのか不思議でならない。
クナラズ達の心を見抜いたかのごとく、大柄な男は鼻を鳴らした。

ゲロマン「剣や鎧を鍛えるからこそ、己も鍛えねばならんのだ。それの何が悪い」

その後、彼は腕を組み雷のような声で一喝した。

ゲロマン「わしがゲロマンであるッ! 鍛冶屋じゃ!」

レムラス「な、なぁ……ゲロマンさん。本名で呼んだことは謝るよ。だからここは穏便に……」

ゲロマン「あ”あ”ッ!? なんだか、濡れネズミがキィキィ鳴いとるのう! どこかのう!」

レムラス「ひぃ!」
458冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/11(火)22:42:45 ID:gSZ
川上「性格は粗野ですが、彼の作る武器は一級品です。紙の如く鉄を斬り裂き、角砂糖のごとく岩を砕きます」

クナラズ「そこまで高品質の武具を作りながら、こう言っては失礼だが、なぜトハラでまったく有名ではないんだ?」

ゲロマン「わしは、真の武人の武器しか作らん。遊び半分で剣を持つ愚者にやる装備はない」

若い頃、ゲロマンは刀をにらぐことに命を懸けていた。
寝る間を惜しみ、目が真っ赤に染まっても手の皮が剥け血が滲んでも、彼は金槌を振るう手を止めなかった。
自分の武器がいつか、心技体の揃った豪傑と共に数多の戦場を駆け巡ると信じていたからだ。
しかし、注文してくるのは物好きな貴族や性根の腐った人斬りばかり。
年を経るにつれて燃え盛る炎のような赤い髪は白くなり、彼の情熱も冷めていった。
もう、他人のために仕事をするのはやめよう。
真の武人が目の前に現れるまで、金槌は封印しよう。
こうしてゲロマンは、武器を鍛えぬ鍛冶師となったのだ。

クナラズ「川上殿、ゲロマン殿。自己紹介が遅れましたな。私は第42代マハーラージャ・レイギャン王の末子、クナラズ・D・ハーゲル」

クナラズ「どんな事情があれ、お二人は素晴らしい人だ。もし我が軍に身を置いてもらえるなら、越したことはないのだが」

跪くクナラズを前に、川上とゲロマンは顔を見合わせた。
なんとも不思議な皇子である。どこの馬の骨とも知れぬ無頼漢を引き連れ、人材を得るためなら平民にさえ頭を下げるとは。
もう少し身分を弁えた行動をしてほしいと、逆に心配になるくらいだ。
川上は煙草の先を火につけると、煙を吐いて静かに答えた。

川上「協力したいのは山々ですが、二つ返事で激戦地へ参るわけにはゆきません」

川上の話によれば、戦闘機の燃料が残りわずかということらしい。
ジェット燃料ならゲロマンが持っているものの、ここでクナラズ達についてゆくと帰りの燃料が足りなくなる。
拠点のトハラまでギリギリ帰れる程度しか残っていないのだ。

川上「一度トハラに戻って十分な燃料を補給してから、戦闘に参加させていただきます」

ゲロマン「そういうことだ。これ以上の勧誘は無意味だぞ」

ゲロマンは川上のそばに腰を下ろすと、ポケットから乾燥肉を取り出し齧った。

クナラズ「承知した。また日を改めて、お二人の意思を伺うとしよう」

クナラズと川上は固い握手をし、再会を誓い合って別れたのだった。
459冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/11(火)22:44:51 ID:gSZ
マハーラージャの代が曖昧
キラメロが43代だった希ガス
460冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/11(火)23:01:41 ID:gSZ
レムラス「雨脚が強くなってきたな……。皇子様、どこか雨宿りできる場所を探しましょう」

クナラズ「ここから少し進んだ山に、モール族の集落があると聞いた。今夜はそこで泊まろう」

レムラス「へぇ〜、皇子様って見かけによらず準備がいいんですねぇ」

クナラズ「レムラス、口に気をつけろ」

山肌を削り取り作った狭い風穴の中に、彼らは身を寄せ合って暮らしていた。単なる風穴なので住居や集落と呼べる有様では到底なく、汚れた骨の残骸に埋まって眠る老人や、飢えをしのぐため雑草をちぎって食べる赤子など、見るに堪えない光景がそこにはあった。
ふと、先頭をゆくラクダの足が止まった。
アグサが手綱を引き、足を止めたのである。

