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女が土の中に埋まってた

1名無しさん@おーぷん:2014/12/14(日)02:49:54 ID:NgK()
女は目を開いたが、目の前の景色は相変わらず真っ暗だった。
口の中に広がる土の味で自分が土の中にいると知った。
何とかもがいて地上に出ると、一面に海が広がった。
夕日の中で自分の体を見ると、服を着ていないことに気づいたが、
それ以上にへその隣にある親指くらいの大きさの穴のほうが彼女の関心を引いた。
69名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:34:38 ID:NgK()
「 その女は化け物…」
切り際に物騒な言葉が聞こえたが、
フゴーは平静を装った。
70名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:34:55 ID:NgK()
「 誰からですか?」
ソーマは心配そうに眉を寄せながら訊いた。
「 ただの間違い電話だ。
よくあること、対応も慣れたもんだよ。」
71名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:35:28 ID:NgK()
そう笑いながらフゴーは答えたが、
ソーマは彼が嘘をつく時に慣れてると言う癖も知っていた。
しかし。彼が心配させないようにと言っているのだから、
それ以上は訊かないようにした。
72名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:35:55 ID:NgK()
家に帰り、フゴーは1人で今日の昼のことを考えていた。
「(確かに、俺は俺と出会う前のソーマを知らない。
だが、そんなことはどうでもいいはずだ。
俺は今のソーマを愛している。例えどんな過去があっても。)」
73名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:36:30 ID:NgK()
そう考えながら、頭の中では化け物という言葉が渦を巻いていた。
出会った頃に彼女に空いていた穴は完全に塞がり跡形も無くなっていた。
74名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:37:02 ID:NgK()
最後のタバコを取り出し、煙を燻らせながら、フゴーは考えるのをやめた。
「(わからないことは、わからない。)」
そう自分に言い聞かせると、フゴーは立ち上がってソーマに話しかけた。
「 タバコを買ってくるが、何か欲しいものはあるか?」
75名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:37:20 ID:NgK()
ソーマはコーラが飲みたいと言ってスーツの上着を彼にかけた。
「夜はまだ冷えるから、風邪ひかないでね。」
笑いながらそう言う彼女は、フゴーにとってやはり大切な存在だった。
76名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:37:51 ID:NgK()
ライターの火打石を手持ち無沙汰に回しながら、
近くのコンビニまで歩いていく途中、
フゴーは背後に迫る足音に気づいた。
77名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:38:25 ID:NgK()
少し。
また、少しと足音は近づく。
フゴーは危険を感じ、走り出した。
しかし、背後の男の方が数段速かった。
頭を掴まれ、フゴーは地面に抑えられた。
78名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:38:54 ID:NgK()
「 俺は豹より速く走るぜ。」
細身にスーツ姿の男がフルフェイス越しに軽い口調で言った。
79名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:39:33 ID:NgK()
「 お前は誰だ?」
「俺はフィジック。
名前なんてどうでもいいんだけどな。」
「何が目的だ?金なら持っていけ。」
「金なんてどうでもいいんだよ。
それよりお前一緒に住んでる女。
あいつは化け物だぜ。」
80名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:40:09 ID:NgK()
フゴーは瞬発力といい、押さえつける力といい、
お前も十分化け物だと、言ってやりたかったが、
昼にかかってきた電話のことが脳裏によぎった。
81名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:40:28 ID:NgK()
「 電話をかけてきたのはお前だったのか?」
「 おしい。俺ではないんだよなぁ。俺のボスだよ。」
「 一体、お前らの目的は何だ。」
「目的?お前も鈍いよなぁ。金じゃないんだから、後は一つだけだろ?」
82名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:41:05 ID:NgK()
「(考えてみれば簡単だった。こうしている間にもソーマの身が危ない。)」
フゴーは必死でこの場から逃げる方法を探した。
しかし、フィジックの力は細い見た目からは想像出来ない程強く
、走って逃げてもすぐに追いつかれてしまう。
フゴーは抑えられていない手に握っているライターの感触を確かめた。
83名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:42:01 ID:NgK()
その時後頭部の衝撃とともに、
フゴーの視界が大きく揺らいだ。
フゴーは呻くしかできなかった。
「これで終わりだ。」
84名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:42:30 ID:NgK()
ソーマは音楽を聴きながら、フゴーの帰りを待っていた。
しかし、ガラスが割れるような音を聞き、
警戒して耳をそば立てた。足音が2人分響いていた。