タイガー「どうした、先頭が止まっては後列に響く。早くラクダを発進させろ」

アグサ「ウチ、モール族の集落には行かない。別の場所で休むよ」

神妙な面持ちで答えたアグサに、タイガーはやれやれと肩を竦めながら溜息をついた。

タイガー「そこまで貧しい場所に泊まるのが嫌か。鳥人族の娘。ま、トハラの飯は美味なゆえ舌が肥えるのも無理はないが」

アグサ「そうじゃなくて! 1日の食事にも困っていそうな集落なのに、20〜30人いるウチらが押しかけたら、迷惑じゃないのって思っただけ。それに、ソルティドッグが無頼漢を抑え込めるかも心配だわ」

ソルティドッグ「ややッ失敬な! 彼らは金さえ払えば私に従順です。そして私はいつか無頼漢を束ねることを夢見て、財産を貯蓄してきました。当分の間なら、彼らは暴れませんよ」

ソルティドッグが唾を飛ばして喚く間にも、アグサはラクダを降りて服についた砂をはたいていた。どうやら、決意は固いらしい。
タイガーは軽く舌打ちをして、忌々しげにアグサを睨みつけた。

タイガー「これは完全に軍の規律を乱す行為だ。一人の身勝手な行動で、全員が作戦失敗の憂き目を見ることもある」

タイガー「数百年前、聖剣クチュルクと魔族長テングリカガンとの間で全世界を巻き込む戦争があったことは、歴史の授業で学んでいるだろう。あの戦争でも、一人の兵士が用便で抜けていたばかりに、聖剣クチュルクを護送する作戦が失敗に終わったのだ」

タイガー「今は軍が小規模だから許すが、肝に銘じておけ。将来、貴様が将軍となった時に生き恥をかかぬようにな」

アグサ「分かった。じゃ、ウチそろそろ行くね」

クナラズやレムラスの制止も聞かず、アグサは翼を広げて霧雨の中を飛んでいった。
アグサを止められなかった。
タイガーは自分の将軍としての力量不足に苛立っていた。
461冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/11(火)23:09:51 ID:gSZ
陽が落ちた。辺りは宵闇に包まれた。
入口まで来ると、タイガーはラクダから降りる旨をクナラズ以下数十名に伝えた。そしてクナラズ皇子を先頭に据え、自分は最後尾に並んだ。クナラズの親征であると強調するためだ。
慎重に、警戒を払いながら中へ踏み込む。モール族も、勝手に縄張りに入ってこられて不快な思いをしているかもしれない。
いつ、どこから矢が飛んで来ても対応できるように身構える必要がある。
足元で骨の砕ける小さな音がした。栗鼠か兎か、はたまた羊の骨片か。
夜目が利かぬ以上、手探りで進むしかない。

クナラズ「いきなり訪問してすまない。決して怪しい者ではないのだ。私はハーゲル王国第42代マハーラージャ・レイギャン王の末子であるクナラズ・D・ハーゲル。諸君らを地下世界から追放した、巨大白蟻デビルタームの討伐に参った。可能ならば、話を聞かせて頂きたい」

暫くして、洞窟の壁にかけられたランプが一斉に、ぼんやりと輝き始めた。蝋燭に火を灯す程度だが、立派な火炎魔法だ。

タイガー「……フン」

しんがりを務めるタイガーは、何も言わず背中に提げた両刀を構えた。レムラスも刀身から水を滴らせ、鋭い切っ先を前へ向ける。
ごろつき達がクナラズを守るように、得物を手にして円陣形態へと移る。
クナラズ軍は包囲されていたのだ。
それも、白蟻に住処を奪われ弱り切ったはずのモール族によって。

レムラス「ソルティドッグ、これってどういう状況だい? なぜ僕らはモール族から刃を向けられなきゃならないんだ?」

ソルティドッグ「そうですなぁ……。とりあえず『ヤバい』とだけ述べておきましょう。今はとにかく、生き残ることだけを考えなさい」

激しくぶつかり合う殺気。既に戦いは始まったも同然であった。
胴長の身体を覆い尽くす、茶色の滑らかな体毛。
モール族の体毛は絨毯として使われるほど、毛の質感が良い。
しかし、今は殺気に満ち満ちて針のごとく鋭く尖っている。
互いの感情が爆発しそうになったその時。

モール族の長「おや、これはこれは。デビルタームかと思いましたら、クナラズ殿下ではございませんか」

奥の方から背の曲がったモール族の老個体が現れ、周りの兵に武器を下ろすよう伝えた。

モール族の長「何だって、草木も満足に生えぬ不毛の地へお越しになったのですか」

クナラズ「詳しい話は後にしよう。まず、この殺気立った兵を下げてほしい。それから十分な寝床と食糧、水を貰おうか。ラクダの面倒も見てやってくれ。雨晒しはあまりに可哀想だ」

無遠慮な物言いにレムラスはギョッとしたが、族長や兵士の身体つきを見て疑問は解消された。みな、丸々と太っていたのだ。

モール族の長「デビルタームが定期的に訪れるのです。我々モール族が力を蓄えていないか。豊かな暮らしをしていないか。それを欺くために、絶食のプロを入口に配置しとるわけですな。彼らも立派な兵隊なのですよ」

モール族の長「ささ、殿下。雨に打たれてさぞお身体も冷えておりましょう。温かい木の実スープを飲み、ゆっくりお休みくだされ」

クナラズ「うむ、そうしよう」
462名無しさん@おーぷん :2017/04/15(土)17:54:58 ID:bRh
更新ウレシイ…ウレシイ…
463冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/15(土)18:30:09 ID:pqk
>>462
トハラ編をさっさと終わらせて早く日常編に持ち込みます
そんでもって戦争
464冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/15(土)19:09:37 ID:pqk
族長はポガロと名乗った。海を隔てた極東と狂戦士族の島以外、全ての国に行ったことがあり、モール族独自の情報網を築き上げてきたという。
デビルタームの不穏な動きは以前から察知していたが、背後に潜む魔族長の影までは認識することができなかった。
ポガロは太い眉で隠れた目から大粒の悔し涙をこぼし、嗄れた声でそう語った。
ステテコパンツのゴムをいじくりながら、虎男が風穴の奥へいざなうポガロに質問する。

タイガー「ふむふむ……。つまり、デビルターム単独の力でなく魔族長の助力もあったと」

ポガロ「はい。魔族長の派遣した軍隊が強いのなんの。全身が金属でできていて、我々の爪や武器がまるで通用しないのです」

タイガー「それはメタルソルジャーという魔族だ。バイバルスのメンバーが時々狩っていたから分かる。連中に物理攻撃は効かんぞ」

ポガロ「で、ではどうすれば……」

タイガー「少し考えれば、いかようにも料理できる。炎で燃やすも氷で凍らせるも、誘導して崖に落としたり岩で潰すのもありだ」

『彼ら』も同じ戦法を取っていた。
それはタイガーが初めてトハラへ来た時の記憶。
疲れ果て動けなかった彼をかばい、圧倒的な魔法と知略でメタルソルジャーの堅牢な鎧を打ち砕いた戦士達。
何もかも失い絶望の淵に立たされていた自分に、手を差し伸べてくれた雌狼の獣人。
あの日から、新人として働き始めたあの日から、全ては始まっていたのだ。
自分がダムドラと再び戦うことは、運命づけられていたのだ。

クナラズ「どうした、足を止めて」

タイガー「ん? ああ、すまない。昔のことを思い出しただけだ」
465冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/21(金)09:32:39 ID:c1s
ダムドラという名を思い浮かべるたび、過去の記憶がじんわりとぼやけた輪郭ながらも滲んでくる。バイバルスと出会ったこと。命からがら大陸へ流れついたこと。そして、ダムドラに囚われている少女と過ごした日々のこと。
タイガーは全容を知りながらも、その記憶を心の奥底へしまい込んでいた。他人に話したところで、傷が癒えるわけでない。そもそも、自分は孤高の剣士を貫こうと決めたではないか。
しかし。

タイガー「クナラズ、アグサを呼んでこい」

クナラズ「ウム」

これからデビルタームと干戈を交えるにあたり、きっとダムドラとも出会うだろう。その時、自分は命を賭して少女ーー名をミズハというーーを救うに違いない。
ひとつ、話しておかなければ。自分が死んだ後、ミズハを頼める者がいるかどうか、確かめておかなければ。それゆえ、タイガーは皆を集めて、過去の記憶を語ることにしたのである。