「(フゴーじゃない。一体誰が?)」
85名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:42:57 ID:NgK()
念のためワードローブに隠れ、足音の主が現れるのを待った。
扉の隙間から部屋を覗くと老いた男とフルフェイスの痩せた人影が見えた。
86名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:43:22 ID:NgK()
「 セス、この部屋にやつはいるか?」
老人がフルフェイスに訊くと、フルフェイスはヘルメットを脱いだ。
フルフェイスの中は幼さが残る少年だった。
セスと呼ばれた少年は目を閉じると、
ゆっくりと、しかし確実にソーマの隠れる場所に指を向けた。
87名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:43:40 ID:NgK()
「 でかした。」
そう言うと、老人はいやらしい笑みを携えて、近づいてきた。
「 隠れても無駄じゃよ。久しぶりの再会じゃないか。」
ソーマは老人の言っている意味がわからなかった。
「 あなたは誰なの?」
隠れても無駄だと悟ったソーマは老人の前に立ち、問いただした。
88名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:44:08 ID:NgK()
「 またしても、わしのことを忘れてしまったのか、アムリタ。
無理もない、前の時も酷い目に合わせてしまったからなぁ。」
「 私はアムリタじゃない。ソーマよ。あなたなんて知らない。
これ以上近づかないで。」
89名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:44:42 ID:NgK()
「 困った子だ。大人しく着いてくればいいものを…」
そう言うと老人は拳銃を取り出し、躊躇せずにソーマの腹を撃ち抜いた。
ソーマは腹を抑えて、うずくまった。
しかし、我慢出来ない痛みではなかった。
90名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:45:31 ID:NgK()
うずくまりながらも老人を見上げると、
奥でセスが倒れているのに気づいた。
「 しまった、またセスの近くで発砲してしまったか…。
こいつは本当に敏感すぎて敵わん。
安心しろアムリタ。覚えていないのだろうが、お前は不死身だ。
お前の脳は異常発達し、死んだことにも気づかないようになっている。
その証拠にこうやって撃たれても痛みは感じないだろう?」
91名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:45:55 ID:NgK()
そう言って、老人は2発弾丸をソーマに撃ち込んだ。
「 何十年と追い続けて来たのだ。
これが私の最後のチャンスかもしれない。」
「(この老人はどうかしている。痛くないわけがない。
今でさえ血が足りなくて意識が朦朧としているのに…)」
92名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:46:33 ID:NgK()
その時、玄関が乱暴に開けられる音がした。
「フィジックが帰ってきたか。あの弁護士も死んだのだろうよ。」
老人はにやりと笑うと、フルフェイス姿の男を呼び寄せ、
ソーマを運ぶよう指示した。
しかし、フルフェイスの男は老人から拳銃を取り上げた。
93名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:47:03 ID:NgK()
「なんのつもりじゃ、フィジック?」
「 そいつなら今頃石炭だよ。」
フルフェイスの男はそう言うと、老人を柄で殴り、気絶させた。
94名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:47:30 ID:NgK()
フルフェイスを脱ぎ捨てるとフゴーはソーマに駆け寄った。
「どうして、こんな…ひどい…」
「 本当、ひどいわよね。訳もわからないままに撃たれちゃって…」
「 待っていろ。すぐに病院に連れて行くから。」
95名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:48:00 ID:NgK()
そう言って、ソーマを抱きかかえるとフゴーは車へ急いだ。
フゴーは出血のせいか彼女がいつもより、
軽くなっていることに気づいたが、顔には出さなかった。
重さが変わる程の出血量だと彼女に悟られたくなかった。
96名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:48:45 ID:NgK()
車を走らせると、ソーマが振り絞るような声で語りかけてきた。
「私、結局自分のこと思い出せないままだったけど、
短い間だったけど、幸せだったよ…
あなたのこと、悪魔のようだなんて、思ったこともあったけど、
放っておけなかったの。何だか昔の自分を見ているようで…
記憶が無いはずなのに、おかしいよね?」
97名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:49:18 ID:NgK()
「 無理しなくていい。喋るな。そんなこと…
まるで、死ぬみたいじゃないか。」
フゴーはもう涙を抑えようともせずに、
ぐしゃぐしゃの顔で言った。
「死ぬのかな?死んだらもう会えなくなっちゃう。
あなたに朝ごはんも作ってあげられない。
あなたのスケジュールも組んであげられない。」
98名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:49:45 ID:NgK()
「 もういいから!頼むから、そんな悲しいことは言わないでくれ。」
フゴーは悔しかった。
目的を見失った人生で、ようやく見つけた生きる理由は、
目の前で無慈悲にも消えようとしていた。
99名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:50:18 ID:NgK()
「不老不死じゃなかったのかよ!ちくしょう!
なんで大切な人はみんな奪われるんだ。」
ハンドルを叩きながらフゴーは叫んだ。
そして、自分が不老不死を求めた理由を思い出した。
母が死にゆく日に、不条理に奪われる命の儚さを呪い、
母が永遠に生きることを強く祈ったのだ。
100名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:50:42 ID:NgK()
「永遠に生き続けたら、きっと人は孤独よ。」
彼女の顔色はフゴーが見る度に白さを増していった。
フゴーは彼女を励ますために手を握っていたが、
握り返す力の弱さが彼女の終わりが近いことを告げていた。
101名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:51:05 ID:NgK()
「どうせなら、朝日が見たいな。」
力なく彼女が呟くと、フゴーも観念した。
病院に向かうのをやめ、フゴーは車を海岸へと走らせた。
102名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:51:50 ID:NgK()
助手席を海岸線に向けて車を停めると、
フゴーは運転席を降りて外からソーマの乗る助手席のドアを開けてやった。
水平線の向こうでは、空が紫色に輝き出していた。
103名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:52:12 ID:NgK()
「私ね、あなたに言っていなかったことがあるの。
初めて私たちがあった日のこと覚えている?」
「そう言えば君は土まみれでお腹を空かせていたっけ…」
104名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:52:42 ID:NgK()
「それに裸足で…でも、あなたは私を受け入れてくれた。
あの日ね、私ここの海岸にいたの。だからなのかな。
最後はここに帰らなければいけない気がする。」
フゴーはソーマの言っていることがよく理解できなかったが、
彼女が望むことなら何だって叶えようと思った。
105名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:53:07 ID:NgK()
「だからね、私が死んだらここに埋めて欲しいの。
もし、生まれ変われたら、また会いに行けるように、服と靴も一緒に…」
フゴーは最後まで彼女が本気で言っているのか分からなかった。
106名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:53:35 ID:NgK()
しかし、彼女に残された時間の少なさから、
自分の思いを伝えなければいけないと考えた。
「君が望むのならどんな願いだって叶えよう。君は俺の生きる理由だ。」
107名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:54:08 ID:NgK()
それを聞くとソーマは満足そうに小さく笑い、
フゴーの肩越しに射し込む朝日に眩しそうに目を細めると、
そのままゆっくりと瞼を降ろした。
降ろした瞼は彼女の膝に雫を垂らし、
それっきり動かなかった。
108名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:54:36 ID:NgK()
それ以来、フゴーは金のためではなく、
何が大切なのかを考えながら仕事をするようになった。
きっと、ソーマがいたら、そうするように言われる気がしたからだ。
109名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:54:55 ID:NgK()
気づくと彼の周りには、大切な人が増えていった。
「(これもソーマのおかげだな。)」
彼がソーマのことを忘れることはなかった。
フゴーは遂に誰とも結婚をしなかった。
110名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:55:27 ID:NgK()
月日は流れ、退職したフゴーは隠居生活を満喫していた。
毎日の日課通り、花壇に水をやり終えると、
ハンモックに揺られながら読書を始めた。
111名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:55:57 ID:NgK()
いつもなら本に集中できるはずが、昨日のスポーツ中継のせいか、
どうにも眠くなった彼は、開いた本を顔に被せ、昼寝をすることにした。
112名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:56:33 ID:NgK()
女は目を開いたが、目の前の景色は相変わらず真っ暗だった。
口の中に広がる土の味で自分が土の中にいると知った。
何とかもがいて地上に出ると、一面に海が広がった。
113名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:57:10 ID:NgK()
夕日の中で自分の体を見ると、服を着ていないことに気づいたが、
それ以上にお腹にある親指くらいの大きさの
三つの穴のほうが彼女の関心を引いた。
114名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:57:30 ID:NgK()
掘り起こした土の中には、袋を被せた服と土と地図が入っていた。
女は服と靴を身につけると地図を頼りにふらふらと歩いて行った。
115名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:57:45 ID:NgK()
フゴーはふと寒さを感じて目を覚ました。
「こんな時間まで、寝てしまったか。」
本をたたみ、辺りを見回した。
116名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:58:05 ID:NgK()
その中に見慣れないような、どこか懐かしい人影を見た気がした。
人影は女だった。女は近づいてきて、彼に話しかけた。
「大きな屋敷を建てなくても、私はこの家の方が好きよ。」
117名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)03:58:45 ID:NgK()
おしまい
118名無しさん@おーぷん :2016/05/03(火)02:20:00 ID:jqY
保守9

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