レムラス「皇子様が赴くまでもありません。僕がササッと連れ戻してきます」

クナラズ「ああ……すまないな」

ごつごつとした壁によりかかりながら、タイガーは外へ駆けてゆくレムラスを眺めていた。まるで、かつての自分を重ねているように。
466冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/21(金)09:35:35 ID:c1s
ながら多過ぎた
死ぬ(~_~;)
467冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/22(土)01:18:55 ID:yH8
俺は投稿の鬼になる
いちはやくVIPに戻ってやる
468冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/24(月)23:06:03 ID:1cv
アグサは洞窟から少し離れた小高い丘の上で、一人膝を抱えて座っていた。
全員の前で啖呵を切った以上、今晩だけは死んでも合流する気はなかった。
しかし、身体は正直だ。無駄な強がりなど言っていられない。寒い。
ただでさえ気温が零度近くまで下がる大陸西部で、雨が土砂降りの中、半袖で野宿など自殺行為に等しい。
旅の疲れが溜まって錯乱状態にあるのではないか。そう噂されても返す言葉が見当たらぬ。
雨で濡れた小さな石が薄い服越しに尻に食い込み、アグサは舌打ちをしながら座る位置を変えた。

アグサ「何してるんだろ、ウチ」

アグサは顔を上げた。
とある考えが頭の中に浮かんだのだ。
辺りを見渡す。あるのは緑のない大地と白い靄だけ。好機。
誰もいない今なら、こっそりトハラに帰ることができるかもしれない。
立ち上がりかけたその時。

「なんだ、意外と近くにいたじゃん」

ふと、降り注ぐ雨が途絶えた。
真上を振り仰げば、骨子に獣の皮を張り付けただけの丸い傘が一つ。
そして自分の傍に茶髪の少年剣士が佇んでいるのだった。
アグサは再び舌打ちをして、ぼやくように呟いた。

アグサ「レムラス……どうして……」

レムラス「雨に打たれてたら風邪を引くと思ってさ」

アグサ「……別に来なくていいのに」

二人の間に沈黙が降りる。

レムラス「君はもっと、しっかりした人だと思ってたけどなぁ」

彼の何気ない一言が、胸の奥に突き刺さる。
悔しい。自分の判断が間違っていたような言い草だ。
アグサの気持ちを知ってか知らずか、レムラスの口調は普段よりも優しかった。

レムラス「ごめんよ、悲しませるつもりはなかった。さあ、洞窟へ戻ろう。君が心配していることは何もない」

レムラス「それとも、ここで一夜を明かすかい? だったら、僕も付き合うよ」

君の背中を守るのは僕だからね。レムラスはさも得意げに胸を張って剣を引き抜いた。
刀身がわずかに青く点滅している。水の大精霊とやらが抗議しているのだろうか。アグサに知る術はない。
469名無しさん@おーぷん :2017/04/27(木)03:13:07 ID:r8g
コイニハッテンシテ…
470ねこ :2017/04/27(木)05:49:40 ID:nZm
すげえ
折れずにまだ続いている
相変わらず文章うまい
471冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/27(木)10:17:55 ID:LC4
>>469
一級フラグ建築士
だが惚れた女には一途
それがレムラスだと思ふ

>>470
本当に一人だったらとっくに折れてるね
隣に同じようなスレがあるから、あっちよりも早く終わらせてやるって対抗心が生まれる
472名無しさん@おーぷん :2017/04/27(木)11:12:34 ID:fpf
もはやハルシャが空気な件
473冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/27(木)12:16:02 ID:LC4
>>472
トハラ編だからどうしても空気になる
474名無しさん@おーぷん :2017/04/29(土)13:40:09 ID:6cR
アグサはわしが育てた

(主要キャラになっててうれしい)
475名無しさん@おーぷん :2017/04/29(土)13:48:29 ID:6cR
最近板荒れてるけど此方に飛び火しないのを祈るばかりだ…
476冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/04/29(土)18:04:52 ID:RYt
>>474
愚痴をこぼしながらも、なんだかんだ変態の集団についていく
各々が暴走しないよう馭者の役目を果たすのがアグサ
とは言っても、今みたいに馭者が手綱を放って何処に走り出すケースもあるけど

>>475
飛び火はしないっしょ
別にそこまで喧嘩売ってないし
埋められても立てりゃいいの精神でやっとるから
477名無しさん@おーぷん :2017/05/06(土)02:44:49 ID:CZS
(´・ω・`)
478冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/06(土)21:12:08 ID:0px
アグサ「ねぇ、レムラス」

彼女は膝の間に顔をうずめて、傍らに立つ少年の名を呼んだ。その声は酷く嗄れていた。
まるで、悪魔が身体の中に入り込んで、勝手にアグサの本音を引きずり出しているような。
ポツンと口から飛び出した言葉。恐らく疲れによる愚痴なのだろうが、泣きごとや不満と言うにはあまりに重過ぎた。

アグサ「トハラに帰りたい」

やはり父母のことが気にかかる。トハラ学院の単位も取らねばならぬし、庭にある葡萄の世話もしなくては。場の空気に呑まれて旅立ちを決意したものの、冷静になれば愚かも愚か。
自分には平和な日常が向いている。先の分からない冒険など、もう沢山だ。

アグサ「安定した生活が欲しいの。アンタには分からないでしょうけど」

レムラス「……じゃあ聞くがね、その安定がずっと、それこそ君がヨボヨボの婆さんになるまで続くと思う? 僕は思わないな」

アグサ「どういうこと?」

レムラス「君もトハラのマニ車で戦っただろう? デビルタームの脅威はすぐそこまで来ている。張りぼての平和に酔う時間なんてない」

アグサ「アンタ……」

レムラス「前へ進むんだ。どんな苦難があっても、たとえ誰かを失ったとしても、最後まで走り続けるんだ。そして、きっと二人で仮初の日常を確かなものへと変えよう」

アグサ「アンタ……そんなキャラだっけ? 張りぼてガーとか仮初ガーとか。でも、ありがとう。ちょっとだけ元気が出た」

レムラス「そいつぁ良かったよ。まさに、一石二鳥ってやつだね」

アグサ「一石二鳥?」

レムラス「いや、少しね。アグサにも繊細な一面があるんだなぁと。いつも怒鳴ってばかりのがさつな女だからさ」

アグサ「なッ……! がさつ!?」

レムラス「こういうの見せられると困っちゃうよね。調子が狂うというか。まぁ、どっちも可愛いから強くは言えないんだけど」

アグサ「ねぇ、こっち向きなさいよ」

レムラス「ん? どうしたの? 野蛮な……」

直後、レムラスが氷の彫像にされたのは語るまでもない。
479冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)00:20:36 ID:JvB
一方、モール族の洞窟では。
魔獣の骨を削って作った丸い食卓を、クナラズ・タイガー・ポガロ・ソルティドッグの四名が囲んでいた。
ハーゲル王国の存在を知るポガロにとって、クナラズはまさに国賓。最上級のもてなしをせねばならぬ。
そういうわけで、四人の前には世界各地から取り寄せた山海の珍味が並べられている。
ソルティドッグは蒸したボンバーソーセージを齧りながら、低い天井を仰いでさぞ悲しそうに嘆いた。

ソルティドッグ「まったく、いつまで待たせる気だろう。神の声を聴く礼拝時刻(ワースィップ・タイム)が迫っているというのに」

クナラズ「黙って待て。探すのに手こずっているか、あるいは敵と交戦中なのかもしれん」

タイガー「ふむふむ、この雨なら進軍の物音も消すこともできよう。だが、『聡明な』女王がわざわざこんな収穫もなさそうな廃墟に足を運ぶと思うかね」

ソルティドッグ「Don't worry……心配御無用と。タイガー殿は戦の経験を多く積んでいらっしゃるようだ。もしや、ハーゲル王国の将軍?」

タイガー「それをこれから話すのだ。ヘラヘラと笑うな」

ソルティドッグ「ところでポガロ殿、その皿に盛ってあるべチョッとした……ネチョッとした……」

ポガロ「鯖缶ですね。脳味噌をくり抜いてそのまま乗せました。鮮度がある内にお食べください」

クナラズ「缶に脳味噌なんぞあるのか……やはり世界は広い」

暫くして、耳まで林檎のごとく赤らめたアグサが不機嫌な様子で入ってきた。レムラスの姿は見えない。
何があったか見当はつく。あのお調子者が、またアグサのことをからかったのだろう。
まだアグサもレムラスも戦士として、王に仕える者としての自覚が足りない。
クナラズは内心、残念そうに溜息をついた。

タイガー「レムラスはどうした」

アグサ「あんな奴、知らないッ」

タイガー「どうしたと聞いている」

アグサの熱も、虎男の無機質な瞳を見ると瞬時に冷めたようだった。
そっぽを向き、口を尖らせ、消え入りそうな声でボソボソ呟く。

アグサ「外で雨に打たれてるわよ。だって、あんまり失礼なことを言うんだもの……」

タイガー「持ってこい。一応、奴にも聞かせておきたい」

アグサ「聞かせるって、何を?」

タイガー「俺が理性を保つことのできる、唯一の狂戦士。ダムドラを狙う理由。ここまで来たからには、共に戦う貴様らにも伝えねばと思ってな」
480冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)00:21:51 ID:JvB
タイガーはLunaticのイーフィと同族だったわけですねー
481冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)00:38:31 ID:JvB
物語の流れ

【サンバドル編】
①ハルシャ(主人公)が魔族長に負けてサンバドル村に来る。
②スルメ倶楽部のハゲスルメマンとクラリスがLunaticの闇騎士を倒す。闇騎士、外法により竜化。
③ハルシャが教会にて、ジークとルーミアを倒し、仲間にする。ハルシャ組結成
④スルメ倶楽部が新種の魔族・ディグノーを討つ。クラリスを治療するため教会へ飛ぶ。
⑤ハインリヒ神父とミラが登場。神父は絶大な魔力でクラリスを治癒する。
⑥サンバドル村2位のHarmoniaリーダー・メリーシャが村1位ギルド・Lunaticの館へ招かれる。
⑦魔族長テングリカガン、バルド、ラグードと交戦。撃退。
⑧闘技場編。HarmoniaVSバニー・レインボー
⑨魔竜デズモンド乱入。ハルシャがおかしくなる。しかし、ニュウ・クースーにより精神攻撃から解放される
482冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)00:45:58 ID:JvB
【トハラ編】
①クナラズ・D・ハーゲルが国王からデビルターム掃討を命じられる。
②トハラ学院の生徒レムラスとアグサが、マニ車でクナラズと会う。デビルタームに襲撃されるも、タイガーの助力で討伐完了
③王宮では、Lunaticの長・武琉により長男ケトーメロ・D・ハーゲルが死亡。次男キラメロが即位。
④レムラスがタイガーは許されざる裏切り者であるとの文献をトハラ学院の図書室で発見。
⑤タイガーがミリカの木賃宿で占い師ゲイリーと出会う。
⑥レムラスがタイガーと共に精霊の湖でウンディーネと交戦。ダムドラと会う。
⑦クナラズ一行がモール族の洞窟に泊まる
483冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)00:46:42 ID:JvB
大まかに言うとこんな感じ
流れが訳わからん人用
484冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)15:32:00 ID:JvB
数百年も昔、まだギルドの概念がなかった頃。狂戦士族の島では、部族全体を揺るがす大事件が起こっていた。ムール王子の脱走である。
鬱蒼と茂る夜の森を駈けてゆく、二つの影。日に焼けた黒い長髪の男と、降り積もった新雪のような白い肌を持つ少女。

ムール「ミズハ、疲れてないか!?」

ミズハ「私は大丈夫です。でも、こんなことをしたら王子様の立場が……」

ムール「お前と添い遂げるためなら、掟なんかどうだっていい」

ミズハ「そんな……」

狂戦士族は純粋な戦闘民族だ。
強靭な肉体の秘訣が、遺伝子にあることを知っている。
蜘蛛の糸を束ねて鋼の如く頑丈にするように、彼らは近親相姦を繰り返し最強の武人を生み出して来たのだ。
それ故、異邦人との婚姻は許されない。村で唯一の掟であり、破った者には凄惨な死が与えられる。
たとえ、王族であろうとも。

ミズハ「狂戦士の島など、興味本位でも来なければよかった。来なければ、こんな苦しい思いをせず済んだのに……」

ミズハは、極東から来た行商人の娘だった。最初の挨拶でムール王子と対面した時、二人は一目見て互いに恋に落ちたのだ。急接近するムールとミズハを、周囲が快く感じるはずもなく。ついに『駆け落ち』という形で、ムールが嫌がるミズハを無理やり連れ出したのである。

ムール「もう少しだ、ミズハ。もう少しで浜辺に着く。粗末だが、丸太を削り作った舟があるんだ。それに乗って、大陸まで行こう」

ミズハ「すみません、お父様。私には王子様を止めることができません。不孝な娘を、どうか許してください」
485名無しさん@おーぷん :2017/05/08(月)19:24:27 ID:jf9
新編かな…?
どんなキャラだったか忘れてしまった
wiki見てくる
486冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/08(月)19:51:48 ID:4Td
>>485
残念ながら新編はまだ先
wikiでタイガーの項目を見れば、大体の流れは掴めると思う
487名無しさん@おーぷん :2017/05/09(火)17:57:02 ID:Z4z
ムール「あれだ!」

ムールが指差した先、浜辺から不自然に突き出た細長い桟橋に丸太舟は停めてあった。
激しく脚体に打ちつける波のせいで、今にもひっくり返りそうだ。ミズハは疑問を抱いた。
星が見えるので、嵐ではないはず。
だが、この波立ち具合はどうしたものか。
白い飛沫の放つ、言いようもないこの禍々しさは何なのか。ただの杞憂であれば良いのだが、ミズハは自分の勘に自信があった。

ムール「おい、気分悪くなったか?」

ミズハ「いえ、何でもないです……。今日はちょっと波が立ってるかなと」

ムール「そうだな……まぁいい。早く渡ってしまおう。さ、乗れ。俺が支えてやるから」

ミズハは緋袴の裾をたくし上げ、恐る恐る丸太舟に左脚を入れた。心臓が跳ねる。脂汗が額に滲み出る。掟を破った上に、駆け落ちまで。
想像を絶するほどの重圧や罪悪感に、彼女は押し潰されそうだった。

ムール「いいか、悪いのは俺だ。お前は悪くない。もし奴らがお前を殺そうとしたら、俺は全身全霊をかけて奴らを殺す」

彼の言う『奴ら』とは、もちろん狂戦士族のことだろう。自分が、内紛の火種となっている。
この世から消えてしまいたい。そう枕を濡らした夜は幾日あったろう。だが、自殺など無意味であることを、ミズハは知っていた。
そして何より、小刀で首を切り裂く勇気が彼女にはなかったのだ。
488冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/09(火)17:59:42 ID:Z4z
狂戦士族は裏切り者の存在を許さない
地の果てまで追いかけ、その目と耳に溶けた銅を流し込む
銅がなければ油を、油が無ければ湯を
湯がなければ素手で頭をかち割って、脳味噌を裏切り者の口に押し込みます
蛮族の中の蛮族
489冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/09(火)18:07:13 ID:Z4z
ちなみにミズハが生きた頃の極東は奈良時代をモデルにしてます
8世紀前半あたりですかね
御長谷やヤクルトあかり、ハゲ陰陽師の時代はそれから300年くらい後なので、11世紀あたりが舞台となります
ちょうど、平安時代の中期。前九年の役があったころ
490名無しさん@おーぷん :2017/05/10(水)01:36:36 ID:T89
んにゃぴ…
491冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/10(水)23:25:36 ID:nsx
ミズハを舳先側に座らせ自らも乗り込むと、ムールは舟を漕ぎ出した。
荒波の航海は不安が残るものの、浜辺に止まれば死あるのみ。
降り注ぐ月光が潮の匂いと混じり合い、海を渡る一組の男女を蒼く照らし出す。
出だしは上々、左へ流されつつも順調に舟は島から離れていく。

ムール「ハハハ、やったぞ! こんな島とはオサラバだ! 俺達は自由になった!」

両手に握りしめた櫂を振り上げ、歓喜の雄叫びをあげるムール。

ミズハ「あの、王子様……。やっぱり引き返しませんか? 海まで来て言うのも、遅すぎたかもしれないですけど……」

ムール「やめろ、王子様なんて。ムールでいい。むしろムールと呼べ。敬語もいらん」

ミズハ「……ムール、さま」

ムール「様はいらん! この分からず屋め」

せっかく夫婦水入らずの状況となったのだ。周りに気を遣うことはない。
そう何度もムールは言ったが、島に来てからずっと続けてきた丁寧語をいきなり変えるのは、ミズハにとって難しいものだった。
自分が自分でなくなったような、不思議な感じがする。

ムール「俺が連れださなかったら、お前の命は遅かれ早かれ尽きていた。奴らは異邦人を毛嫌いする。純血を穢す悪魔としてな」

ミズハ「えぇ……お父様と私には、みんな優しくしてくれたじゃない」

ムール「クスシ? よく分からんが、医者にゃ手は出せない。ただし、娘は別だ。いつか村総出でお前の家を襲い、身体中の穴という穴に溶けた銅を流し込もうと会議していた」

ミズハ「……」

ムール「だが、どうでもいいんだ。もう俺達は島に戻らん。暗い話をしても仕方がない。そうだ、お前の親父。親父の話が聞きたい」

ミズハ「私の話は聞きたくない?」

ムール「いや、まずは親父だ。いずれキョクトーへ挨拶にいく。親父の好きな物を予習しておけば、良い婿だと褒められる」

ミズハ「ふふ、変な人」

ミズハは袖で口元を隠し、クスクスと笑った。
492カラームチョ◆MUCHOjWTUI :2017/05/12(金)20:43:40 ID:ZBx
(`;ω;´)
493名無しさん@おーぷん :2017/05/19(金)05:17:30 ID:Sjs
待ってるよ
494冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/20(土)00:52:51 ID:9kL
すみません
サークル関係で投稿が少し遅れます
もうすぐ終わる、もうすぐ終わると言いながら一向に終わる気配を見せないトハラ編











もうすぐ終わります
そしたらハルシャ編に入ります
極東はだいぶ先になりそう
495名無しさん@おーぷん :2017/05/25(木)06:03:02 ID:2yk
(´-ω-`)
496冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/31(水)20:54:09 ID:FLb
しばらくなんでも実況VIPに活動拠点を移します
番外編でエグバート王国と魔族について書く予定です
本編の過去といった位置付けで見てもらえれば幸いです
もちろん、キャラ募集もします
よろしくお願いします
497名無しさん@おーぷん :2017/05/31(水)21:57:03 ID:OEx
リンクお願いしたいな
498冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/05/31(水)23:51:57 ID:FLb
6月上旬に始動予定
499冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2017/06/01(木)14:59:12 ID:QIj
番外編ってか聖剣戦争編始動
まだ大まかなプロットしか決まってない
本編も暇があれば進めます
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livevenus/1496296647/l50
500名無しさん@おーぷん :2017/06/05(月)23:56:40 ID:wVR
どっちも見てるから取り敢えず更新はやくうう!
501名無しさん@おーぷん :2017/06/07(水)06:07:08 ID:CZR
(´-ω-`)
502名無しさん@おーぷん :2017/06/28(水)09:04:59 ID:0Kl

503名無しさん@おーぷん :2017/06/28(水)17:58:40 ID:PH4

504名無しさん@おーぷん :2017/07/04(火)13:31:54 ID:W8G
(´-ω-`)
505名無しさん@おーぷん :2017/07/26(水)18:04:54 ID:cNa

506名無しさん@おーぷん :2017/08/16(水)20:40:14 ID:eQq

507名無しさん@おーぷん :2017/08/29(火)23:58:28 ID:weD
Ho
508名無しさん@おーぷん :2017/09/01(金)01:36:24 ID:rT8
mo
509名無しさん@おーぷん :2017/09/14(木)18:53:15 ID:iDW
(´-ω-`)
510名無しさん@おーぷん :2017/09/28(木)00:22:43 ID:OlK
a
511名無しさん@おーぷん :2017/12/16(土)07:53:32 ID:OQ1
未完(´-ω-`)…
512名無しさん@おーぷん :2018/05/24(木)06:56:55 ID:H6T
エタったんか
513名無しさん@おーぷん :2018/05/29(火)16:22:18 ID:wxv
生きてるか?>>1
514冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2018/05/31(木)23:15:47 ID:3i0
生きてます
515名無しさん@おーぷん :2018/06/01(金)08:01:47 ID:ZLs
続きは期待してええんか?
516冒頓単于◆XuHlfjDjx0ab :2018/06/01(金)08:09:36 ID:Msd
就活期間に入ったので忙しくなりますが
続けていきたいと思います
517名無しさん@おーぷん :2018/06/26(火)21:55:16 ID:0IS
せめて生存報告くらいは……
518名無しさん@おーぷん :2018/07/01(日)20:48:56 ID:7zn

519名無しさん@おーぷん :2018/08/05(日)08:22:03 ID:Bas


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